シリウス・フィーナ

「……ほんと、最後まで人騒がせね」
私は、今日一日がとても長く感じた。
私たちがトラスタ村を出てから、……本当に色々ありすぎた。
「でもー!素敵よね!いいなぁ、私も結婚したいなぁーっうふふっ!」
ルーラがうっとり、そして嬉しそうに飛び跳ねた。
「……誰とよ?」
私がルーラに質問した。
「もっちろん、私の王子様ー!」
青緑の少年の腕をぐいっと掴んでルーラがそう言った。
「……名前も知らないのに?」
ルーラにそう突っ込むと、思い出したかのように
「ああーっ!私そういえば命の恩人の名前聞き忘れたーっ!ねえねえ、君はなんて名前?」
「ブレス……トレアン・ブレスだけど……お前、さっきあんなことがあったのにまだ王子様って言ってんの?
 ……あほらし」
ブレスは、少し顔を赤らめながらそっぽを向いた。
「そんなことないってばーっ!いい名前ね、ブレスくん!よろしくーっ!じゃっくんもよろしくー!」
ルーラがぶんぶんとブレスの腕を振り回すように握手する。
「お、おいおい、俺も入ってんのかよ……まいったな」
ジャックがそう言った。
「そういえば、あなたはアルフレド王国に帰らなかったのね。どうして?」
私がそう訊ねると、ジャックは
「おいおい、さっきお節介なマリックから聞いただろ?やることがあるんだ。……なにより俺は、このブレスと探し物しないとな」
「そういうことなら、私たちもついていっていーいー?」
ルーラは無邪気にそう答える。
「ええっ……やだなぁ、騒がしい子は苦手なんだ……」
ブレスは、少しだけ嫌そうに答える。しかし、目線はあさっての方向だ。
……もしかして、照れてる?
「おお、いいぜ!旅は人数が多いほうが有利だったりするしな!」
ジャックは、快く賛成してくれた。
「……ですって。あなたも異論はないわね?」
私はブレスにそう訊ねる。
「……足手まといにはならないでね」
ブレスはそう言って、なるべくルーラの顔を見ないようにしている。
「きーまりー!みんな、よろしくね!」
ルーラはジャックにも握手をした。
「……そういえば、誰か……忘れてねぇか?」
ジャックがふと思い出したようにそう言った。
「……そういえば……」
ブレスも、何か思いだそうとしている。
すると、遠くから声が聞こえた。
「はぁッ……はぁっ……!ジャックさーん、ブレスさーん!!」
ブレスのように長く、銀色の髪を束ねた蒼い瞳の少年と黒い猫が向こうから走ってきた。
「や、やっと終わりましたぁ……修復……そ、そちらの方は?」
走って来たせいか、すごく満身創痍な様子で少年は息を切らせながらそう言った。
「おう。おわったか。ありがとなープラチナ。……ってお前が破壊したんだけどよ」
ジャックがプラチナと呼ばれる少年にそう言った。
「私?私はルーラ!ルーラ・キャラット!よろしくね!隣のスカイブルーの髪の子がシリウスちゃん!」
ルーラは元気にプラチナに自己紹介する。
「シリウス・フィーナよ。宜しく」
私もルーラに続いて自己紹介をする。
「やあ。僕はプラチナ・ガーネットだよ。昨日この街にやってきたばかりなんだ!こう見えてアーチャーなんだ!」
プラチナと言った少年は弱々しい笑顔でそう言った。
『はーっはっはっはー!そして俺様はクロロン・エース様だ!』
……プラチナの横にいた黒猫が、いきなり喋りだした。
「……その猫は、使い魔ね……?マジシャンでもないのに、どうして……」
私はそう言うと、プラチナは
「あ、あはははは!これは友人からの預かりものなんだよ!珍しいでしょ?喋る猫ー!」
ごまかすようにそう言った。
「ふぅん……?」
私は少し不審に感じたけど、深くは問い詰めなかった。
『お、俺様は猫じゃねえっ!クロロン・エースっていう名前が……!もが!』
「五月蠅いよ、クロ」
にっこりとプラチナが笑ってクロの首根っこを掴んだ。
「クロちゃんかーわいー!よろしくねーっ」
ぎゅむー!とルーラがクロを抱きしめる。
『ぎゃあああ苦しいいいい!!やめろ!小娘えええ』
クロが、ルーラの腕の中でもがいている。
そんな様子を、私たちは笑った。

そして新しい仲間を迎えて、私たちは歩き出す。

それぞれの目的を、果たすために。

人捜し、材料集め、あるいは愛するもののために。

私たちは次の旅路へと歩みだす。

その旅路を、いつかは終えるために。

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最終更新:2011年08月05日 02:14