676 :Threads of Destiny:2008/09/27(土) 03:39:41 ID:sC2Z3ag4
「なぁ」
「?」
「空が男と付き合ってる」
「空が?」
「空が」


男性は花瓶に新しい花を挿す。

「良かったじゃない」
「いや……その付き合ってるのが、青下さん家の……」
「あぁ……良かったじゃない」

男性の顔は沈んでいるのに対し、
女性は笑顔だ。

「良かったのか?」
「良い事よ。ようやくあの娘も立ち直れたって事よ」
「……そうか。長かったな……」
「長かったわね……」

二人とも苦い顔を浮かべる。
あの事故のことを思い出しているのだろう。

「でも、不安だ」
「何が?」

「彼は、空を背負えるのか……」
「背負えないわね」
「ちょ、おま」
「だって彼には腕が一本足りない」
「……なら」
「でも、違うでしょ?」

677 :Threads of Destiny:2008/09/27(土) 03:40:27 ID:sC2Z3ag4


男性は困惑している。
女性の言っていることの意図がつかめていないようだ。

「彼はあの娘と共に歩んでいくわ、なら背負う必要なんてないじゃない。
 あの娘が転んだときに右手を差し出せれば充分でしょ」
「でも」
「あなた……体が動かない私を重荷に感じたことはある?」
「あるわけないだろ。いつも支えてもらってるんだから」


子供のように不機嫌な顔をした男性。
それを宥め、諭すような女性。

「あの子達も同じよ。きっと支えあって生きていくわ。
 それに、雨降って地固まるって言うじゃない」
「……長い、雨だったな」
「きっと岩のように固いわよ」

「……なぁ」
「?」
「何故、そこまで自信満々に言い切れるんだ?」
「そんなの、歴史を覚えるより簡単よ」
「?」


「だって、私たちの子よ? 更に言えば、あの子が好きになった子じゃない。
 自信満々に言い切れないほうがおかしいわ」

満面の笑みになる女性。
一瞬、呆然とした後、男性は苦笑した。



「そうだよな……俺達の子だもんな」
「うん」
「うし、今度ここに呼ぶか」
「え?」
「お前に描いてもらわないとな。
 ついでにスターフルーツに願掛けでもするか」
「……そうね」




ゆったりと時が流れていた。
どこか歪な2つの組を、そっと祝福するかのように。

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最終更新:2008年09月28日 17:24