保  科  先  生  ・・・と二人っきりですね  わかります

35 :名無しさん@ピンキー:2009/03/20(金) 17:12:43 ID:WZIjCmSE

「さて… どうしてこんなことをしたのか、教えてくれるかな?」
影が濃く遠く伸びるころ、静まりかえった学校の教室で先生と生徒が二人、向かい合っていた。

「ほ、保科先生…」
制服を着た女性が、向かいに立つ男性に話す… が、名前を呼んだところでどもってしまう。
「ボクはキミがこんなことをするような人じゃないと思っていた。だからこそ、何か理由があるのだろうと聞いているんだ」
「……」
女生徒は黙ってしまう。
保科… そう呼ばれた男性は困り果てていた。
とお目では判りづらいが、近寄れば判る。俗に言うずぶ濡れ状態だ。
手持ちのハンカチで拭った程度で、ほどよい長さの髪からは時折しずくが垂れる。

「キミは成績が優秀なうえに、人に迷惑を掛けるような子では無いと信じていたが…」
女生徒はうつむいてしまった。
「黙ったままなら一度、家族に連絡をしなければならないな」
「そ! それだけはやめてくださいっ!!」
女生徒は顔を見上げて叫ぶ。
「じゃあ、どういう理由があってのことなのか、教えてくれ。じゃないと、このままでは私も風邪を引いてしまう」
すると、女生徒はポツリ、ポツリと話し出した。

「わ、私、先生に水を掛けないと… セ、セッキョウはめられるんです…」
「説教?」
「いえ… セッキョウです…」
「何? なんだ その ”セッキョウ”とやらは?」
「数人の友人たちにトイレで囲まれて… お腹とかを蹴られたりするんです…」
「それは… 本当の友人なの…か…?」
保科は疑問に思ったことをつい口にだしてしまった。
「友人です!! 友人なんです!!! 彼女たちと遊ばないと… 私ひとりになっちゃうから…」
(いわゆる「いじめ」か…)
「それに…」
「それに?」
「他の子だと… この前、雪ちゃんが… いえ、三枝さんが校内を裸で走り回ったことがあったじゃないですか」
「ああ、あれは職員会議で大問題になったな。他の保護者からは本人を停学にしろとか、本人は自主的にやったことと言ったりな」
「あれも、セッキョウのいっかんなんです」
「あれがか?!」
「はい…」
保科は女生徒の肩が震えていることに気がついた。
「わ、私も… 彼女たちに指示されたとおりにしないと、セッキョウはめられて… 今度は男子生徒数人の前で
 脱がされることになってたんです…」
(ひどい… どんだけなんだ…)
保科は女生徒の肩に手を置いて、力強く言う。
「いいか? キミはそんなことに屈していてはだめだ。彼女らは遊びのつもりでも、確実に悪いことだし、
 逆らえなかったキミも悪い。 だが、キミは現在起こっていることをボクに話してくれた。
 先生だからとか、そういうのは抜きにして、こういう風習はなおして行かなきゃならない。わかるな?」
こくりとうなずく女生徒。
「今日のことはなかったことにしておく。いいか? 今回だけだからな。 次からは、彼女達の言うことは拒否しなさい
 ダメなら、何をするのか逐次ボクに連絡しなさい。連絡方法は別に考えるとしてもだ」
今日のことを不問に処されることに女生徒は驚き、先生を震える瞳で見つめる。
「だから、キミがこんなことから卒業するまで、ボクはキミの力になろう。出来うる限りのな。だから、頑張って」
うなずく女生徒。
「じゃあ、すでに下校時刻は過ぎているから、キミは帰りなさい。 もし、彼女達が待っているなら、成功したとでも言っておけ
 ボクのことは気にするな。いいか? キミはこれから変わるんだ。ガンバレ!」


すっかり暗くなった校内。保科と女生徒は、それで別れた。
これから先、保科たちとセッキョウグループの戦いが始まるが… それはまたのお話…

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年04月17日 21:55