機動六課にとんでもない野郎共が来たようです


「え~、突然ですが機動六課に新しい部隊員が入ります」

ざわざわざわざわざわざざわざわざわざわざわざわざわ
早朝に開かれた緊急招集ではやての言った突然の言葉に六課一同はざわめき立つ。

「静粛に」

はやては凛とした口調に毅然とした態度でこれを諌める、正に部隊長の威厳を持った姿だったが次に口を開いて出てきたのは拍子抜けするような言葉だった。

「私は常々思ってきました、機動六課には男が足りへんと、男キャラがおらんと絵が締まらんと……」

その言葉にいっせいに六課の面子はずっこける、それはもう盛大に。
だがはやてのボケはそんな事はお構いなしに全力全開天元突破螺旋力120パーセントで突っ走る。

「しかしこれだけ美女・美少女が揃った六課には普通の男キャラでは釣り合いが合わんのです、よって私は最高の男達を集めました…」

はやての言葉と共に突如として壁がぶち抜かれてもうもうたる煙を上げながら一人の男が入ってきた。
その男が進入した瞬間にあまりの迫力にその場の全員が息を忘れて硬直する。

男は筋骨隆々たる五体に黒い装束、そして獰猛な笑みに逆立つ髪がさしずめ獅子のたてがみのようだった。
気迫と闘気に空気がグニャリと曲がってすら見える、正に“鬼”と呼べる風格とオーラ。

「地上最強の生物、範馬勇次郎さんや~」
「邪あああっ!! 阿呆が、喰うぜ」

男の名は範馬勇次郎。
地上最強の生物と呼ばれ、曰く鬼(オーガ)、曰くベアナックルアーミー、曰く北極熊を容易く屠る、曰く一国の軍事力と同等の戦闘能力を持つという最強の男である。

「ちょっ! はやてちゃん!」
「なんや、なのはちゃん?」
「ヤバイって、範馬さんは本気で危ないよ!」
「まあまあ、落ち着きやなのはちゃん。確かに勇次郎さんは“ちょっとだけ”やんちゃやけどキャラ濃くて良いやん」
「いや! そういう問題じゃないから!! 下手したら“俺の子を産め”って展開になるよ!? それにあの人は絶対に命令とか聞かないから!!」
「大丈夫やって、勇次郎さんは子供は範疇外やし、気まぐれで手貸してくれるかもしれんし。それじゃあ続けて二人目の登場や~」

はやてはなのはの突っ込みを無理矢理封じて二人目の男の登場を促す。
すると、またもや壁が吹き飛ばされて巨大な影が進入して来た。

それは明らかに人間の影ではない、まるで象かと見まごうばかりの黒く巨大なそして美しい馬の影。
それに跨るのはこれもまた長身で逞しい涼やかな美丈夫である。
男はなんとも傾(かぶ)いた虎柄の鎧装束を着込んでいる、普通なら下品ともとれるがこれが下品どころかひどく似合って美しく見える。
そしてトドメと言わんばかりに男の羽織ったマントには“大ふへん者”と書いてあるのだ。
騎乗した男が部屋に入ってくると男の前で猿のような小男が“幸若”を舞い始める。

「この鹿毛と、申すは 赤いちょっかい皮袴 、茨がくれの鉄冑 鶏のとっさか立烏帽子、 前田慶次の馬にて候!!!」

「これが二番手、天下一の傾者(かぶきもの)、前田慶次郎利益こと慶次さんや~」
「ここが“みっどちるだ”か。随分とハイカラだ、粋だねぇ」

男の名は前田慶次郎利益、戦国最強のいくさ人にして無頼の傾者である。
あまりの事に六課の皆は開いた口が塞がらない、もう時間軸とかそんなレベルの話ではないのだ。

「いや、はやてちゃんこれはいくらなんでも無理ありすぎだから」
「何を言っとるんやなのはちゃん、無理を通して道理を蹴っ飛ばすのが私ら機動六課や!」
「違うから! それなんか違うから!!」
「さあ、なのはちゃんの突っ込みは置いといて三人目の登場や~」

またもや壁破壊で派手に登場かと思われたがそんな事はなかった、三人目は極普通にドアを潜って現われる。
その男の風貌は正に会社員とでもいうような変哲のない姿、スーツを着込み帽子を頭に被っている。
男の纏う空気は静か、だが身体から滲み出る気迫は先の二人に負けぬ猛者のものだった。

「最強のサラリーマン、現代の忍者こと高槻巌さんや~」
「みなさんこんにちは、高槻巌です。でも言い過ぎだよはやてちゃん、私はただの単身赴任のサラリーマンなんだから」

男の名は高槻巌、古来より脈々と受け継がれてきた忍者の血筋にして、アメリカ合衆国の諜報機関が総がかりになっても勝てず“静かなる狼(サイレントウルフ)”の異名ををすらとった最強の傭兵であり工作員である。

「っていうか何でこの人がここに!?」
「私が頼み込んだらOKしてくれたんよ~」
「ふふっ、はやてちゃんの頼みじゃ断れないからね」
「なんか顔見知りだし! はやてちゃんどういうコネなの!?」
「まあそれは置いといて、四人目や~」


男は既に部屋の中にいた、まるで最初からそこにいたように静かに佇んでいた。
その場にいた人間は誰もがその存在に気付くことさえできなかったのだ。
男は静かに葉巻を吹かしながらカミソリのような鋭い視線を投げかけ、一切の油断のない気配をかもし出している。

「世界最強のスナイパー、ゴルゴ13ことデューク東郷さんや~」
「………」

無言にて鋭い眼光を放つ男の名はデューク東郷、ゴルゴ13やGと呼ばれる世界最強のフリーのスナイパー。
最高の肉体・最高の技術・最高の精神を持ち、あらゆる戦闘技能と知識に精通した戦闘のスペシャリストである。

「用件を聞こう」
「今回の依頼は六課に敵対するものへのスナイプ(狙撃)、でも殺したらあかんよ~、いちおう専用の弾丸は用意してあります。それと報酬はもうスイス銀行に振り込みましたから」
「いいだろう」
「っていうか何でこの人が来てるの!? いくらなんでもムチャクチャだよ!? っていうか東郷さんって一応テロリストだよ!!」
「なのはちゃん、細かい事は言いっこなしやで~、そしてトリを飾るのはもちろんこの人!」

はやての声と共にトラックが猛スピードで壁をぶち抜いて現われる、もうあまりの事の連続に皆は声が出ない。

「いかんブレーキとアクセルを間違うてしもうた」

そして半壊したトラックから一人の大柄な男が出てくる、男は禿げ上がった頭に着物を着ており全身から見るものを圧倒する凄まじい風格をかもし出していた。

「もはや説明不要の大人物! 江田島平八さんや~」
「ワシが男塾塾長! 江田島平八である!!!!!」

男の名は江田島平八、かつて太平洋戦争で合衆国大統領に“EDAJIMAがあと10人いたらアメリカは敗北していた”とさえ言わせ、古今東西の武術に精通した生粋の武人。
世界最強の男にして、男の中の男を育てる男塾の長である。

「江田島さんキタアアア!! なんて人を呼んでるのはやてちゃん! こんなチートキャラ呼んだらもうストーリーとか成立しないよ!!」
「もう~、今日のなのはちゃんは某ジャンプ漫画のキレ突っ込みメガネ並に突っ込むんやね~。まあ細かい事は無しやって、これで六課の男日照りが解消するんやからええやろ?」
「だからって濃すぎだよ……」

はやてとなのはのそんな会話をよそに集結した男達はさっそく騒動を起こしていた。
それはもう収拾不可能なくらいのカオスレベルで。

「てめえが江田島か……美味そうだ、喰うぜ!!!」
「がははは!! 鬼の小僧が、いっちょ揉んでやるかの~」
「面白そうな喧嘩だねぇ。なら俺も混ざるか」
「止めたまえ諸君、なんなら私が力ずくで止めるよ?」
「俺の後ろに立つな」



この日機動六課の隊舎は半径数キロメートルを巻き込んで完全に崩壊した、原因は集まった数人の男達の喧嘩だとかなんだとか。

続かない。



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最終更新:2008年10月13日 21:20