919 :本とUNO 何がしたくなったハヅキ?:2009/01/08(木) 16:28:07 ID:MubFh+An

「というわけで、ハヅキちゃん、お留守番よろしくね。」
とか言いつつ、買い物に出かけたおかんと隣の家のおばさん。
どういうわけか、お隣の葉月ちゃんと一緒にお留守番ということに。
可愛い女の子が一人だと危ないから、という理由らしい。
やりたい盛りの若者と一緒の方がよほど危ないだろ、と断ったんだが。
はいはい、わかったわかった、の一言で押し通されてしまった。
一応は信用されてはいるらしい、悲しい限りである。
ちなみにハヅキというのは俺の名前である、ハジキとか呼ばれたりもする。
お隣の女の子の名前が葉月ちゃんであるのもすごい偶然だ。
絶対に俺の名前を参考にしただろ、おばさん。
「ハジキ兄ちゃん、遊ぼー?」
UNOを片手に葉月ちゃんが、俺の服の裾を引っ張る。
どうにも暇を玩んでいるらしい、本を読んでいた俺はちらりと葉月ちゃんを見た。
元気よさそうに跳ねるポニーテール、セーター越しにでもよくわかる膨んだ胸。
本当に小学生なのかと疑ってしまうが、小さい頃から見ているので疑う余地はない。
「少しだけな?」
こんな可愛い子に求められるような目で見られるのはさすがに辛い。
本を開いたまま勉強机の上に置いて、向かい合うようにして絨毯の上に座る。
葉月ちゃんが正座なんかするもんだから、デニムのスカートの中が見えてしまいそうだ。
肝心の部分は真っ暗で見えそうなのに見えない、不思議!
「じゃ、始めるね。」
にこにこと可愛い笑顔でカードを配る葉月ちゃん。
葉月ちゃんがカードを配ろうと屈む度に、襟首からセーターの中が(以下略)
「おーけー。」
葉月ちゃんが配り終わったカードを拾う、リバース二枚、あとは数字か。
色もそれぞれ万遍なく揃ってて、いい感じだ。
ちらりと葉月ちゃんの表情を窺がう。
カードを見た瞬間、葉月ちゃんがにんまりと嬉しそうに笑った。
なかなか良さそうな手札がきているらしい。
「じゃ、いくよー?」
葉月ちゃんが山札をぴらりとめくる。
数字の7か、なんとも縁起のいい数字だな、そう思ったのが俺の最期だった。
「スキップ、スキップ、スキップ、スキップ、らんらんらーん♪」
ばしばしと容赦なくカードが叩きつけられていく。
「・・・!?」
ま、まあ、そういうこともあるだろう、確率的にはありえないことでもない。
なんとか頭の中で納得させようとする。
「ハジキ兄ちゃん、ごめんねー。」
葉月ちゃんが可愛らしく、ぺろりと舌を出した。
くるりとカードを回転させて、見せたカードはドローツー。
悪魔のカードとも恐れられているカードの一つだ。
「に、二枚ドローな。」
俺は冷静さを装って山札からカードを二枚引く、内心はボロボロだ。
「ほんっとに、ごめんね、UNO!」
葉月ちゃんが両手を合わせて謝る、嫌な予感がした。
場に出されたのは、またしても悪魔のカード、ドローツー。
「ど、ドローすればいいんだろ、ドロー。」
山札から二枚引く。
「あっがりー。」
ぽてっと、最後のカードが場に出される。
「なにぃーーーー!?」
最初から、勝てる勝負ではなかったということか。
俺は手の中の11枚のカードをプルプルと震わせていた。
にわかに下が騒がしくなってきた、おかん達が帰ってきたらしい。
「ハジキ兄ちゃん、今日はありがとね。」
お礼の言葉と共に俯いていた俺の頬に、ちゅっと何かが触れる。
顔を上げた俺の目の前で、葉月ちゃんが恥ずかしそうに頬を染めて微笑んでいた。

おわり

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最終更新:2009年02月25日 16:19