アルディア

新生代

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 約6,500万年前から現代までの期間。

+セルト0年

-エルトとサールの誕生

 約6400万年前。
 アルテはかつて分裂の際にルノにヴィードを分け与えていたため、約44.5億年弱の間爆発を防いでいた。
 しかしアルデルから流入するヴィードによりアルテは膨張を続けた。結果、このころ遂に再度爆発の危険が生じた。
 ルノを生んだときはアルテの力を抑えることができず、ルノはアルデルに流されてしまった。その失敗を避けるため、アルテはアテンを生むのを止め、自らのヴィードとセレスを2種に分け、男神エルトと女神サールに分裂した。
 彼らは属性が真逆であり、互いの力を相殺し、力のバランスを取ることができた。彼らは黒い球と白い球の姿をしていた。

 このエルトとサールの誕生を以って最初の暦セルト暦ができる。彼らの誕生をセルト暦0年とする。
 エルトとサールは意思を持った存在で、コミュニケーションツールとして言語を生んだ。カルディアに言語が生まれた最古の例である。

-神々の逢瀬と惑星アトラス

 アルテがエルトとサールに分裂。エルトは白い球で、サールは黒い球であった。彼らを総称してセルトという。
 彼らは互いに愛し合っており、融合を望んだ。しかし融合を繰り返すとアルテに戻ってしまう恐れがあったため、ある一定の期間を置いて定期的に逢瀬を繰り返すことに決めた。
 彼らは太陽系の惑星の中から住処を選択した。水星から海王星まで惑星を調査し、最後に準惑星の冥王星まで行ったところでこれら9個の星の中からひとつ好きなところを選ぶことにした。
 結果、彼らは生命が豊富に存在する環境の良いアトラスを選んだ。中でもフィーリア島を逢瀬の場所として選択した。
 アトラスの環境に合わせるため、彼らはルサージュを行い、人の形を選んだ。

-ルサージュ

 ルサージュとは意図的な突然変異のことである。神などが変身して日常的な姿を形成することであり、単なる一時的な変身ではなく、その姿で日常を送る場合にのみ適用される。
 代表的なものはセルトによる。セルト元年(約6400万年前)に白い球だったエルトと黒い球だったサールが人型に変身した。
 セルトは自らが住処として選んだアトラスに適応するため、動物の姿にルサージュすることにした。最も知能の高い動物を目指したところ、ちょうどこのころ霊長類が出現していたため、彼らは霊長類を元に自らをルサージュした。
 ただし、プルガトリウスは現生人類と比べると遥かに知能が低いことからも分かるように、セルトの希望には叶わなかった。そこで彼らは霊長類の姿を元に改良を加え、知能が高くなるようにまず脳の容積を大きく設計した。脳を支えるために背骨を立たせる必要があり、二足歩行を選んだ。
 また、暑さ寒さを魔法で凌ぐため、余分な体毛をそぎ落とした。彼らが訪れるフィーリアには動物よりも植物のほうが豊富なため、歯は他の霊長類同様、草食用に設計した。
 このような細かい設計をしてルサージュをした結果、彼らは奇しくも後に伝染病で死滅するヒト属をさらに進化させた――すなわち現生人類に相当する――形質を取るようになった。

 ルサージュは後にアルミヴァや悪魔たちも行う。ユーマはルサージュを行った親から生まれているので、始めから人間の姿で生まれている。
 なお、セルトのルサージュは地球ないしアトラスで滅んだヒト属とまったく異なる変態であるため、セルトの血を受け継ぐユーマの一族もまたヒト属とは異なる変態をしたことになる。
 ガルヴェーユ追放の後はアトラス各地の環境に適応したため、地球の現生人類とだんだん似てきたが、それでも根本的に異なる。例えば地球のヒトに比べ、ユーマの一族は全体的に骨格が華奢で手足が細長く、目がくりっとしていて、背が少しだけ小さい。また、飢餓の経験がなかったガルヴェーユ人までは太る遺伝子も持っていなかった。ユーマの一族の現代人はそのほかにも生殖能力が弱く妊娠率がヒトより少ないなど、外見上はよく似ていてもあくまで別の生き物だという点を残している。

-言語の起源

 エルトがフィーリアを選択し、サールを連れて草原に降り立つ。エルトはサールを指差して「サール」と言い、サールはエルトを指差して「エルト」と言った(最初の命名)。
 エルトは次に空を指してjinaと言った。サールはそれを確からしいと感じた。
 サールは地を指してkalと言った。エルトはそれを確からしいと感じた。
 彼らは同様にして身の回りの概念の名前を確認していった(最初の語彙の獲得)。

-エーステ理論

 彼らはある物質や概念が持つ本来的な名前を聞く能力を持っていた。エルトはエルトという名を定められるべく生まれた存在で、サールも然りである。ゆえに彼らは相手に自分の名を言われた際、それが確からしいと感じた。
 これをエーステ理論という。エーステ理論では、あらゆる概念は固有の信号を持つ。その信号は0と1の集積であるが、音声や光の波長などに規則的に変換することができる。
 例えば手を丸めて拳を作る。そして手首を含まずこの拳部分だけを指す概念の信号を得て、その信号を音声変換すると[baog]のようになる。正確にはその音声は[baog]ではない。人間が舌や口腔や肺臓を使って近似的に表現した音声が[baog]だというだけの話である。
 エルトとサールは自分たちの身体が表現できるあらゆる音声を、30個の音韻に押し込めた。その30個の音韻とは、後のアルカの音韻にS, Z, H, Lを足した29音と、そこにシュワーを加えたものに等しい。
 この音韻を使うと、拳を表す信号は/baog/と表現することができる。こうして神々は概念が発する固有の信号を音韻に変化し、語彙を膨らませていった。

 彼らは物だけでなく概念や行為や状態の名前も知っていた。例えば愛するという行為はtiiaという名前を持っていることを知っていた。
 上下のような形のない概念や、大きいのような形のない状態についても適切な名前を知ることができた。こういった概念の名前を彼らはエーステと呼んだ(名詞以外の獲得)。

-語法の起源

 なお、拳に手首を加えると途端にその概念はbaogからかけ離れた信号を発するようになる。
 愛するという行為も語法が変化するとエーステが変化してしまう。エーステは少しのことで変化しやすい。

 例えば水のことはエーステでeriaというが、これは0度のH2Oのことであり、泥が入ったり不純物が入ったり気体になったり液体になったり温度が変わったりするとエーステが途端に変わってしまう。
 これではエルトとサールが日常生活をしていて目にする水は全て異なったエーステで呼ばねばならない。このような言語は不便であると彼らは感じた。
 そこで彼らはeriaの温度や多少入った泥などの不純物を気にせず、すべて共通してこれらをeriaと呼ぶことにした。つまり特定のエーステで他のエーステを代表させることとした。つまり一般的に水だと思われるものをすべてeriaと呼んだわけである。
 このとき初めて語法の概念が生まれた。eriaは少し泥の入った水と真水の両方を指し、水とお湯の両方も指す。しかしワインや果汁はeriaではなく、eriaとは弁別される。つまりeriaが何を指して何を指さないかという語法が生まれたわけである。
 あらゆる概念をエーステで表現すれば語法は不必要であるが、単語に意味の範囲を与えたことで語法が発生した。

-音象徴

 ある特定のエーステでそれと類似した概念のエーステを表現するという方法の結果、語法が生まれた。
 ところが水分を含んだ概念のエーステはことごとくeriaからかけ離れた語形を持っていることがしばしばあった。例えば血や涙などはどちらも液体であるにもかかわらず、そのエーステはeriaと完全にかけ離れていた。
 血や涙は液体という括りなので、eriaにまつわる命名をしたほうがこれらの概念を認識しやすいと彼らは考えた。その結果、eという音で水を示すという音象徴の考えが生まれた。
 同様に火を表す音象徴はfaなど、エーステ以外に音象徴が発展していった。

-合成と混成

 彼らは涙をenaと名付けた。eは音象徴で水を表す。naは心の意味である。これは合成である。涙のエーステを求めるより認知しやすいという理由で合成が選ばれた。
 一方、血はeriaとlivroで「命の水」を意味し、eriという語形になった。eriaのerとlivroのiから成る単語で、これは混成である。
 合成や混成を獲得した結果、彼らは認知に基づいた造語能力を獲得していった。
 例えばサールは草原にkalmo(下の場所)と名を付けた(人間の認知に基づく造語)。

-ミナカルモ

 エルトはサールを抱こうとした。しかしサールは浮かない顔をしている。エルトは戸惑った。
 サールは悲しげな顔で近くにあったaspil(チョウノスケソウ)を手に取ると、エルトは彼女は花がほしいのだと察し、アルカット大陸まで飛んでいき、花を観察してフィーリアに戻り、造形術kululを用いて花畑を作った。そしてこの地にminakalmoと名付けた。
 サールは喜んで花畑に寝転び、紫苑を取った。エルトはそれを見てsaalminaと名付けた。

-食事の提供

 エルトがサールを寝せ、覆いかぶさろうとすると、サールはおなかを押さえて泣き出した。空腹である。
 エルトは辺りを散策し、木の実、魚、動物の肉を持ってきて、サールに与え、自分も食べた(食事の提供)。

-恥の獲得と衣服の提供

 エルトがサールを見ると、サールはとたんに恥ずかしそうな顔をして、体を隠した。裸を見られるのを恥ずかしいと感じたためである(恥の獲得)。
 エルトはミナカルモに咲くコットンを手に取ると、中から綿を取り出した。
 これは使えると考えたエルトは造形術で服を作り、サールに着せ、自分も纏った。
 上下を覆う筒状の服で、手足のところに穴が開いており、首からかぶるように着る粗末な服だったが、白くて清潔で上質だった(衣服の提供)。

-住居の提供と火の使用

 サールが喜ぶと、エルトはふたたびサールを寝かせた。
 性交に集中するために温度調節の魔法を切ったところ、サールが寒さで震えた。
 エルトは石を切り出し、造形術でイグルーを建てた(住居の提供)。
 サールを入れると、エルトは中で火をたいて暖めた(火の使用)。

-性交の受け入れ、語順と文の起源

 満足したサールはまず自分を指差し、次にエルトを指差し、"non dyussou tiia"と言った(語順と文の起源)。
 指差しの順番で文が構成され、SOV語順ができた。
 こうして神々は結ばれた。
 このように、太古の昔から男性は性交を受け入れてもらうために女性に衣食住安全などあらゆるものを提供する必要があった。

-神の吐息

 コミュニケーションの手段に肺臓気流を利用する姿にルサージュしたため、サールはエルトを誘惑しようとして、自らの息に芳香を乗せた。芳香は桃の香り(主成分蟻酸エチル)であった。
 エルトは感銘を受け、サールに共感して自らの息に薄荷の香りを乗せた(言葉で求愛することの重要性を強調)。

-転換動詞と機能語と修飾の起源

 エルトはkalを動詞「場所を占める」として使った(転換動詞)。
 "del ruxilo kal kulala kui"は重文で、「私は家を場所として食べ物を食べる」の意味。
 このkalが文法化し、「~で」を意味する後置詞になった(格明示法の獲得、機能語の起源)。
 他方、与格はalとkerで示され、着点含意は前者、方向性は後者が担った。
 また、状態を指す言葉は前置された(形容詞の獲得)。

 ここで彼らが作った言語がfiilia (f)で、最初の言語である。

-神の逢瀬

 エルトとサールは太陽系の惑星からアトラスを選んでフィーリア島で、アトラスの公転周期のうち1日間だけ逢瀬を重ねることを決めた。
 この逢瀬が今後約6400万年間続く。なお、このころの公転周期はおよそ365日ではない。
 彼らは四季と黄経を利用して逢瀬の日を決めた。その四季と黄経が作りだす日付は現在のメル暦でいうzan ralの日で、ディアセルに等しい。

-セレスの種殻

 ルノはアルテのセレスを持ち、アトワーユはヴェーユからセレスを得、アラティアはアトワーユからセレスを得ている。
 ルノが死神である以上、原始のアルテのセレスの種殻も死神である。アトワーユとアラティアはむろん死神である。
 一方、アルテが分裂してできたエルトとサールは神の種殻を持っている。
 原始アテンのセレスの種殻は死神であったが、エルトとサールは神の種殻を持っているので、エルトとサールから種殻に変動が起こったということが分かる。

+約4000万年前

 レイヴァ大陸で氷河の形成がはじまり、寒冷化が始まる。

+約2500万年前

 ファベル大陸に最古の類人猿が出現した。

+約1500万年前

 アンシャル地方に隕石が落下。クレーターを形成した。

+約1300万年前

 類人猿がアルカット大陸に進入。

+約600万年前

 ヒトとチンパンジーが分化。猿人の出現。直立二足歩行を始める。

+約250万年前

 ヒトが石器を使い始める。
 セルトは年に1度北極近辺のフィーリア島で逢っていただけなので猿人との関わりはない。

+セルト63,938,964年

 この年もエルトはサールと逢瀬を重ねた。
 花畑にサールを横たえると、サールはエルトを見て「愛しているわ」と囁いた。
「私もだ、サール」
「ねぇ、私は愛する貴方の子が欲しいの」
 それはかねてよりサールが請願してきたことだった。しかしエルトは渋い顔で首を振った。
「私たちは互いのヴィードを相殺しあい、バランスをとっている。もしバランスが崩れれば片方のヴィードが暴発し、世界は歪んでしまう」
 それは何度も聞いた説明だった。
「もし子供を作れば、女性の君のほうがヴィードを大きく失ってしまう。そうなれば私たちのバランスは崩れてしまう。世界が歪むんだ」
「そうね……」
 サールは悲しそうに頷いた。エルトは紫苑を一輪取り、サールに持たせてやった。
「君は自分の意思で妊娠をコントロールできる。今回もうまくやってくれるね?」
「えぇ……」
 サールが頷くと、エルトは彼女に覆いかぶさった。

 逢瀬が終わると、エルトはフィーリアを去っていった。また一年の孤独が始まる。サールは泣きながら服を着た。
 寂しかった。一人でいることが。
 寂しかった。愛する男の子を成せないことが。
 だからサールはこっそりと彼の分身を受けれいることにした。
 エルトも二人しかいないこの孤独をきっと寂しく思っていることだろう。分かってくれるはずだ。きっと子供が自分たちの仲を取り持ってくれるはずだ。
 サールは幸せな家庭を思い描いた。
 こうしてサールは懐妊した。
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