12月31日。時計は午後11時を回った。
俺達は年を跨いで高速道路に居座らなければならないようだ。
きっかけは彼女の一言だった。

「ねえ、初日の出を見に行かない?」

新潟で見るのが一番だったが、そんなにうまい話は無いようだ。
天気予報によると、今夜から明日にかけては、日本海側では大雪なんだそうだ。

となると、どうしても太平洋側へ行かなければならない。
新幹線という手も有るが、もう東京行きは無い。それに往復3万円近い。
ただし車でなら、東京付近までは新幹線のおよそ半額で何とかなると昔高速バスのハンドルを握っていた父に教わった。
俺は予報から推測して、明日の朝天候の良さそうな九十九里浜付近で見ることにした。
長岡インターから潮来インターまで、距離にしておよそ360km。時間は平常で5時間少し。
行けると、踏んだ。

しかし、そんなに甘くは無かった。
今は、湯沢インター手前で足止めを喰らっている。
除雪が間に合わないらしい。もう車のキーを捻って、4時間。
通常ならば埼玉か、東京手前に居る時間帯なんだが。

「…まさか、湯沢で足止めくらうとはね」

予想外だった。ご免なさいとしか言い様がない。
ただ、もう少し予想出来ていればなあと思った。

「今更悔やんでもしょうがないよ。言い出したのは私だし。…ごめん」

謝るべきなのは俺だ。それよりも、この状況だと非常に厳しい。
車中泊をする羽目になりそうだ。

「それは気にしないで。こんな事もあろうかと毛布、持ってきたから」

……。要領の良い、頭の回る人間だとつくづく思う。ただ、この場合……

「うん。二人で仲良く入りましょ?」

えっ?いや、その。あのさ、うん。車中泊って結構キツいよ?湯沢で降りて、ホテルを探そう?ね?

「はぁ?それじゃ間に合わないじゃない。行ける所まで行かない?…交代で運転しても良いけど」

流石に、冬場にグランビアを運転するのは厳しいと思う。
そもそも免許とって、まだ若葉マークが取れていないだろ?最初の冬に、こんな重い車なんて荷が重過ぎる。

「うーん、そう言うのならしょうがない。でも、何処かで車中泊をしなければいけないのは事実でしょ?」

確かに、それはそうだ。寝ずに運転して、挙句居眠り運転で高速で横転事故なんて起こした日には仲良く永眠しかねない。
かと言って寝すぎて起きたら元旦午前7時と言うのもマヌケだ。

「そうね…やっぱり、二人で寝る事になるわ!」

やっぱり、そうなるか…ベットキット買っておけば良かったなぁ…。ってか、このままだとカーセックス…?

「ええ、それでも良いわ。と言うより、寧ろそれ目的というか」

マジっすか…俺、車余り汚したくないんだが……この際しょうがないか。
…何と言うか。そう言えば、年越し蕎麦食べてないな。この際うどんでも良いから食べたい。

「それは気にしないで。こんなことも有ろうかときつねうどんと電気ポット持ってきたから」

マジですか。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2010年01月05日 09:26