題名に行きつくまでの流れを簡単に表現します。

「……お仕事が無いんです」

『町中周って全てにお断りを貰ったのを、一番近くで見てたから知ってるぜ』

「ついでに蓄えも尽きました」

『かれこれ一週間か……あんだけの金でもった方だろうさ』

「さらにこんな約束までしてしまいました」

『何故か相棒名義になっている借金の契約書の事か?
町外れに住んでる独り身の婆さんが、息子を都会の学校にやる為に作った借金を代わりに払わなきゃならねえんだ!?』

「だってあのままだったら息子さんも学校に行けなくなっちゃいますよ!?」

『相棒……脳味噌死んでんのか? 
現在進行形で学校どころか明日の食費も無いお前が……どうすんだよ?
期限は三日後! お前が今すぐワリの良い仕事を見つけても返せる額でもねえ』

「うぐっ……ゴメンなさい、バクラさん。」

『こりゃあ……あれしかねえな』

と言う事で……


『キャロとバクラが宝探し(≒盗掘)をするそうです』


「ここか……人が入った後なし。同業者に先を越されたって事もねえな」

桃色の髪に小柄な少女が睨みつけるのは、滞在する街から数十分ほど入った山の一角 地面から僅かに顔を覗かせる石造りのトンネル。
廃線になったなどの理由で埋められたものではないことが、壁面に輝く古代文字でわかる。
胸に輝くペンダントは千年リング、少女 キャロの体を動かしているのはソレに宿りし魂 バクラ。
盗賊王としての記憶が幾千と荒らした『墓』とこの場所が同じであると彼に告げている。

『確かに私の村の文字に似た……イエ、もっと古い文字だと思います。
でも街の人が誰でも知っているにこんな場所があるんですね?』

自分では絶対に出来ないだろう自分の笑みを見ながら、本来の意識であるキャロはバクラにのみ届く声で呟いた。
確かに今二人がいる場所は山に数十分入らなければ成らない場所だが、目に見えるところに道が通っている。
急遽のキャロがお節介で背負い込んだ借金をすぐさま返済する為に、このような場所の情報を集めれば街の者は誰もがここを告げた。
だが誰もここが特殊なものだと考えていたものは居ない。知りすぎた事実は価値を失い、陳腐に落ちるもの。

「地面に掘った跡なし……足跡は小さな獣? イタチか何かの巣にでもなってるのか?」

動物がすんでいると言う事はイコールで人が近寄っていないと言う事にもなる。
第一、 目の前に僅かに覗く空洞には流石にキャロの小さな体でも入れない。
だからこそ……バクラはキャロの僅かな荷物から長めのロープを取り出した。
それをキョトンとしているフリードの首に絞まらないように、だがとれない様に巻く。

「ほら行け、チビ竜!」

「キャッン!?」

『えぇ!?』

「フリード~行き止まりか、広い場所に出たら戻ってくるのよ?」

「キャウッ!」

「あとね! 縄が無くなったら引っ張るから、そうしたら戻ってくる! いい?」

キャロ、つまり正統な自分の主の説明にフリードは頷き、ズリズリと腹這いに成りながらトンネルへと入っていった。
その様を見送りハラハラするキャロに、バクラは縄を徐々に出すように告げてから、状況を説明する。

『風が出てるから行き止まりじゃねえのは間違いねえ。問題はその距離だ。
 そこでチビ竜を潜らせて、埋まっちまっている部分をそのロープで測らせるわけよ。
 もし俺たちの力で可能ならば、掘って進入って寸法さ。 OK、相棒?』

「あっはい! でも私とフリードじゃ掘るのに凄く時間が……」

そんな話をしていた時、穴倉から小さな白い物体 フリードが戻ってきた。
安堵してため息をつくキャロから体の支配権を譲り受け、バクラが先の彼女の疑問に答える。

「これなら充分掘れるな……見せてやるぜ! お前の魔法とやらにオレ様の闇の力を加えたスゴ技を!!」

『え?』

キャロの(勿論バクラの意思を宿す)体が手を突き出し、唱えるのは彼女が聴いた事の無い呪文。
召喚系の詠唱に似ているようだがソレが生み出す結果は全く想像できない。
地面に描かれるのはミッド式の魔法陣を見たことが無い文字 古代エジプト文字で飾りつけたもの。

『ヒッ!? これは……』

湧き上がるのは黒き闇、夜よりも尚濃い漆黒。腐臭に似た匂いは凍土のような冷たさ。
その中からカシャカシャと音を立てて現れるのは見事な甲冑の騎士。だが問題があった。
彼らには頭部と呼ばれるものが無い。ついでに鎧の中もガランドウ、ソレが三体。
立派な首なし騎士は三重奏で悲運な呻き声を漏らし、手に持っていた……スコップを動かし始めた。

「掘れ掘れ! 死霊ども!! もしかしたら天国に繋がってるかもしれねえぞ!?」

『「キュウ~」』

「ヒャーハッハ! 大成功だぜ、相棒! この前できたからやってみれば案の定!
やっぱりお前の力は本物よ~っておいっ! 聴こえてるか、相棒!!」


盛り上がるバクラを尻目にキャロとフリードの主従は眼前のリアル怪談のお陰で気を失ってしまった。

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最終更新:2008年01月30日 09:08