魁!! 非魔法少年(!?)リリカル源次 偽第一話「男塾万歳!」

その男は異様な…否はっきり言って異常な風体をしていた。
学帽は分かるそういう学校もある、だが長ランの下に上半身裸で腹にサラシを巻き下はボンタンとローファーという服装、こんな格好はいまどき大学の応援団くらいである。
おまけにやたらとゴツイ顔にはちょび髭を生やし右目の所に縦に走る傷を持っている、こんな男を子供が見たら泣くのは確実だろう。
男の名は富樫源次、男塾という私立の学校(狂気の戦闘集団)に通う学生である…ついでに言うとまだ十代の少年だ。

「ちっきしょう!! こりゃ遅刻確実じゃねえかよ!! なんで虎丸の奴起こしてくれねえんじゃあ!!」
富樫は叫びながら歩道を疾走していた、その日の朝は寝坊して寮の他の塾生に置いてけぼりを食らったのだ。
「シゴキ喰らうのはゴメンだぜ! 早くしねえとおお!!」
その時凄まじい音が道路から響いた、振り返れば巨大なトレーラーが横転事故を起こして数台の車を巻き込んで倒れていた。
「義を見てせざるは勇なき也、か…こりゃシゴキ確実だぜ」
男塾で自分がシゴキを受けるより目の前の人間を助けることを選ぶ、富樫源次とはそういう男である、富樫はすぐさま事故を起こした車に駆け寄って横転したトレーラーや巻き込まれた車の中から怪我人を運び出した。

富樫は事故現場で救助活動を大方終えようとしていたそんな時富樫に小さな声が響く。
「にゃ~」
それは道路を渡ろうとしていた小さな小猫であった。
「おいチビ危ねえぞ!」
トレーラーの横を通ろうとしていた小猫に富樫が駆け寄る、その時トレーラーの中に詰まれていた特殊な装置が起動し周囲を爆炎で包んだ。

そうして富樫源次はこの世界から消えた、だが彼は死んではいなかった、その時起動した装置とは“他次元空間波長干渉装置試作七型”という名の機械…別異層の空間に干渉し物体を転送する装置だった。
根性の塊とまで言われた男が今、ある魔法世界に送られた。

「なんじゃあこれは~! 空に出来た道の上をローラーブレードのような物を付けた女の子が走って丸っこい機械と戦ってやがる~!」
長年男塾の戦いで解説(驚いて自然に敵の動きを実況)をしてきた富樫は今日もまた一人で叫びを上げていた。
富樫が見慣れぬ場所で見たのは空を駆ける魔力で作られた青い道の上をローラーブレードで走りながら丸い形の機械と戦うハチマキを付けた少女だった。
「ちょっとそこの民間人の方! 危ないですから早く逃げてください」
その時両手に拳銃らしき物を持ったオレンジの髪の少女が富樫に声をかけてきた。
(なんじゃあこいつは? なんで銃なんぞ持っとるんじゃ、っていうか俺よか年下だろうが)
先ほどとは明らかに違う場所に突然送られて富樫は少し驚いたが、男塾で狂った教育や戦いを経験した彼は案外落ち着いていた。
「危ねえ!!」
そう言うと富樫は少女の側方に飛び込んだ、彼女を狙った戦闘機械ガジェットドローンがその金属製アームで攻撃を仕掛けて来たのだ。
「ぐおおおおお!!」
身を挺して少女を守り富樫は身体中を切り裂かれて夥しい出血をする、一般人から見れば立ってもいられない負傷だが数々の死闘を耐え抜いた富樫を倒すには遠いものだった。
「この程度の傷がなんぼのもんじゃあ!! 男塾を舐めんじゃねええええ!!」
身体の傷など物ともせず富樫は懐から愛用の短刀(長ドス)を取り出してガジェットに切りかかり敵のボディにドスを突き立てて単純な馬鹿力で引き裂いた。
日々男塾で苛烈なシゴキや戦いを経験してきたその膂力は常人を遥に超えるものであった、装甲を切り裂かれたガジェットは小規模の爆発を起こして四散、富樫は何故か頭の学帽を両手で守っていた。

「ちょっ! 大丈夫ですか? 凄い血が出てますよ!」
「な~に、こんなもん大した事ねえよ」
富樫の常識離れした戦い方に唖然としていた少女が声をかけてきたが富樫は軽く返した、彼にとってはこの程度の傷は日常茶飯事である。
「ティアー! 大丈夫!?」
先ほど空に出来た道をローラーブレードで駆けていた少女が二人の下にやって来た。
「うん…この人に助けてもらったんだけど」
「うわっ! 凄い怪我だ、早くシャマル先生に連絡を!」
「だから大丈夫だってよ…」
富樫が出会ったのは時空管理局機動六課の若きフォワード、ティアナ・ランスターとスバル・ナカジマの二人だった、富樫は結局二人に連れられて治療を受ける事になるそして彼が別の世界から飛ばされたという事が明らかになる。

「え~っと。じゃあ富樫さんは日本の事故現場から突然こっちに飛ばされたってことですか?」
「おうよ。紛れも無い日本男児、男塾塾生だぜ」
富樫は機動六課で部隊長のはやて達に事情を説明していた、時空遭難者は決して珍しい訳ではないそれよりも六課の隊員は彼の生命力に驚いていた、ガジェットの攻撃を受けてピンピンしているのだから当たり前の話だった。
「確かに日本で特殊な次元干渉可能な装置が運送中にトラブルを起こしたってニュースになってるみたいだよ」
金髪の執務官フェイト・T・ハラオウンが説明を入れる、しかし富樫はそれよりも未知の世界の魔法というものに驚いていた。
「しっかし魔法の世界か~。こりゃ良い土産話が出来たぜ」
「いや…あんまり話さんで欲しいんやけど」
部隊長である八神はやてはバツが悪そうに苦笑する、そんな時おもむろにスバルが富樫に尋ねる。
「そう言えば富樫さんは何で事故現場から逃げなかったんですか?」
「ああ。こいつがな」
「にゃ~」
そう言うと富樫は頭の学帽を取りその下に隠していた小猫を取り出した。
「道路を渡ろうとしてたんでな。引っつかみに行く途中で飛ばされたって訳よ」
「わ~カワイイ。ねえカワイイよティア♪ 富樫さんって見かけによらず優しいんですね」
「こらっ! ばかスバル! 失礼なこと言ってんじゃないわよ…すいません富樫さん」
「な~に気にすんな」
富樫は特に気にするでもなく返した……まあ実際は結構気にしていたんだが。
「そう言えば富樫さんの学校の男塾って大学なんですか? どこにあるんですか?」
はやてがふと感じた疑問を口にした、そして次の瞬間返ってきた富樫の答えに場の空気が凍りつく。
「男塾は大学じゃないぜ。まあ高校みたいなもんだな」
「はいっ?」
はやてが面白い位にマヌケな顔と声で聞き返した。
「それじゃあ…富樫さんの年って…」
「花も恥らう17歳だぜ(推定)!」
その言葉に場は混乱に包まれる。
「うそおおおお!」
「なんやってえええ! 私らより年下なんか…」
「信じられない…」
そんな風に騒ぐ六課メンバーの下に再びガジェットの出現が知らされ出動する一同、そして富樫は六課の一同の乗り込んだヘリに勝手に忍び込んだのだった。

「なんで着いてきたんですか!?」
ガジェットとの戦闘で混乱する現場でティアナは声を荒げたが、そんな言葉に引く男塾塾生ではない。
「じゃかあしゃあ! この富樫源次! 女子供に危ねえ橋渡らせて黙ってられる程にフヌケじゃねえ!!」
富樫はドスを振り回し力任せのケンカ殺法でガジェットを破壊していく(基本的にこの男に常人の理屈は通らない、物理的にも精神的にも)。

そして突如現れた赤い髪の戦闘機人、ナンバーズ9番ノーヴェが襲いかかるも富樫は一切反撃せず全身を血だらけにする。
「てめえなんで反撃しねえんだよ!?」
「うるせえ!! 男、富樫源次! 腐っても女に手を上げる根性無しじゃねえ!!」

ノーヴェを逃がすもなんとか発見したレリックを死守した六課だが、富樫はまたも凄まじい怪我で運ばれる。
「まったくこんな傷で何してるんですか!?」
医療班のシャマルはあまりの傷に驚き思わず大声を張り上げる。
「死んでも悔いはねえ…男塾万歳…」
「富樫さん!? 富樫さあああん!」
いつもの今わの際のセリフを言って富樫は死んだ(もちろん5分後にはゴキブリのような生命力で蘇生したが)。

続く(嘘)。



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最終更新:2008年10月13日 21:11