<※作者注…この物語はフィクションです。実在の団体、名称等とは一切関係ありません>
1・
---なんでこんなことになっているのだろうか…

ことの始まりは、
取得しづらい会社の夏休みをやっとのことでもらった1週間休暇。
日ごろの鬱屈を発散すべく、「そうだ、一人旅でも!」と勢い込んで4日分の準備…
そして記念すべき旅行の一日目、一番目の目的地コンビニで、
車の鍵をうっかり閉めずに買い物を済まして、戻ってきた。
当時は、閉め忘れたが別段気にせず、目的地である長崎への1200kmの旅に出たところであった。
(順調にいけば14時間だな)
と、いろいろ思いをめぐらせる。
隣では黒塗りの車の周りで大男があわてていた。
(? なにをあわててるんだ? まぁいいか)

おれはかまわず出発した。鍵を閉め忘れたことで予定変更を余儀なくされることも知らずに…

自分の車は軽バンだ。上司に「そんな車で長崎まで行くな! 新幹線使え!」
しるか! おれは長年付き添ったこの車でいくんだっ!
ふと、会社に道程予定表を提出したら上司に言われた言葉だ。
会社としては、死なれたら香典代がもったいないそうだ。あと手続きと、派遣先への謝罪などいろいろ。
普段の生活まで拘束するのか 会社ってやつは…
(・・・いかんいかん)
一人旅だと物思いにふけってしまいがちになる。
<<ピンポーン 料金ハ¥700円 デス>>
ETCがそう告げる。志村料金所を通過した音だ。
ここから長崎まで、高速で行くのだ。片道1200km ETC3割で約15000円の道のり…

池袋の手前で車体がぶれた。軽なので、ちょっとした貧乏ゆすり、体重の移動や荷崩れで簡単に揺れる。
首都高独特のつなぎ目による揺れじゃない。ましてパンクであろうはずもない。
車体後ろで気配がしたので思わず振り向こうとしたら、チクリとした痛みが首筋に走った。
「!? ?!?」
なにがなんだかわからない。パニクって壁に激突しなかっただけマシかもしれないと、思う。
すると、透き通るような、でもしたったらずな声が耳朶にささやく。
「おとなしくしなさい・・・」
あきらかに女の声だった。自分は首筋になにか当てられ、ちょっと痛い。
「なっなんだおまえはっ」
驚く。当たり前だ。なぜ自分の車に赤の他人が乗っている…
「質問は許さない。私の言うことだけ聞いてなさいっ」
「そんなふざけたとこあるかっ!」
運転で前を向きつつも反論を試みる。しかし…
チクチクッ!
首筋の痛みが増す。
「いいから私の言うこと聞きなさい! 死にたくないでしょっ!」
少女(と思われる)は手に持ってると思われる何かをつきたてる。
痛みが増し、高速運転では危険なので周りの速度にぎりぎりまで合わせるように速度を落とす。
「なにしてるの!? 止まれなんていってないわ!」
東池袋パーキングエリアに近づいたので、すかさず車を滑りいれ、停車する。
「あのさ… 目的はな………んだい…?」
と、ルームミラーで後部座席を見る。
金髪碧眼の少女がそこにいた。容姿端麗な彼女に思わず言葉が詰まってしまう。
「千葉までいきなさいっ これは命令よ!」
「千葉ぁ!?」
素っ頓狂な声を上げてしまった。
チクリ。
「いいからいく!!」
「ぐっ… わ、わかったよ!」
ちくりとした痛みがなくなった。
「わかればよろしい♪」
すごくうれしそうな声だ。
(千葉なんてふざけんなよ! おれは長崎に…)
「早く行く!!!」
チクチクッ!!
「はっ、はいいいい!」
脅迫にちかい状態で、おれはパーキングを出発した。
(旅行早々カージャックかよ…)
心のつぶやきは誰にも聞かれず消えていった。


2・
チクチク… チクチク…
「あ、あの…」
「なに?!」
俺は、カーブの度に首に刺さる何かに耐えかねて、少女に問いかける。
しかし、彼女は怒ったように言葉を返す。
「いや、その…なんでもないです…」
「…なにか言いたいならはっきり言ったらどうなの?!」
「いえ…」
「「・・・・・・・」」
微妙な沈黙。くそっ、俺がなにしたんだよ…
「あーもうじれったいわね!!! なんなのよあなたわっ!」
容姿に似合わず、流暢な日本語だ。
「…こっちとしては、脅迫というか、命握られてる身なので、ほんとはなにもいえないのですが、
 ひとつだけ… お願いしてもいいでしょうか?」
「な、なによ…?」
あ、なんかミラー越しでも可愛い…
「なにぶんカーブの多い高速で速度でてるので、ゆれるたびにチクチクささるのですが、それ、
 収めてもらえませんか?」
「いやよ!」「なぜ!?」 
すかさず切り返す俺… 死んだな…
「収めたら、あなたきっと警察にいくでしょ!!」
「いや、そりゃ、まぁ…当然というか、ハンドル握ってるの俺だし…」
至極まっとうな意見を述べる。
「なおのことダメよ。これは保険なの。わかった?」
「だからってだなぁ… もし事故になると、逆にあんたのほうが危険だと思うのだが…」
「あら、私なら大丈夫よ? いざとなったらシートベルトかけるもの… って… あれ? …ない?」
なにかに気がついたようにあたふたしはじめる。長い髪がふわふわつられて動くのが見えた。
「ああ、この車は8年前のモデルチェンジ~云々~で、貨物仕様だから後部にベルトは無い」
「ちょっ、ちちちちょっと! それは困るわ!!!」
「勝手に困ってくれ… 俺は知らない…」
ぎゅっ!
「こーのー!!! 今すぐベルトだしなさい~!」
「ぐえっ! 首っ、首つかむなっぐえぇっ! むっ むりだっぐええぇ!」
「なんとかしなさい! 命令よ!!」
「ぐえええ! いやなら助手席こいっ! そこならあるからっっっ!」
ふっと首を絞めていた手が離れた。と思ったら、俺が運転してるのに前にでてきやがった!!
「はじめからこうしていればよかったのね♪」
チクチク。
またチクチクが始まった… って、今度は獲物がちゃんと見えた…
「って、ナイフかと思ったらシャーペンかっ!!!」
俺は盛大にツッコミしてしまった。
「あ・・・」
「~~~っ!… はぁ~…」
思いっきりため息を吐いてしまった。
こんなのも見抜けなかった自分が情けない…

獲物がわかった瞬間、少女の態度が変わったのが見て取れる。
あきらかに身を縮こませ、凶器としての役を請っていたシャーペンを握り締めている。
運転のためちらちらとしか見えないが、彼女はなんだか守りたくなるような可憐さを漂わせている。
その様子に、俺も毒気を抜かれてしまったようだ…
「…まぁいいさ、警察には言わないでおこう。」
少女が顔を上げ、笑顔になったのを感じる。
「ほ、ほんと!?」
猫のようにも、小動物のようにも受け取れる目を俺に向けてきた。
くっ、こっちみんなっ! 俺がワルイコトしてるように思えてくる!
「あっ、ああ。まさかシャーペンで脅されました なんて警察に言えるか」
「……ご…さい…」
「ん? なんだって?」
聞こえなかった。聞き返すと、今度は耳をつんざくような声で
「ごめんなさい!!っていってるのっっっ!」
俺に身を乗り出しつつ耳元で大きい声をはりあげた。
正直鼓膜が破れるかと思ってしまう。奥でキーンと鳴っている。
「あー、はいはい! わかりましたっ! わかったから、シートベルト締めろ!!」
俺がそういうと、少女は助手席に座りなおし、シートベルトを締めた。
 :
 :
「…渋滞…か」
竹橋に近づくと、渋滞掲示板から「この先渋滞 追突注意」の文字が見えた。
ここで渋滞となると…首都高抜けるのに1時間か…
「あ、と、君… 千葉…方面だったよな?」
「え?! い、行ってくれるの?」
「まぁ… 不本意ながら乗せちまったワケだし、もともとは長崎までの道のりだ。
 千葉くらいなら、+150kmってとこだろ… 別にいいさ」
少女が笑顔になる。後光がさすような、そんな笑みだ。…いま、華が舞ったぞ?
「ただし、送るだけだからなっ?」
「ありがとうっ!」
抱きつかれた。だからあぶねぇって!

渋滞にはまっていてしばらくすると、少女が妙にソワソワしだした。
「なに? どうした?」
「えっ?! いやそのっ…」
「はっきり言ってくれ。さっきみたいになりたくない」
「その… ~~~に…」
「は?」
「トイレっ! おしっこっ!!」
は・・・ マジデスカ?!
「う、うわわわ おまっ、ここ渋滞の中だからトイレないぞ!?
 先が事故でふさがっているからしばらく動かないし!
「こまる! もうでちゃうぅ!」
くっ、この手だけは使いたくないが…
過去に同じ経験したことがあるだけに、常にダッシュボードには穴の開いていない
スーパーのビニール袋が常備してある。それを使えば…
「いやよ!」
そのことを説明したら拒否られた。
「断ってる場合か!漏れたらどうすんだっ!」
「でもでも!」
「でももへちまもねぇ! やれ!」
「~~~~~~~~~っっ!!!!」
完全に決壊寸前だったらしい。ベルトをはずすよう指示して、
座席を後ろまで後退。足をまげ腰を座席の前までもってこさせ、ビニールを持たせてやった。
「あとはできるな?!」
こくん。
少女は耳まで真っ赤にしながらうなずいた。
背に腹はかえられないらしい。あれ?表現違うか?
”ぱしゃっ ちょぼぼぼぼぼぼぼ…”
極力見ないように努力する。見たら俺、変態だ。うん、みるな。みちゃだめだ。だめだったらだめだ。
「んっ、くふっ、ふぅぅぅっ」
吐息が聞こえる。
くっ… 逆に見ないほうが妄想たくましい俺に…
「やぁ…」
嫌がる声が耳にうるさく届く。
「ナっ?! なニドうシタッ!??」
動揺するな動揺するなドウヨウスルナ・・・
「と、とまらないのぉ! こんなにいっぱいぃ~…」
ちょぽぽぽぽぽぽぽ…。
たしかに袋半分はきてるだろうか?
どれだけ我慢してたんだよ… って、あ… 見てしまった…
「ひっく…臭いが…」
少女は恥ずかしさのあまり泣き出していた。
(だぁー! もう!!)
すかさず換気モードで風力全開にする俺。窓は…全開にできないな。
…これでどうだ!? 俺はあまり臭いを感じないがこれだけすれば問題ないだろ?!

ガサ…ガサガサゴソゴソ…きゅっ。
少女は泣きながら自分のを受け止めた袋を締めた。
「は、恥ずかしすぎるよぉ… こんなこと初めてだし…」
「がまんしろ。俺も過去に1度だけやったことがある」
「み、見てないでしょうね?」
「おお、み、見てないぞ? うん」
「黒いパンティ、見たでしょ?!」
「い、いや、白かっただろ! 赤いリボンのっ!」
「「・・・・・・・・・・」」
「…へんたい」
ぐはぁ! なんか! なんかイケナイ道に進もうとしてないかオレ!!
「むりやり車のなかでオシッコさせたうえにその姿を見て喜んでるなんて…スケベ! へんたいっ!」
「うおっ!? 喜んでなんかいっ、いないぞ?! 何を言い出すんだっっっ!」
「………まぁいいわ… がまんできなかった私が悪いんだし… 送ってもらえるんだから文句言えないし…」
あ…焦った… オレが逆に警察のお世話になるところだった…
「とりあえずこの袋、どうするの?」
ちゃぷん。
袋に詰まったモノの処分は、ココでは不可能だ。
しょうがない…
「取っ手を引っ掛けるものが後部座席の手すりにあるから、そこに引っ掛けて…」
「ん… わかった」
とりあえず、引っ掛けてもらった。


一応騒動はひと段落する。渋滞は、抜けるまであと少し・・・


3・
<<ピンポーン 料金ハ\200エン デス>>
-京葉道路・船橋料金所を通過した。
「なぁ、ひとつ聞いてもいいか?」
「なに?」
「とりあえず、方面はわかったが、正確にはどこなんだ?」
「館山よ」
「そうか、館山か… 何しに行くかわからないが、住所はわかるか?」
「○○よ。○○の××の△△△△」
「まてまて… よし、これだな」
車に取り付けた自慢のPSPナビが起動する。
少女から微かな笑い声が聞こえる。こら、わらうな!
そんな顔をしてたら
「ちいさくてかわいい機械ね」
だと… くっそ、ボーナスでHDDナビ買ってやる!
今年の7月に館山まで高速一本でいけるようになったから、古いナビも新調しなくちゃな…

「・・・そういえば、名前、まだだったな。俺は康平。君は何ていうんだ?」
「まりよ。真理って書くの。友達からは”まーちゃん”とか”マリー”とか呼ばれてるけど…」
「マリーか… たしかにしっくりくるな」
「な・に・か・い・っ・た・か・し・ら?」
まずい、逆鱗に触れたらしい…
「こんな成りしてるから”なるほど”とか思ったんでしょ!」
ばれてるらしい… 金髪碧眼でそのあだ名は誰もがソウ思うだろう? よし、フォローを試みよう…
「いやでも、きれいな髪だしふわふわだし、かわいいからなんというのかな・・・」
「そんな言葉は聞き飽きてるっ! しらないっ」
「おいおい…」
「・・・・・・・ぷっ、あははっ、くすくす、あはははははっ」
真理はコロコロと笑い始めた。
「な、なんだよ」
「私のあだ名を教えたら、だれもが同じ反応するから、ついおかしくって…」
ちぇっ… なんだよそれ…
「ふんっ… 高速降りるぞ」
「え? ちょっ! なんで高速降りるのよ!」
俺は幕張ICで降りてそのまま14号に合流した。
長年の経験からいうならば幕張IC~アクアライン連絡道までは14号・16号を使ったほうが、
穴川の渋滞も、遠回りする上に金もかかる高速も回避できるのだ。
「何で降りたのよ? しかもなにニヤニヤしてるの? 怖いわよ?」
ニヤニヤしている顔を見られてしまった。
「う、うるさいっ、経費節約だっ この道の方が得だしっ!」
ガソリン代も馬鹿にならない。
出発した埼玉南西部では136~142円/Lだが、千葉は133~138円/Lだ。(07/09/01調)
入れるとしたら市原近辺の製油所前のスタンドがベストだろうと、思っている。
ただ、メーターを見たらさほど減っていないので、今回はパスすることにする。

くーきゅるきゅるきゅる・・・
「・・・?」
ん? なんの音だ?
くぅ~・・・きゅるきゅる・・・
なんだかマリー(もう確定だな)から聞こえてくる。
幕張ICからだいぶ走ってきた。40kmくらいか?
彼女をみると、おなかを押さえて顔を赤くしている。
「どうした? おなかへったか?」
「…うん」
「なんだ、なら、挑戦してみたい店があるんだが、いいか?」
「挑戦???」
「ああ、すぐそこだ」
「なに? 大食いでもやるつもり?」
「いや、ドライブスルーさ」
「ドライブスルー?! ええっ!? 経験したことない!!」
「おお、ならちょうどいい。行って見るか。ちなみに牛丼屋だ」
「えっ?! …私、牛丼って食べたことない…」
「おー、なら人生初挑戦、いってみようか!!!」
「うんっ!」

国道16号を南下し、アクア連絡道の袖ヶ浦IC数km手前に、その店はある。
日本全国に展開している牛めし屋 ”松屋”。
俺は今まで利用したことがなかったが、そこは生まれて初めて見つけた
ドライブスルーの利用出来る松屋だった。

「並2つ」
ドライブスルーでの牛丼は生まれて初めてだ。
マクドはしょっちゅう、ケンタのフラチンもちょくちょくだが、
牛丼は未経験だった。
隣ではマリーがまだかまだかと目をキラキラさせている… 思わず頭をなでたくなった。
はっ… いかんいかん…

弁当を受け取り、そのまま袖ヶ浦ICから高速に乗る。
高速走行中、となりでは、
”はぢめてのぎゅぅどん”と格闘しているマリーがいる。
「お、おいしい!! あたたかい料理ってあまり出ないから、すごくいい!」
お気に召したようだ。
ああほら、ほっぺにご飯粒ついてる…
「ご飯粒ついてるぞ?」
「んぅ、どこ?」
わたわたと探すマリー。
「ここだ。しょうがないな」
ひょい ぱく。
「・・・わたしの分、たべた・・・」
ええ?! そこでそうきますか?!
ってあれ? 顔真っ赤だぞ…
「マリー?」
ビクッ!。
「し、しらないしらない!」
あ、そっぽ向いた。
「・・・・・・」
なんか俺、やばいんじゃね?


4・
お、パーキングエリアだ。

君津ICを過ぎてパーキングに入る。

「ちょっと休憩するぞ」
「え?」
「トイレだ」
「あ、うん…」
なにか考え事でもしていたのだろうか… 生返事っぽかった。
「私も、トイレいく…」
「おう、いっとけいっとけ。もう袋なんてないからな」
「ばっ!…」
ぐあ、言い過ぎたらしい… なみだ目だ(汗
おいおい、睨むな… こっちみんな…

車を降りて建物に向かう。
「ほぅ… さすができたばかり… いろいろとピカピカだな」
「トイレがきれい~♪」
「じゃあ、15分くらい休憩したら出るから、そのつもりでな」
「は~~い」
ふぅ… 金髪がふわふわして遠目から見ても気を引くかわいらしさだな…
性格はいいんだろうけど無鉄砲なとこあるしな…
いっそマリーを家に飾りたい衝動にかられそうだ… いや、やめとこう…
トイレのなかで、ついでに、車からマリーの・・・が入った袋を処理にかかる。

用を済ませると、ふと、エリア内で街中で見かけない自販機をみつけた。
いや、街中のとはそっくりなんだが、奇妙な言葉が入ってる。
”災害支援ベンダー”…! なるほど。
言葉から察するのと、実際の説明書きとが合致する。
停電状態でも購入が可能なのか。

ガコン!
意識覚醒用に缶コーヒーを購入した。
しかし、停電状態でどうやって動くのだろうか…バッテリー? 発々? まさかカラクリ仕掛けとか…

自販機前で思案してるとマリーがやってきた。
「なにむずかしい顔してるの」
「いや、この自販機が停電しても買える機械だからどうやって動くのか考えてた」
「ふーん」
つまらなさそうだ。
機械の仕組みについてつい考え込んでしまうクセはどうにも抜けないなぁ。
と自嘲しつつも、さて… マリーに飲み物かってやるか…
「なにか飲むか?」
「んー… ほしい、かも。 同じのでいいよ?」
「え、ブラックコーヒーなんだが…」
「あ、だめ… 甘いのがいいな…」
「激甘コーヒーがあるけど、どうだ?」
「ん、それでいい」

ジョージア マックス コーヒー… これしかないだろ
「なににやついてんのよ?」
「いや? 激甘で後悔すんなよ?」
「ふん。(パカッ) んくんくっ、んく… あっま~い!」
「甘いだろ? それ毎日飲んでたら、糖尿病になるぞきっと」
「おもしろい冗談ね? でも、すごい甘いねこれ…」
「昔、ジョージア名称がついてない時代のマックスは、もっと甘かった。
 マックス甘いコーヒーといっても過言じゃなかったんだよ…」
「うそ?!」
「ごめん、実体験してないから聞いた話しだ」
「なによ 知らないんじゃない」
「いや、友人から聞いた話だが、比べたら現在のやつより甘かったって言葉はあるんだよ」
「これより甘いの…?」
「うん。でも、苦いの苦手でもこれならのめるだろ?」
「…うん」

ここのパーキングの喫煙所はまだ建設中だった。
隣に青空喫煙所があったので、そこで吸うことに。
懐からタバコをだして、ライターを探す。
だが、探す手がマリーにつかまれた。
「なに?」
「タバコはやめて… おねがい…」
うあ、上目遣いに見るなって… 悪いことしてる気持ちになるんだって。
「う… あ…」
「体にも悪いから、ね?」
…吸う気が失せてしまった。日に2~3本しか吸わない貴重なものだったが、
こんな美少女に抱きつかれて懇願されたら、吸う気も失せる…
「わかったよ… きみの前では吸わないよ」
「いや、そうじゃないんだけど… ううん、わかった」
わかってくれたか。送り届けたあと、めいいっぱい吸おう。
…ピアニッシモ・ペシェだけど。

タバコをとめられたので、ちょっと周りをみてみた。なんか人工的な丘がある。
マリーを促し、ちょっと上ってみることに。
「うわあ パーキングとか、いろいろ見渡せるねぇ~!」
一人駆け足でのぼっていってしまったマリーを追いかける。といっても歩いてだが。
先に上りきった彼女が、こっちに大声で話しかけてきた。いや、感想か?
自分も登りきると、そこには先客がいた。
学生のグループ? がマリーを確認すると、友人たち(と思われる)で話あっている。
「カワユス」「超お持ち帰りケテイ」「こらこら やめとけ」など。
おいおい、おまいらも俺と同類ですか。
学生たちは俺を確認すると、丘から降りていった。
離れていく会話が細く聞こえる。
「今夜はきっと」「ラブホでしっぽり…」「金髪美幼女、たまんねぇ…」
こらこら…俺は一回、命狙われてんだぞ… そんなことしたらなにされるかわからん。
しかし… しかし、だ… 仮に~
「なに? どうしたの?」
いつの間にか駆け寄ってきてたマリーに驚く。
「うわ! い、いや、なんでもない」
やばい、顔が赤いと思う。 彼女を凝視できない。
「へんなの」
いかんいかん…なに考えてんだ俺! 相手は2回り近く年が低いんだぞきっと!
それだったら対象にすらならんっ!!
「ねぇねぇ、それより、あっちにハンカチが結ってあるの。なんだろうね~?」
考えを切り替えろ。ん? ハンカチ?
マリーに引かれるままその場所に至る。
鉄製の柵に、ハンカチがいっぱい結ってある。なんだ? これ。
「なんだかわかるー???」
彼女は本気でわからなそうだった。
よし、適当ぶっこいてみるか。
「きっと、どこかのカップルが二人で結って、末永く幸せになれるようにとか、願ったものじゃないの?」
「ええっ?! それホントっっっ!?」
やばい、目がキラキラしだしてる… 今”嘘だ”といわないと、フォローしきれなくなるっ。
「冗談だよ… 正直判らん」
「ええー? なんだよぅ!!」
ぶ~! とふくれて抗議してきた。
はっはっはっは と笑いながら頭を撫でてみる。
「マリーは素直でいいこだな」
「笑いながらいうなあぁ!」
「ぐぇ」
みぞおちにパンチがはいった。いてぇ…
「あっ?! ご、ごごごごめんっ!!」
俺は丘備え付けの長ベンチに腰掛けた。
マリーも隣に座り、心配そうに覗き込んでくる。
…こういう仕草が俺にツボだ。
彼女はわかってやってるわけではないだろうが、ドキドキする。
 :
 :
「なぁ」
「なに?」
俺は落ち着いた頃、マリーに質問してみることにした。
「なんで、こんなことをやってんだ?」
「こんなこと って、ヒッチハイクみたいなもののこと?」
「そうだ」
初めはカージャックだったがな。 は心の奥にしまった。
「それは・・・・それはね・・・・・・」
俺はそれから、ポツリポツリと喋るマリーに耳を傾けた。
「私ね…いままで心からの友達って、いなかったの…」
「え? 友達?」
ヒッチハイクと友達の因果関係が結びつかずにそのまま返してしまった。
「うん。…私のひいおじいちゃんって、すごいお金持ちで、周りの大人ってみんな私から取り入ろうとか思ってるのばかりで…
 その大人の子達は、みんな私よりもおじいちゃん目当てで… 結局最後は絶交しちゃってね…」
マリーは悲しそうな顔をした…
「うん……」
「それでかな… 小学校のときに… あ、小学校のときもお金持ちって理由だけで妬まれたりいじめられたんだけどね…
 それでも、私のことをあだ名で呼んでくれる女の子たちはいたんだけど、そこにアイツが転校してきたんだ」
なんか… 小説で読んだような状況だな… 事実は小説よりも奇なりってことか…
「そいつは、男子のなかでも大人びてて、でもとりつきやすくて、だれにでも平等に接してくれて…」
「それで?」
「それでね… そいつが来てから、私にも普通に接してくれてね… いつか靴が隠されたときも探してくれたし…」
「うん」
「で、そのすぐあとかな… クラスメイトに川に突き落とされて溺れたときに、そいつが真っ先に助けてくれたの…」
思い出しているらしい… 顔が真っ赤だ。
「ほうほう… なるほど、マリーには麗しの騎士様に映ったんだ?」
「・・・・・・」
恥ずかしがるなっ なんかごちそうさまな感じだよ
「で、でね? そいつがまたすぐに転校って話になって、思い切って告白…は出来なかったんだけど、
 メルアドの交換はできたの。それからかな… ちょくちょくメールしあってたんだけど、いきなり返信がこなくなったの」
「・・・・うん」
途絶えたことが気になるな…
「2ヶ月位してからかな… 何度目かのメールを送ったら、メールがまた復活したの」
「ほぅ、よかったじゃないか」
「うん♪ でも、なんだか様子が変で… だから、思い切って会いに行こうって、家を出たの」
まてまて…
「それじゃ、手持ちの金がないとか、そういうことか? 交通費も?」
「ううん? お金はあるの」
驚いた… もしココで無いとなると、自宅まで送り届けなきゃ自分、鬼だ。
いや、そういうわけじゃない… 送りたくないわけじゃなくて、むしろ逆だ。
だがしかし、俺が理性を保てるか は別問題だ。いやいや、少女を相手にするな 落ち着けおれ!
「? どうしたの?」
だぁ!!!
「い、いやいや、続きをどうぞっ」
「それでね… お金はあるんだけど、おじいちゃんやおとうさんが、いっちゃダメって…」
「まさか・・・ 反対されて出てきたんじゃ…」
「・・・・・・・・・・うん」
うわわわわわ… 家出じゃないかっ!
「なぁ、家族の誰か、知らないのか? ここに居ること…」
「しらない・・・と思う」
うわー… 家族が心配してるぞ… 下手したら俺、誘拐犯?!
「で、山手線に乗っているところを見つかってね? 車で連れ戻されてるところに、コンビニに寄ってもらって、
 ちょうど康平の車の鍵が開いていて、チャンスと思ったの」
…だからかっ! 黒服の男が慌てていたのはっっっ!!!
どうしようどうしよう… 冷や汗が止まらない。
「大丈夫? 顔が蒼いよ?」
ペタ。
うわ、手が小さいっ… ひんやりして すべすべしてキモチいい・・・
…だあああああ!
「いっ、あっ、いあいあいあいあ、大丈夫だからっっっ!」
「そう?? アレなら、もう少し休憩しよう?」
「いっいやいや、いくぞっ! ほら、乗った乗った!」
俺はぬぐいきれない冷や汗を流しつつ、丘を降りて車に乗った。
「あ、まってよー!」
マリーもトコトコついてきて助手席に乗る。
…そして、俺らはパーキングエリアを後にしたのだった。



エリアの隅では…
「・・・見つけました。不明の男(成年)と思しき者と行動を共にしてます。はい、わかりました。後を追います」
セダンタイプの車がそこを後にした。

ほんと、俺、どうなるんだ?!

5・
富津館山道の終点へ何事も無く到着した。
ナビの結果からの予測だと、あと数十分で目的地に到着するらしい。
「なんだか、どきどきしてきた…」
「会えるといいな」
「うん」
なんともほほえましい。応援したくなってしまう。
しかし、さっきからついてくる車がいるような… 気にしすぎか?
黒いセダン車がつかず離れずいることに気がついた。
気のせいだな。尾行だとしたら、ばればれだ。きっと違う。

何度目かの交差点を曲がる。目的地まであと少し。
後ろにいた黒い車も、いつの間にかいない。なんだかほっとした。
……なんで俺がほっとするんだ? やましいことはしていないのに…。
<<目的地周辺です。ナビを終了します>>
PSPナビの欠点がこれだ。周辺になると、直前で終わってしまう。
どうせなら、この家の前です まで案内してほしいものだ。
あとは自力で探すしかない。
「住所の番地までわかったが、ここからは自力だ。一緒にさがしてくれ」
「う・・・ん、わかった」
「なんだ、元気がないぞ?」
「ううん、なんか、会うのが怖く」
「ここまできたんだ、覚悟決めろ」
「うん・・・」

目的の家はその後すぐに見つかった。
閑静な住宅街がかるく広がる高台のところにその家はあった。
家の前に車を停めて、エンジンを切る。
マリーとおれは車を降りて、呼び鈴の前に立った。
「さぁ」
「うん…」
<<ぴんぽーん♪>>
「はーい」
「み、御神楽真理です、ああああの、以前にゆゆ、悠太さんに助けていたただだいた」
「真理ちゃん???!」
ん? 相手はなんか大慌てだぞ?
「ちょ、ちょっとまってね!」
がちゃがちゃ、がちゃっ。
ドアが開く。出てきたのは、お姉さんと呼んでもおかしくない若い女性がでてきた。
「悠太くんのおかあさん」
「ま、まぁまぁ! こんな遠いところまでよくきたね! さぁさ あがってあがって!」
「は、はいっ」
こっちを向くマリー… 一緒にこいってことか?
「あ、あら、そちらの方は?」
やっぱ、男がいると気になるよな。
「いえ、その、おれはマリーの」「保護者みたいなものですっ」
おいおい。 まちがっちゃいないと思うが…
「あら? そうなの…?」
「ここまでつれてきてもらったんです」
マリーが言う。
「あらあらまぁまぁ… 遠いところからご苦労様です。 さぁさ、あがってくださいな」
「わ、わかりました。お邪魔いたします」
「どうぞどうぞ」

俺らは応接間らしき場所に通された。
椅子に腰掛けると、麦茶をお盆に載せて先ほどの女性…悠太くんのお母さんが現れる。
俺にコップを差し出しているときに、マリーが口を開いた。
「あの、ゆ、悠太くんはいまどこに?」
その言葉に激しく動揺するお母さん。俺に手渡すべくコップを落としてしまった。
「うわっ」
「!? ご、ごめんなさいっ!」
カーペットに麦茶がこぼれている。
悠太母はあわてて奥にひっこみ、すぐにふきん片手にもどってきた。
「ああ、それは俺がやっときます。彼女はやっとのことで悠太くんに会いに来たんで、
 早く会わせてあげてください」
さっきからマリーが落ち着かないんで、目的を達成させてあげたほうがいい。と、母に促す。
しかし、母は鈍重な動きをみせた。
「どうしたんですか?」
俺は聞く。
「い、いえ、わ、わわ、わかりました。悠太は奥にいますから、真理ちゃん、こっちへ…」
「は、ははは、はいっっっ」
ふぅ、行ってくれたか。
じゃあ、俺はこぼれた茶を拭きますか。
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「いやああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
マリーの絶叫がこだまする。
俺は拭いていたふきんを手放し、声のした奥へ駆ける。
「マリー! どうしたっ!!!」
マリーがいたと思われる部屋に近づくと、部屋から駆け出してきた彼女に思いっきり抱きつかれた。
いや、タックルか?
おれは転倒してしまった。
「いやああああ!!! うそっうそっ!! うそよぉぉぉぉおおおおお!!!」
腹のあたりで顔をぐりぐりしてくる。彼女は泣きじゃくっている。
おれは、何があったのか、問う。
「どうした! なにがあった!!」
「いやあああああ!!」
らちがあかない。すると、部屋から申し訳なさそうな顔をした母が出てきた。こちらも、泣いている。
「・・・・・・なにが、あったんですか?」
おれはちょっとしかめっ面になっていたかもしれない。悠太母に問いかけた。
「・・・・・・・来ていただければ、わかります・・・」
母の言葉に、俺はマリーをつれて…というよりも、抱えて、部屋に入った…
そこには、立派な仏壇と位牌が佇んでおり、線香が煙をたてていた。
悠太母が位牌を手に取り、言った。
「これが、悠太です…」
俺は愕然としてしまった。
マリーの腕の力がいっそう強くなる。骨が折れるほどではないが、力いっぱいだというのが判る。
すでに声はでないようだった。低くくぐもった嗚咽が、マリーから漏れている。
俺は、このパターンは予想できなかった… いや、母の行動から気づくべきだった。
気づけと言われても気が付く要素はなかったんだが…結果的に、マリーを悲しませることになってしまった…

6・
しばらくマリーは俺に体を押し付けて泣き続けた。あたりが夕刻になるころ、少し落ち着いてきたのを見計らい、
俺は悠太母に「なにかあたたかい、おちつく飲み物をください」とお願いした。

「マリー…」
やさしく問いかける。だが返事はない。もぞもぞと動くだけだ。
「哀しいのはわかるが、このままじゃだめだろ… とりあえず、これ飲め…」
悠太母が用意してくれたのはホットミルクだった。色合いと匂いがそんな気がする。
このまま飲まないよりはマシだと思ったので、飲ませることにする。
マリーが顔をあげる。泣いたせいで顔がぐしゃぐしゃになっていた。
彼女は俺に促されるまま、ホットミルクを飲む。
んく。んく。んく。
飲み込む音が静寂な空間に響く。
そして彼女は、言葉を発した。
「う、うううううそ、嘘よ… こ、こここの間までちゃんとメールしてたのに…」
「・・・・・・」
そばにいた悠太母は黙ったままだった。
「き、きき、昨日だってメールし、したわ! 昨日のニュースのことも話題にっっっ!!」
「落ち着け」
残ったミルクがこぼれそうになったので、俺が掴んでテーブルに置く。
「だって! だって!! わ、わわ私っ」
マリーのメール話は車の中で聞いた。
楽しそうに先日までの話題をやり取りしていたことを話し、メールの中身を見せてくれた。
おれは、ふと気になる事があったので、悠太母に聞いてみた。
「…悠太君のお母さん。悠太君の携帯って、今手元にありますか?」
「えっ… 悠太の… ですか?」
「ええ。マリーがこんなに動揺するのも、亡くなった後でもメールのやり取りがあったことにあるわけで…
 本当にその履歴が残っているのか、確かめたいのですが…」
悠太母が何を思っているのか不明だが、悠太君が死んだというのは嘘で、
実は軟禁か監禁されててたまたま携帯を持ってたのでメールできている と考えられなくもない。
しかし、監禁状態なら電話すればいいことで… それが出来ないとなると面会謝絶の病室からメールをしている???
そもそも生きておらず、ファンタジックに霊界からの警鐘とか… いやいや、ありえないな。
「ないんです」
はい?
「は? ないとは?」
悠太母の言葉が最初は信じられなかった。
「悠太の携帯は無いんです。 …じつは…」
そこから先に聞いた言葉は、俺には信じられなかった。いや、常識的に考えて、ありえないだろう。
悠太母曰く、悠太は坂道でブレーキが故障してそのままカーブを曲がりきれずに反対車線に飛び出してしまったこと。
そして運悪くそのままタンクローリーが通りがかったこと。
打ち所が悪く、即死状態だったこと。
ノンブレーキということは警察と運転手の証言により確定し、日ごろから整備を怠っているのが悪いということを指摘された。
そんなことは信じられない。運転手を呼んでこいと訴えるも、警察にとめられたこと等、苦い思いを打ち明けてくれた。
そして悠太の49日法要が終わったころ、突然軒先に黒服スーツの男が現れて、「悠太君の携帯を売ってくれ」ときたこと…
「う・・・うそ?」
「その男に売ったんですか?」
「ええ… これ以上つらい思いをしたくありませんでしたので…」
でも、携帯譲渡…はできないだろうに…?
「大金を積まれて… 主人も始めは断っていたのですが… 額がどんどん大きくなって… 相手は本気だということに気がついて…」
「それで譲った…と」
信じられん。
「その後の手続きとかは?」
「任せてほしいと… 委任状を書いて、任せていたら携帯会社から訪問があって… ”異例ですが名義変更しないまま譲渡しました”と」
…ますます不可解だ。なぜ名義変更しない? なぜ? そんなの、マリーの為だけに大金積まれたって思えてくる…
マリーのためだけ? ん? なんだ、ひっかかるぞ?


えーと? マリーは悠太君に会いに出かけようとしたら親に止められて?
出かけたらなぜか山手線で見つかって?
そもそもなぜ山手線でみつかっ……… そうか!
「マリー! 君はまだ携帯もってるな?!」
「な、なによ突然… きゃっ!」
マリーの携帯を奪い取る。最新機種だった。
なるほど… GPS機能か。通りでマリーの後を追いかけられるはずだ。
ははは… バレバレってわけか。きっと携帯を買い取ったのは真理の親の意向だな。
親バカか… でも、本当に悲しませたくなかっただけなのか?
しかし、ここにいるって事は、すでにばれているんだろうな…
「なによ! なんなのよ 携帯返してっ!」
奪いかえされた。

「…あの」
悠太母が話しかけてきた。
「な、なんでしょう?」
「もし… よろしければ、悠太へお参りしていただけないでしょうか…」
「…マリー」
おれはマリーを伺った。
こくん。
無言ながらもうなずくマリー。
「では、準備してきますね」
悠太母は部屋を後にした。
「マリー?」
「…やっぱり …死んでるの?」
俺は言葉に窮してしまった。
「悠太君のお母さんが嘘をついているようには思えない。しかし、にわかには信じられない」
ゆっくりと、肯定の中に希望という名の否定を混ぜて言う。
「私、生きてると思う。ううん、絶対生きてる」
いや… 残念だがマリー… 彼は確実に死んでいると思う。
君はまだ現実を受け入れられないだけなんだ…
…きっと彼の携帯を買い取ったのはマリーの身内だ。
なぜこんな手の込んだことをするのだろうか…
それがすごい不可解だ…… なにか裏が… そう、裏があるのではなかろうか…

-続く
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  • 鉄山宏子さんが怒た -- 森脇徳一 (2013-07-25 17:44:55)
  • ちょw おまwwwww 市場自重しろwwwwww -- 作者@81 (2008-02-22 07:02:53)

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最終更新:2013年07月25日 17:44