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本、頑丈のお届けも
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本、頑丈のお届けも、『珍…(ry
:2009/01/13(火) 20:03:39 ID:ygmqyGgi
図書委員というのは不幸な職種である。
クラスで一、二を争う不人気な役職ではないだろうか。
まず、時間拘束が大きいというのが理由の一つ。
下校時間まで図書室の管理をしなければならないのだ。
うちの学校には本を借りに来る奇特な生徒はほとんどいない。
おかげで無尽蔵に暇な時間が発生するのである。
周りにいくら本があっても本嫌いの俺には何の暇潰しにもならない。
本好きのやつなら天国なのだろうが、俺にとっては地獄もいいところだ。
時間を無駄に食い潰す、実に馬鹿馬鹿しい仕事である。
ローテーションの関係で週に一度の任務であることが唯一の救いか。
いつも通り退屈な時間を過ごしていた俺は、いつのまにか心地よい眠りに誘われていたのだった。
ゴン! そんな擬音がぴったりな、鈍い衝撃が俺の頭を襲った。
「いって~!?」
ズキズキと痛む頭を押さえ、俺は辺りを見回す。
眼鏡を掛けた、おさげ女の子が俺の目の前に立っていた。
重く分厚そうな本を携えて、どうやら凶器はこの本らしい。
珍品、名品、大百科? 本で敵を倒すゲームとかあるけど、まじで痛い。
女の子は無言のまま、じっと俺を見つめている。
「……何?」
そんな冷たい目で睨まれると、少し怖い。
ちらりと時計を見ると、ちょうど下校時間ピッタリだった。
もしかすると、俺が起きるのを待っていてくれたんだろうか?
「本、返しにきた」
彼女は小さな声でぼそぼそと呟いた。
本好きにありがちな内気な子なのだろうか、よくよく見てみれば少し可愛い。
「じゃ、名前書いて元あった場所にしまっといてよ」
俺は頭のこともあって、事務的な口調で彼女にそう伝える。
トントンと彼女は名簿を指差した、名前はもう書いたといわんばかりに。
察するに、名前はとっくに記入済みのようだ。
だったら、後は本をしまうだけだから、彼女にもできるはずだが。
彼女は無言で、ぐいぐいと俺の制服の裾を引っ張る。
ついてこいというんだろうか。
奥の本棚まで強引に俺を引っ張ると、彼女は上の方を指差した。
丁度、本一冊分の空きがある。
彼女は本をしまおうと背伸びをしてみせるが、ギリギリ手が届かない。
どうやら、彼女一人では本がしまえなかったようだ。
「貸して」
俺は彼女の手から本をひったくると、隙間に本を押し込んだ。
どうだ、と言わんばかりに彼女を振り返る。
彼女は、おーっと僅かに感嘆の表情を浮かたが、すぐに我に返って。
「二巻」
ぼそっと小さな声で呟いた。
一瞬、意味がわからなかったが本棚を見ればすぐにわかった。
先程入れた『珍品、名品、大百科』の横に、二巻があった。
おいおい、これシリーズ物かよ。 少々、呆れながら二巻を取り出し彼女に渡す。
彼女はずっしりとした本を受け取ると、両手で抱きかかえるようにして。
何事かを思いついた素振りで、チョイチョイと人差し指を俺を招くように動かした。
ちょっと耳を貸せと言ったところだろうか。
俺が頭を下げると、彼女はぐいっとネクタイを引っ張って。
「ありがと」
そう俺の耳をくすぐるように囁いたのであった。
彼女の突飛な行動に思わず顔が熱くなってしまった。
そんな俺の様子を見て彼女はにんまりと笑う。
彼女の初めて見せた笑顔、それが妙に可愛く思えて胸がドキリとした。
狼狽する俺を尻目に、彼女はバイバイと軽く手を振って去っていったのだった。
俺は本棚から、『珍品、名品、大百科』を手に取ってぱらりとめくってみる。
何が面白いのかわからないが、彼女には惹きつけられる物があるんだろう。
その日から図書委員の仕事が少しだけ楽しみになった。 理由はまあ、言うまでもない。
完
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最終更新:2009年02月24日 11:30