ルーラ・キャラット

マリック王子とカトリーヌ王女にしばしの別れを告げて、私達はじゃっくん……もとい、ジャックさんに、ブレスくんが向かおうとしている洞窟まで道案内してもらっていた。
……時々チラチラ、ブレスくんに視線を送りながら。

(はぁ……かっこいいなぁ、ブレスくんっ……)

青緑色の綺麗な長い髪と少しだけ冷たい印象を受ける青い瞳。
だほだほのローブを纏った彼はそのまんま『魔術師』と言うイメージ。ぼ~っと観察しているとシリウスちゃんとも話が弾んでいるようだし……魔法使いなのかな?
どんな魔法を使うんだろう。魔法を使いモンスターと戦うブレスくんはきっとこれ以上にかっこいいんだろうなぁ。
……その時、一升瓶を振りかぶり、マリック王子から私を守ってくれたブレスくんの勇姿が頭によぎった……。(※ルーラヴィジョンによりやや美化されています)
旅先で歳の近いかっこいい男の子と出会って、絶対絶命のピンチを助けてもらって、しかもしかもそんな素敵な人に同行できるなんて……!
(やっぱりこれはきっと――運命!!)
っていう事はブレスくんはやっぱりやっぱり私の……!

「……~~あのな、何だよ、さっきから」
「え?……はっ!え、えへへ。見つめてたの……バレちゃった??」
「ずっと前からね」

はぁ、と溜息を吐いてブレスくんはそっけなく答える。
その後ろでシリウスちゃんが「あれだけ熱視線を送ってりゃ普通に気付くわよね」なんてぼやき、シリウスちゃんの隣でプラチナくんが頭にクロちゃん乗せたまま苦笑している。

「だいたい王子様って。夢見るのも大概に……うん?」
「??どうしたのブレスくん?」

並んで歩いていると、ふ、と。ブレスくんの視線が私の手元へと移った。
そこには――先ほどマリック王子が私にプレゼントしてくれたエメラルドのブレスレッド。キラキラと、美しい輝きを放っている。
……それを見つけたブレスくんの顔がなぜだか険しくなる。

「お前……それ」
「あ、これ?マリック王子がプレゼントしてくれたブレスレッドだよ!綺麗でしょ?」
「ふぅん。あんな事があったのにまだそんなのを付けてるのか??」

あんな事……と言うのはマリック王子が私を無理やり連れて行こうとした例の事件、の事だろう。
確かにあの時は少しビックリしちゃったけれど。シリウスちゃんと離れ離れになっちゃうんじゃ、って少しだけ焦ったし……。
本当はあの時、マリック王子の注意はシリウスちゃんに向いていたし、いくらだって反撃のチャンスはあった。……ううん、マリック王子以外の男の人だったら間違いなくパンチしてたかも。
それでも、私があの時抵抗しなかったのは……


「マリック王子は私の友達だから!旅に出て、マルーンに着いてからの初めての友達!!だからこれはお守り、だよっ」


笑顔でそう答えると、ブレスくんは少しだけ驚いたような顔をした。


「それにこのブレスレッドには魔法のリフレクターがついてるんだって。だから、いざとなったらマリック王子が私のこと守ってくれるかもしれないじゃない?」

「お前ってさ…………。……はぁ、ヘンな奴」
「へっ??」
「べっつに」

何か言いたげだったみたいだけど……ブレスくんは私の言葉を聞くなり、ふいっとそっぽを向いてしまった。
私、なんか気に障るような事言った、かなぁ……?
少しもやもやしたまま歩いていると、

「――おっと、ここだ」

先頭を歩いていたじゃっくんが急に足を止めた。

「……あら、意外と近所だったのね」

シリウスちゃんが『それ』を見て冷静につぶやく。


そこには……小さな洞窟が私たちを待ち構えていた。
入り口の小さな洞窟。中は薄暗くて、今にもお化けが出てきちゃいそう……。み、みんながいるから大丈夫、だよね……?


「う、うわぁ……結構暗そうだぞ。だ、大丈夫なのか??」
「うーん、魔法で灯りをともせば大丈夫じゃないかな?」

私と同じく怯えているブレスくんに、プラチナくんが優しく微笑んでフォローしたんだけど――

『なんだよ、ビビってんのかよブレス?ニャハハハっ!!だっせー!!』
「うっ、うるさいぞこのクソ猫!!」
『なんだとォ!?だいたいオレサマは猫じゃなくて、使い魔の――』

……クロちゃんが余計なことを口にしたせいで話がこじれてしまう。
ああもう!目の前には初ダンジョンが私たちを待ち構えているっていうのに!!

「ちょっと、ふたりとも――」

私とシリウスちゃんが二人の言い争いを止めようとした瞬間。

「……≪ファイア・ボルト≫」
『にぎゃあああああああ!!!』

クロちゃんに炎の魔法が命中し、クロちゃんはその名の通りクロこげに……。
……犯人はにっこりと笑顔を浮かべたプラチナくん。
無残なクロちゃんを放置したままプラチナくんが優しい笑みを浮かべたまま私達に振り返る。

「みんな……うちのクロが余計なこと言ってごめんね……?さっ、早く行こ?」
「あ、あぁ……」
「そ、そうね……」

プラチナくんの笑顔は優しくて穏やかだけど……どこか毒を感じる。

(プラチナくんってひょっとして……怒らせると怖い??)

優しい人ほど怒ると怖いって聞くけど、プラチナくんはまさにそれに該当するのかもしれない。
今度からプラチナくんと話すときは注意しよう。……私はクロちゃんの無残な姿を見て固く心に誓ったのだった……。

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最終更新:2011年09月06日 04:50