ほ・っ・と・み・け・ら・ん・じ・ぇ・ろ

68 :ほっとみけらんじぇろ1/2:2009/04/11(土) 00:19:07 ID:X58kdFl+

ぺたりぺたりと、暖かい腹筋を手で触る。
汗がぬるりと手にくっつき、自然と顔が引きつった。
「どう、俺の腹筋?」
「うん、いい感じでダビデってるよ」
適当に答え、手を更に下に。あらら、局部とこんにちは。
チョン、とつつくとびくりと体全体が動いた。
「……いい加減、恥ずかしいんだけど」
そりゃ全裸で女の子と二人きり、しかも私だけ服着用ってのは恥ずかしいと思うわ。
もじもじとしてる男の子は可愛いって聞くけど、個人的にはあんまりピンとこない。
ま、そんなのは置いといて。
「今から描くから、そのまま動かないでね」
後ろに下がり距離をとっていすに腰掛け、スケッチブックを手に。
美術のことはわからないけど、まぁ見たままに描けばいいんでしょ、多分。
……かりかり
……しゃっしゃっ……しゃっしゃっシャキーン!
「いや、普通のポーズで描いてよ」
お叱りを受けた。てへっ。

私の手が動いてる間に、少し身の回りの話でもしましょーか。
私達二人は何の変哲も無い高校の美少女、もとい美術部。
男女二人だけで成り立つこの部活は凄く退屈。
顧問の先生も行事がない限り来ないし、二人できゃっきゃうふふ絵の具でフェイスペイントして遊ぶ毎日。
食らえ都市迷彩! 食らえデスメタル風! 楽しいっちゃ楽しいけど。
哀しいことに恋愛感情はないのよねぇ。私フラグは立ちそうもない。
ああ恋したいなぁ。きっかけがあれば立つのかねフラグ。
気付いてないだけ、かもしれなくないかもしれ……あれ、どっちだ。
まぁ、彼フラグは立って、いや起ってますけどね。見られると興奮する性質なのかな、多分。
将来が不安っちゃー不安でごぜーます。

今の状況を一言で言っちゃうと、清すぎる高校生男女のお付き合いを暇つぶしに一歩進めるべく、裸婦ではなく裸夫のラフ画を描いてみようかと……
思っては見たんだけど、うん、実は私絵が描けないの。てへっ。
てへっ、っていいよね。使いやすいぶりっ子ワード。
美術部に入った理由も「誰も部員がいません」に惹かれただけで。
「ひっとりぼっちー!」って入ってみたは良いものの、同じ志望理由の阿呆がもう一人いましたとさ。
まぁ、あの男は読書とかしたかったみたいだけどね。
閑話休題。
首って頭にどう繋がってるの?
なんかピカソってるな、私の絵。
でもおちんちんは会心の出来。
こう、びきびきしてらっしゃる。
エロ漫画家になれるんじゃないかしら。なんてね。
「あーきーたー」
私は目の前の裸男(二次元)が書かれた紙に向かって突っ伏す。
「え、終わった?」
奥に居るゼンラマンは私に話しかけてくる。うっせーな。飽きたっつってんだろ。
「チンコしか描けてねー」
今度はいすの背もたれに体重を預け、上を見上げる。
「……」
あら、反応無し。顔をうかがってみる。
意外ときゃわいいかも、と思ってしまった。チンコ言ったのに反応して赤面してる。
「終わったなら服着るよ」
彼はスルーするようにそう言い、パンツを手に取った。

69 :ほっとみけらんじぇろ2/2:2009/04/11(土) 00:19:41 ID:X58kdFl+

むくりと。
私の頭の中から、一つの欲望が浮き出た。
二人きりの美術室。
なんとなく、ええいやっちゃえ、って気分になっただけ。
むらっと、来たって言うそれだけ。
なんとなく、この刺激的な空間を終わらせたくないな、って思っただけ。
「待って」
私はパンツ穿こうとしている男を制止させ、服を脱ぎ始める。
まずはブラウス。ぷつりぷつりとボタンをはずす。
ブラジャーを脱ぐ。
名誉的にもぷるるん、という擬音は表現させてくださいお願いします。
次はスカート。
「ちょっ、何を」
男は私をガン見しながら、分かりきった問いを投げかける。
無視して、スカートとパンツを同時に取り去った。

意外と抵抗感はなかった。
私フラグ、立っちゃったのかな? と一瞬頭をよぎる。
いやいやただエロい気分になっただけ、だと思う、いやどうだろ。

「あんたの番だよ、ダビデ男?」

堂々と仁王立ちして、宣言した。
元々裸婦画は描かせない方針だったけど、私の独断で方向転換。
退屈しのぎには、十分すぎるほど刺激的じゃない。
今から何を描くか、何を見せるか何をするかって言ったら、ねぇ?

172 :ほっとみけらんじぇろ(1/2):2009/08/06(木) 14:34:16 ID:jZcrmKGk

「坂井くん、ミケランジェロの絵画展に行かない?」
放課後の美術室。
橘さんの突然のお誘いに僕は目を丸くした。
話の繋がりが理解できなくて僕は「えっ?」と、橘さんに聞き返す。
「だから~、『ミケランジェロの絵画展に行かない?』って」
橘さんは少しムッとした表情でもう一度尋ねてきた。
「行きたい、行きたいよ? でも、なんで?」
ミケランジェロといえば、僕の大好きな芸術家の一人だ。
その絵画展に僕が行きたくないわけがなかった。
「ちょっと、コネで無料チケットが二枚手に入ったからね~」
ポケットからチケットを取り出し、橘さんは自慢気にニンマリと笑う。
橘さんのお父さんがどこぞのお偉いさんだという噂を聞いたことがある。
きっと、そのルートでチケットが手に入ったんだろう。
「ぜひとも一緒に行かせてください」
橘さんがどうして僕を誘ったのかはさておき、
絶対の権力者を前に平に頭を下げてお願いをしていた。

当日の天気予報は運の悪いことに雨だった。
ドンヨリ曇った空模様、僕は少し大きめの傘を持って家を出る。
もしかしたら、橘さんが傘を忘れたりするかもしれない。
まあ、万に一つもそんなことはないだろうけど。

待ち合わせ場所に現れた橘さんに僕は一瞬目を奪われた。
所々に装飾のついた白いワンピース。
普段の橘さんからすれば信じられない話だけど。
それは如何にもお嬢様といった風情で、それに比べて僕はいつも通りの普段着だ。
どう見ても橘さんと釣りあうような服装ではない。
もっときちんとした服を着て来ればよかったかなと思ったが。
よくよく考えれば僕にはそういった服がなかった。

それはともかく、僕と橘さんが電車を降りる頃には小雨が降り出していた。
橘さんはリュックから折り畳みの女の子らしいピンクの柄の傘を取り出す。
一瞬にして僕の淡い希望は打ち砕かれてしまったわけだが。
僕達は何気ない雑談を交えながら美術館へと向かう。
美術館につく頃には雨は土砂降りに変わっていた。

幸いにも、ほとんど濡れることなく僕達は美術館に滑り込む。
天候のせいもあるんだろう、美術館は驚くほど人気がなかった。
水気を含んだ靴底がツルツルの床の上でキュッ、キュッと音を奏でる。
そんな、小気味の良い靴音が、隣にいる橘さんを妙に意識させる。

173 :ほっとみけらんじぇろ(2/2):2009/08/06(木) 14:35:40 ID:jZcrmKGk

ミケランジェロの芸術的な絵画を前にした橘さんは
なぜだかわからないけど、眩しいぐらいに白く映っていた。
絵画を見に来たはずなのに、僕の頭は橘さんのことで一杯で。
何度、橘さんの手を握り締めようと思ったことか。
結局の所、臆病でへたれの僕にはそうするだけの勇気はなく。
何事もなく平穏に、僕達の絵画展巡りは終了してしまったのだった。

外は相変わらずの雨、憂鬱な気分で僕は傘を開く。
ちらりと橘さんを見ると、自分の傘を見つめて何か考えているみたいだった。
そんな僕の視線に橘さんは気がつくと、にっこりと笑った。
「傘、壊れちゃったみたい、坂井くんの傘に入れてもらっていいかな?」
あんまり困った様子も見せずに橘さんは手を合わせる。
「あ、うん」
そう答える以外の選択肢がどこにあるだろう。

「じゃ、お邪魔するね」
橘さんは傘の下に入り込むと、僕の腕に自らの腕を絡めてくる。
「た、橘さん!?」
腕に感じる柔らかな温かさに思わず声が上擦ってしまった。
「だって、こうしないと私が濡れちゃうじゃない?」
狼狽する僕を尻目に、橘さんは事も無げにくすりと笑う。
「それは、そうだけど……」
僕としては腕に押し当てられた橘さんの感触が気になって仕方がない。
「それじゃ、出発進行ー」
絡めた腕を引っ張って、橘さんは陽気に雨の振る外の世界へと歩み始める。
その強引さに釣られるように僕も慌てて歩を合わせる。

時折、横目で橘さんの様子を窺うようにチラリと盗み見る。
気恥ずかしくて橘さんに声も掛けられない。
こういう時に真っ先に口火を切る橘さんも、俯いたままで一言も喋らない。
もしかすると、橘さんも僕と似たような気持ちなんだろうか?

針の筵の上にいるような気分だけど、決して悪い気分じゃなかった。

もう少し歩けば駅に着く。
あとちょっとでこの状態からは解放される。
だけど、今この瞬間がずっと続けばいい、とも思ってしまう。

雨で外界と隔たれた傘の中は、紛れもなく二人だけの世界だった。

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最終更新:2009年04月17日 21:57