メソアメリカは『ゆめにっき』の作中各所で用いられる絵画的表現の由来と考えられている文化領域。ここで言及している絵画的表現とは、例えば荒野の箱の中を覗いたときに表示される絵、森の世界のブロックの世界の背景（この3つの場面で同じデザインのイラストは英語圏でアステカレイブモンキーと呼ばれる）、扉部屋や目玉の世界の背景、カリンバなどに用いられている、古代民族風の人物イラストを指している。こういった絵画的表現は、作中のキャラクターやゲーム全体のメッセージ性との関連性について考察されることがある。自室のカーペットの模様にも夢・現実問わずこの特徴の模様が用いられていることを挙げると、現実にも出てくる表現という意味では重要性があるものと考えられる。
『ゆめにっき』は独特のビジュアルが特徴とされ、主にウボァなどのキャラクターがその後の様々な同人ゲームに影響を与えている。しかし、実際の『ゆめにっき』の魅力とはそういった個々のキャラクターという部分よりも、ゲーム全体に共通したテーマのほうが大きな割合を占めている。数字の世界の視覚的テーマにおける緊迫感、樹海の島に見られる不気味な彫像、足跡通路の見ていて不安になるモンスターなど、これらの風景がそれぞれ個性的ながらも一貫した雰囲気を演出している。そして、この雰囲気はメソアメリカ的様式によって演出されているところも大きく、ゲーム全体に深く隠された文脈を仄めかしているのではないかと考えられている。
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元ネタと思われるもの
パラカス文化
これらの視覚的なテーマについて、多くのファンはアステカ文化が基になっていると指摘したが、現在で言うペルー南部で古代に形成されたパラカス文化の美術により近いという指摘もある。これはアンデス文明において紀元前800～100年の間にわたった文化で、織物による美術作品と幅広い治水技術を特徴とした。また、織物の美術によって葬儀の仕方も発展させ、遺体や生贄を装飾の施された織物に包んだ。そして、この美術様式が『ゆめにっき』の中でも数多く見られる。中でも、扉部屋の背景とキュッキュ君のいる場所の背景はよく似ているが、ここに描かれている人物の模様は、作中の様々なメソアメリカ的表現の中でも最も実在の美術品によく似ている。
ペルーの古代文化において、夢は霊的な現象によるものとして深く考察された。ききやまがメソアメリカの美術をゲームの視覚的テーマに取り入れたのは、窓付きもまた自身の夢について古代ペルー人と同様の価値観を持っているということを反映したためだと考えられる。例えば、目玉の世界の背景には首を持った人物が描かれている。これは夢を見ている人間の精神状態を反映したものと考えられ、口から蛇が這い出ているのは、その人から邪悪なものが外へ出ていっているものとして捉えることができる。
ナスカ文化
同じく古代ペルーでパラカス文化を直接受け継いだのがナスカ文化である。紀元前100年から紀元800年の間、ナスカを中心とするイカ地域で発展したためにこの名が付けられた。地下を経由する灌漑用水路を多数整備し、それらは現在も機能している。そして、『ゆめにっき』のアステカレイブモンキーは、有名なナスカの地上絵に似ていると指摘されている。この文化でも夢は重要な役割を持ち、関連して『ゆめにっき』にも、より大きな意味が隠れている可能性が同様に考察されている。
アフリカ文化
言及できる範囲は狭くなるが、『ゆめにっき』の音楽にはアフリカ的なテーマも含まれていることが指摘されている。本作の音といえば不気味な音の数々が知られており、例えば低く唸り続けるかのような音、ループする短い音楽、キャラクターに話しかけるとなる独特の効果音などが挙げられる。しかし、これらには馴染まないような民族的なビートがたまに用いられる。タコ風船が出現した時の音楽がその一例で、また、★しんごう★で変化したモノ子に話しかけたときのイベントで流れる音楽も似た例に挙げられる。腹の中の世界にいる釣り人も似たような音を出す。『YUMENIKKI -DREAM DIARY-』では、電車の乗客から楽器のカリンバそのものが手に入る。
解釈
現実世界で部屋を古代メソアメリカ風の絨毯で飾っているというところからも、窓付きはこれらの文化に何らかの思い入れがあると解釈できる。また、前述のような古代文化での夢に対する信仰がゲームの深い部分に隠された文脈を仄めかしているとも言える。
一方で、ある人にとって、夢は病気や深層の感情、あるいは本質を反映するとも言われているので、窓付きの夢は彼女自身の恐怖や不安の体現とも限らない。このように奇妙な形のものが夢に現れるのは、悪い感情が浄化されていることの現れだと解釈することもできる。
外部リンク
- Mesoamerican Imagery | Yume Nikki Wiki | Fandom
- メソアメリカ - Wikipedia
- アンデス文明 - Wikipedia
- ナスカ文化 - Wikipedia
