フォルテ・カンパネラ

 カルネが救った少女こと、名はメイリス・ロータスと言った。
この森で生活する錬金術師だそうだ。ブロンドの髪をツインテール?っていうのか?髪の長い少女だ。
『こー見えてあたし、結構スゴ腕なのよ!』と自慢している。実際、お礼にカルネの薬を作っているそうだから。
「なぁ、メイリスちゃん。お前……水色のローブが何処いったか知ってるか?」
「……!
 あ、あとメイリスでいいわ。知ってはいるけど……危険だよ」
「オレはカルネと戦友なんだ。戦友の敵を取るためなら危険なんか怖くなんかねえ!
 っていうかお前のほうが怖えぇ!初対面で刃物で傷付けるとか!」
「あはは、……あれは事故なんだってば。ごめんって。
 でもその薬、結構効いてきたんじゃない?」
もともとあまり深い傷でもなかったが、成る程ほとんどもう痛みもない。
この薬。ペパーミントのようなハーブの香りがする。
「いいけどよ……とりあえず、なんでも良いから教えてくれよ」
オレは真剣な目でそう言った。
「はぁ……負けたわぁ。いいよ。教えてあげる。
 水色のローブは大いなる力を悪いことに使おうとしているの。
 ええと、そうね。何より一番やっかいなのは大きな力を持った人間に力尽くで挑んでくるの。
 カルネさんも……なんとか命は取り留めたけど、結果片足が義足になっちゃうわね……」
メイリスは、不安そうな顔をして……すぐに何かを決意したような顔になった。

「水色のローブは、また北のほうへ向かったわ。
 何を企んで居るのかもわからない。またきっと、カルネさんのように――」
メイリスはうつむいた。涙がぽつぽつと、メイリスの手にかかった。
「おい、泣くなよ……あいつは、お前が思ってる程弱かねぇよ。なんたってオレの戦友なんだからよ。
 きっと、メイリスが薬作ってとなりにいてやれば回復は早いはずさ」
「当然よ……あたしを誰だと思ってんのよ……。
 でも、カルネさんは……盾になってまで私を……」
困ったな……女の涙は苦手だ。
いや、プラチナの涙もなかなかオレにはダメージがキたっていうか……涙が苦手なんだな、多分。
「いーんだよ。カルネはああいうヤツだ。お前みたいな少女をほっとけないっていうかな。正義感の強いヤツなんだよ。
 そうか。じゃあオレは北に向かう。カルネを頼む。ありがとな!メイリス」
オレはメイリスに精一杯の笑顔を見せた。
「死なないでよね」
メイリスは、それだけ言ってひらひらと手を振った。
「おうよ」
オレも、ひらひらと手を振って、メイリスの家から出て行った。

北に、何があるのか。
オレにもまだ分からない。

水色のローブが、悪いやつだってことはかろうじて分かった。
メイリスが言うには大いなる力とは魔術、そして錬金術のことをさすらしい。
水色のローブが狙うのは主に魔術士・魔導士らしいが……。
あのとき会った少年――プラチナは、たしかダークウィザードじゃなかったか……?
生きているんだろうか、無事なんだろうか。

だが、生きていればいつか会える。

オレの旅路は、ここから始まったのだった。

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最終更新:2011年07月15日 20:58