メタルギアソリッド3クロス 蛇さんの美食講座 終章 美食の代償

後にビッグボスと呼ばれる男ネイキッド・スネーク、彼はある任務で異世界に訪れいつものように食料を確保しては手当たり次第に貪っていた。
だがそんなある日彼に凄まじい敵が襲い掛かって来た……


「うお~!!!」


彼は叫びながら走り、ひたすら全力でその鍛えられた脚力を用い森の中を駆け抜ける。
止まることは出来ない、何故ならそれが意味するものは“死”であるからだ。
後方からは凄まじい勢いで火球が飛び交っては、彼を殺そうと迫り来る。大爆発を起こした火の玉はさしずめ神の裁きの如く。
食らえば即死、スネークは命の限り必死で逃げた。

彼を滅さんと断罪の火炎を降らすのは巨大なる漆黒の火竜、その名もヴォルテール。
そしてヴォルテールの肩には桃色の髪を持つ小さな少女が立っていた。


「ふふ……恐いですか? 恐いですよね……でも食べられちゃったフリードはこんなもんじゃなかったんですよ?」


生気に欠けた虚ろな瞳をして不気味に呪詛を吐く少女、幼い竜召喚師キャロ・ル・ルシエ。
彼女は一切の容赦なく自分が召還した火竜に業火の雨を降らせる。
小さな胸には召還竜フリードリッヒを喰われた恨みと復讐のどす黒い炎が燃え盛っていた。


「うおおお!! こ、このままじゃ殺される~!!」


迫り来る巨大な竜の攻撃にスネークは叫びながら逃げ惑う。
手持ちの装備でアレを倒すのはあまりにも絶望的だ、行使できるのは逃げの一手のみ。
だが、瞬殺されるのを免れて遁走するだけで精一杯の彼を運命はさらに追い詰めた。


「……見つけた」


そう呟いたのは艶やかな紫色の長髪を揺らした少女、幼い召喚師ルーテシア・アルピーノだった。
ルーテシアは怒りを露にした顔で自分の後ろにそびえ立った巨大な召還蟲にむかって叫ぶ。


「白天王……殺して~!!」


召還蟲ガリューを喰われた恨みを晴らす為、呼び出された究極召還蟲その名も白天王。
翼を広げた巨大な蟲は収束した魔力エネルギーを怨敵に向けて撃ち放つ。
凄まじい光の渦がスネークに照準をつけて復讐の一撃を与える。正直シャゴホッドなんてレベルじゃない。


「うおおお!!!」


しかしなんという幸運か、ギリギリで回避に成功したスネークは大爆発に吹き飛ばされるだけで済む。
流石は一流の兵士、運も並ではない。


「よ、よし……このまま逃げるぞ」


装備の一つであるフラッシュグレネードとスモークグレネードを投げて目晦ましを行い、なんとか逃走するスネーク。


「くっ! フリードの仇、逃がさない!!」
「ガリューの仇! 逃げるな!!」


少女達の叫びも虚しく逃げ去るスネーク。
彼は森の中へと駆け込み木々の合間に身を隠すと、上司であるゼロ少佐に無線を入れた。


「はぁはぁ……少佐、なんであの少女達は俺を襲うんだ? こっちの組織は敵なのか?」
『いや、そんな事は無い筈だが……君がなにか悪い事でもしたんじゃないのか?』
「まさか! 俺があんな幼い子供に悪さをするわけないだろう?」
『ではまず対話を試みろスネーク。話を聞いてくれれば誤解が解けるかもしれん』


その瞬間、スネークを巨大なピンク色の光線が襲う。


「ディバインバスター!!!」
「ぎゃ~!!」


叫びと共に飛んできた光線はスネークに直撃し彼を凄まじく吹っ飛ばした。
うぐぐ、と呻きながら苦痛に苛まれる身体を起こせばそこには白い装束に身を包んだ年頃の少女が立っていた。
彼女こそ愛用のデバイス、レイジングハートを携えた機動六課スターズ分隊隊長、高町なのはである。
美少女と形容してしかるべきその要望は陰というかなんというかどす黒い感情に覆われており、まるで地上波放送のSTS八話のようだった。
まず誤解を解くべく、スネークは必死に彼女に声をかける。


「ま、待ってくれ! まずは話を聞いてくれ、これは何かの誤解だ!!」


スネークの言葉になのはは僅かに首をかしげて不思議そうに返す。


「お話?」
「そ、そうだ……まずは話を」
「……ダメ」
「へ?」
「……お話なんて聞いてあげないの」


まるで地獄の悪魔が囁くような残響をその唇から零すと、なのはは手レイジングハートをスネークに向けた。
そしてマガジンに込められたカートリッジを一気に消費する。


「少し……ううん、物凄く頭冷やそうか?」

全力☆全壊スターライトブレイカー!

「ぎゃ~!!!」


極大のピンクの閃光にスネークの身体は吹っ飛ばされた。
あたりの木々をなぎ倒した後にはプスプスと煙を上げる黒こげボディだけがポツンと転がっていた。


「まだなの! 食べられちゃったユーノ君はこんなもんじゃないの!!」


少し口調がおかしくなりながらもなのははそう叫び、予備マガジンを取り出してレイジングハートに装填してスネークに狙いを定める。
そんな時だった、彼女に声がかけられたのは。


「えっと……僕がどうしたのかな?」
「だから! フリードやガリューと一緒にユーノ君がこのオッサンに食べられちゃったの! 人食いなの! カニバリズムなの! これは正当な復讐なの!」
「ああ……僕はいつ食べられたの?」
「だからこの前! ……って、あれ? ユーノ君?」


そこには先日捕食されたはずのユーノ・スクライアが立っていた。足はあるので幽霊では無い。
さらに彼の後ろにはガリューとフリードがいた。


「あれ? ユーノ君……生きてたの?」
「当たり前だよ」
「でも……行方不明になって」
「ああ、ちょっと旅行がてら遺跡発掘に行ってたんだけど。それとこの二人(二匹)は偶然向こうで会ったんだ、二人も旅行してただってさ」
「キュクル~」
「……(コクコク)」


ユーノに言われてフリードとガリューが頷く。二匹は手にお土産の温泉饅頭を持っている、どうやらちょっとした小旅行に出かけていたらしい。


「あれ? じゃあもしかして……勘違い?」


様々な調査でガリュー・フリード・ユーノが喰われたと推理に至ったのはどうやらただの勘違いらしかった。
そしてその勘違いの対象になった伝説の兵士は黒こげでピクピクと横たわっていた。


『どうしたスネーク! 返事をしろ、スネ~ク!!』


後にはただ、ゼロ少佐の叫びが通信で木霊していた。


終幕。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年10月13日 21:26