233 :名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 19:16:02 ID:OHPAiVEa
――見た目からして、15~17歳位だろうか。私が彼女を拾ったのは、北陸道の親不知インター手前だった。
私は、新潟の上越市から名古屋へ10tトラックで行く途中だ。
途中で眠気覚ましに缶コーヒーを買いに自販機に横付けした所、彼女が近寄ってきた。

「…このトラックの運転手さんですよね?」
「は?…ええ、そうですが」

「私を名古屋まで乗せていってください」

ヒッチハイカー。私も仕事柄、たまに遭遇する事はある。
だが、仮にも仕事場であり、同乗者の存在は想定されて居ない。
なのでもし死傷事故が発生したら、私の責任になる。
私は悩んだ。もし何かあったら懲戒免職も有りえる。

「…乗せていってもいいが、何があっても責任は持てない。良いね?」
「覚悟の上です。凍死よりはよっぽどマシですから、ね」
「そうだろうな。じゃあ、助手席側に回ってくれ。はしごみたいになってるから気をつけるんだよ」
「ありがとうございます!」

3段のステップを踏み、キャブが左右に揺れる。

「コーラで良いか?」
「良いんですか?…ありがとうございます。」
「ああ。久々の来客だからな。ちょっと揺れるけど我慢してくれ。じゃ、出発するよ」

パーキングブレーキを解除。ニュートラルから2速へ。
総重量25トン、排気量13000ccの巨体が静かに動き出した。



深夜2時25分。現在地は東海北陸道白川村インター付近。そろそろ飛騨トンネルだ。
流石にこの時間になると、普通車は余り走っていない。
居るのはバスかトラックのみといった具合。お陰で走りやすい。
世界遺産や聖地巡礼にも目もくれず、ひたすら走る。

「寝れないのか?」
「はい。そう言えば、お互い自己紹介がまだでしたね。私は如月なつき、です」
「なつきか…いい名前だ。俺は岩崎薫って言うんだ。よろしくな」
「はいっ!」

飛騨トンネルを抜けて、直ぐの飛騨河合パーキングエリアへと滑り込む。
このパーキングエリアは加速車線が首都高並みに短く、加速が大変だ。

ニュートラルへシフトレバーを動かし、パーキングブレーキを作動。
エアーの抜ける音と、エンジン停止に伴う振動と音がキャブを揺らす。
ドアを開け、ステップを駆け下りる。もう一人は慣れていない様で、少し時間が掛かった。

「ところで、さっきから時々ケータイで何か見てるみたいだけど、何か面白いニュースとか有る?」
「はい。…まぁ、詰まらない事ですけどね。保守、と」
「えっ?」
「なんでも無いですよ。そう言えば、知ってます?……」

二人旅はまだ道半ばだ。

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最終更新:2009年10月26日 12:42