彫刻に込められた意味 木彫刻~念佛宗(念仏宗)無量寿寺 佛教之王堂


彫刻に込められた意味〜念佛宗(念仏宗)無量寿寺『佛教之王堂』(製作中)


「麒麟(きりん)・菊」本堂・観音堂 渡り廊下 欄間彫刻
延命長寿の瑞祥花(ずいしょうか)である菊が大輪を咲かせる中、平和の象徴(しょうちょう)である麒麟が軽やかに駆けています。
麒麟は「麒」を牡(おす)、「麟」を牝(めす)とする架空の動物で、顔は龍に似て、また馬に似た蹄をもち、頭に角があります。千年を生き、性格は非常に優しく穏やかで、決して生きた虫を踏まず、生きた草を折らないとされます。仏教もまたあらゆる生命の大切さを説きますが、その教えに素直に耳を傾けるべきことが「菊(聞く)」に表されています。

「飛天・椿」本堂 内部 欄間彫刻
その美しさゆえ万葉集に歌われ、茶道でも「茶花の女王」として重宝される椿が見事に咲き誇る中を、「天界の華」飛天が優雅に音楽を奏でます。

「臘梅(ろうばい)・銀鶏(ぎんけい)」本堂 広縁 欄間彫刻
寒中にあって花を満開に咲かせる臘梅に誘われ、尾が長く華麗な雄と小さな雌の銀鶏が集います。

「南天・鵯(ひよどり)」本堂 広縁 欄間彫刻
「難を転ずる」に通じ、縁起が良いとされる南天に、鵯が木の実を求めて元気に動き回っています。

「蓮・鴛鴦(えんおう)・松竹梅・鶯(うぐいす)・蛙・蝶・壽帯(じゅたい)・鸞(らん)」本堂 宮殿横大彫刻 二基
冬の寒さや雪に耐えて千年の緑を保つ松と竹、百花に先駆けて香る梅を始め
、瑞祥の動植物が、それぞれ活き活きと輝いています。

「猿・松」 山門 脇塀 欄間彫刻
常緑樹である松は、強い生命力や不老長寿を表す縁起のよい木とされています。
その松が見事に生い茂っている中に、猿が集まっています。
語り合う猿、子猿を大事に抱えている母猿など、それぞれが思い思いの行動をとり、その変化にとんだ表情は、見ていても飽きません。
申の方向が鬼門の反対に位置することから、猿には邪気を払う力があるとされ、古来より猿の像はよく祀られています。

「水仙・鴇(とき)」 本堂 広縁 欄間彫刻
水辺に咲く姿が仙人のようであるところから名付けれた水仙が、あたり一面咲き乱れる上を、鴇が優雅に飛んでいます。

「檜(ひのき)・啄木(きつつき)」 本堂 広縁 欄間彫刻
天高くまっすぐに伸び、樹齢二千年にも及ぶ檜の枝に、刹那の時をせわしく刻む啄木が羽を休めます。

「蜜柑(みかん)・トラフズク」観音堂 欄間彫刻
蜜柑がたわわになっているところに、胸の模様が虎柄で、長い耳の様な羽角を持つフクロウ科のトラフズクがとまっています。

「丹頂(たんちょう)・梅」釈迦堂 欄間彫刻
厳しい寒さに耐え、百花に先駆け清楚な花を咲かせ、命を寿ぐ(ことほぐ)梅に、「鶴は千年」と長寿の象徴である瑞鳥(ずいちょう)の鶴が優雅に舞っています。
頭頂(とうちょう)が赤、全身が白、一部に黒の姿の丹頂鶴は、古より人々に愛され、様々な芸術作品に登場します。太陽に向って飛翔する姿からは向上を、優雅で落ち着きのある立ち姿からは知恵を感じさせます。

「獅子・笹」 本堂・釈迦堂 渡り廊下 欄間彫刻
冬も青々とした葉をつけ、旺盛な繁殖力を持ち、発展の象徴である笹が生い茂る中を、「百獣の王」として勇猛豪壮で威厳ある獅子が座しています。

「瓢簞(ひょうたん)・鶏(にわとり)」観音堂 欄間彫刻
「子孫繁栄」の象徴の瓢箪が多くの実を付ける中を、夜明けを告げる勤勉な鶏が家族で集います。

「棕櫚(しゅろ)・戴勝(やつがしら)」本堂 広縁 欄間彫刻
力強く葉を広げる棕櫚に、頭に扇状の冠羽を広げた、姿美しき戴勝(やつがしら)が遊んでいます。

「山吹(やまぶき)・ホトトギス」 本堂広縁 欄間彫刻
春の盛り、観音堂から下る坂道に可憐に咲くのが、山吹です。
ホトトギスは、その近くで情熱的な鳴き声を響かせています。

「華鬘草(けまんそう)・鶉(うずら)」 本堂広縁 欄間彫刻
佛殿装飾の「華鬘」に似た姿形をし、赤や白の花を並んで咲かせるのが、華鬘草です。周りには、鶉たちが楽しそうに戯れています。



皐月(五月)を刻む 獅子と牡丹(ししとぼたん)


「唐獅子・牡丹」 釈迦堂彫刻
獅子は、中国から伝わった想像上の動物で、ライオンを基に、巻き毛に覆われた、幻想的な姿で表されます。
佛は一切の王でありますから、百獣の王である獅子によく例えられ、佛が獅子のほえるごとくに佛法を説くことを獅子吼(ししく)といい、佛が身を奮って
圧倒することを獅子奮迅(ししふんじん)といいます。
牡丹は、花の豪華さから「花王」「百花の王」と称され、富貴(ふうき)と瑞祥(ずいしょう)の象徴として、人々から愛され、尊ばれてきました。
牡丹の花からこぼれ落ちる夜露は、百獣の王 獅子の身を喰らう虫の活動を止めるので、獅子は牡丹の傍で眠るといわれています。
百獣の王である獅子と、百花の王である牡丹は、よい取り合わせとして、古より重宝されています。

「唐獅子・牡丹」 釈迦堂桟唐戸
彫金「牡丹唐草」

「菖蒲(あやめ)・カワセミ」 本堂広縁 欄間彫刻
優雅に咲き誇っている菖蒲の聞を、長い嘴(くちばし)を持つ愛らしいカワセミが、勢いよく飛び回っています。

「「百合・山鵲(さんじゃく)」 本堂広縁 欄間彫刻
ひっそりと気高く咲いている百合の花の中を、長い尾を持つ山鵲が遊んでいます。山鵲は瑞鳥として、様々な場面に登場します。

「枇杷(びわ)・八哥(はっか)」 本堂・釈迦堂渡り廊下 欄間彫刻
初夏に卵形の黄櫨色の実をつける枇杷の木に、八寄がとまっています。八寄は人語を真似るといわれ、古くから親しまれてきました。


〔長月(九月)を刻む〕 孔雀(くじゃく)・芙蓉(ふよう)・菊(きく)


インドの国鳥である孔雀が、満開の芙蓉と菊を背に、堂々とした姿を見せ、今にも鮮やかな羽を広げようとしています。
芙蓉は真夏から秋にかけて、ピンクや白の花を咲かせます。美しい花が朝に咲いて夕暮れに萎む儚さと、長期間にわたり新しい花が次々と咲く力強さを持ち合わせています。
菊は、延命長寿(えんめいちょうじゅ)の瑞祥花(ずいしようか)として古くから愛され、佛教にも縁が深く、皇室の御紋にもなっています。

毒虫や毒蛇を食べるため、邪気を払う鳥として重宝されている孔雀が、美しい花を咲かせている芙蓉と戯れています。


〔霜月(十一月)を刻む〕 紅葉(もみじ)・庭鳥(にわとり)


紅葉が燃えるような華やかさと鮮やかさを披露している中を、庭鳥の家族が、仲睦まじく語り合っています。
古来、日本人は紅葉を愛し、様々な芸術の題材としてきました。百人一首の中でも、紅葉が歌われている和歌は六首もあります。
はるか昔から、世界中で飼育されて来た庭鳥は夜明けを告げる鳥、日輪の出現を知らせる鳥としても尊ばれています。

「柿(かき)・烏(からす)」 本堂広縁 欄間彫刻
実りの秋、大自然の恵みをいっぱいに受けて、甘く熟した柿を、烏がついばもうと、飛来してきました。

「林檎(りんご)・山鵲(さんじゃく)」 観音堂 欄間彫刻
たわわに実る林檎の芳醇な香りに誘われ、山鵲が仲間と群れ集い.枝の間を飛び交います。

「佛手柑(ぶっしゅかん)・文鳥(ぶんちょう)」 本堂・観音堂 渡り廊下 欄間彫刻
佛様の手に似ている実をつけ、古から不老長寿の珍果として重んじられてきた佛手柑に、賢く感情豊かで、可愛らしい文鳥が羽を
休めています。



念佛宗(念仏宗)無量寿寺 経蔵 石彫刻 「月」


月は、直径が地球の四分のーもあり、その重力のお蔭で、潮の満ち引きが起こり、多くの生命が育まれています。
夜空に明るく輝く月は、智慧の象徴でもあり、その光明は愚かな凡夫の無明の閣を破ります。
経蔵の耳石には「日輪」「月輪」が彫刻されています。

「桔梗・飛天」本堂内陣 欄間彫刻
桔梗が、高貴な花を咲かせる中、天人が、音楽を奏でながら優雅に舞っています。

「薄(すすき)・雁(がん)」本堂広縁欄間彫刻
秋風に揺れる薄は、しなやかさと強さを感じさせ、その上を吉報を伝えるとされる雁が飛んでいます。


蓮華
泥の中から美しい花を咲かせる蓮のように、われわれ娑婆で泥泥になった凡夫であっても佛になる事ができると教えている


瑞獣 ずいじゅう

霊獣はこの世の動物たちの長だと考えられていた。
鱗をもつもの、羽をもつもの、毛を持つもの、あるいは、甲殻類(こうかくるい)のように甲羅(こうら)を持つものが、それぞれ三百六十種類あるとされている。
それぞれの長が、応龍(おうりゅう)、鳳凰(ほうおう)、麒麟(きりん)、霊亀(れいき)の四大霊獣とされる。

 りゅう
水の象徴であり、水を司る。水を住処とする。
ウィキペディア 龍

麒麟 きりん
水の象徴であり、水を司る。水を住処とする。
ウィキペディア 麒麟

鳳凰 ほうおう
火の象徴であり、火を司る。羽ある生物の王とされる。
鳳は雄、凰は雌とされる。
ウィキペディア 鳳凰


白沢 はくたく
万物の心を知る霊獣。善政のシンボル。一般の建築彫刻にはあまりみられないが、念佛宗(念仏宗)無量寿寺の伽藍装飾では奥の院唐門、観音堂など目にすることができる霊獣。
顔は人間的で額の中央に縦に眼が付き、首からあごにかけて自く長い毛が伸び、頭には二本の角がある。両腋から炎が出ていて、背中には瘤があり、四本の角、左右に三つずつの目がある。
万物の心を理解し、よく人語を話し、有徳の王者の治世に出現する」ことである。中国 明・清の時代には「麟麟白沢補」と称し、官吏の装束に白沢と麒麟のぬいとりが行われた。「旅行用心集」 文化七年(1810)出版には、白沢の図を懐中すれば、災難や病患を免れ、良い事がおこるとそのその利益が述べられている。流行病のお守りとして流行し、コレラの大流行のときには競って買い求められたそうである。
念佛宗(念仏宗)無量寿寺 奥の院唐門彫刻 写真
念佛宗(念仏宗)無量寿寺 奥の院唐門彫刻 写真
ウィキペディア 白沢

 いき
一角二牙の霊獣。
念佛宗(念仏宗)無量寿寺では唐門の木鼻、南門で半身像が見られる。阿吽形の対になっている。
一角で、頭頂部から前方へ湾曲し、枝分かれしない。二本の牙をもち、衿足の体毛のようにカールする。口は龍に似て、上下のあごは長いが、上唇の先端に鼻孔がある。
口の回りでは、先端がカールしたあごひげをもつが、龍のような口ひげはない。喉から腹にかけては、龍と間様の蛇が見られる。足は蹄ではなく、三本爪である。

天馬 てんま
四足獣で一角。頭部から首にかけてたてがみがあり、腋に翼がある。単蹄。
[念佛宗(念仏宗)無量寿寺の彫刻]
北門の柱の根巻き錺金具に阿吽対の天馬がある。確認出来ているのは北門のみ。
念佛宗(念仏宗)無量寿寺 北門錺金具 写真

獬豸 かいち
裁判が正しく行われているときに姿を毘せる霊獣とされる。
体形は羊に似るが、体表は牛のように短毛。脚は太く偶蹄で、あまり長くない。顔相は獅子に似るが一角で、首の周囲にたてがみ状の毛があり、尾は牛のように細く長く、先端部が一房状になる。もしくは、顔は龍に似て一角、四鼓も龍に似て鋭い爪を上半身は鱗で、腹部は蛇腹、尾は太く先端部が房状になる。
[念佛宗(念仏宗)無量寿寺の彫刻]
確認中
ウィキペディア 獬豸

 しん
裁判が正しく行われているときに姿を毘せる霊獣とされる。
体形は羊に似るが、体表は牛のように短毛。脚は太く偶蹄で、あまり長くない。顔相は獅子に似るが一角で、首の周囲にたてがみ状の毛があり、尾は牛のように細く長く、先端部が一房状になる。もしくは、顔は龍に似て一角、四鼓も龍に似て鋭い爪を上半身は鱗で、腹部は蛇腹、尾は太く先端部が房状になる。
[念佛宗(念仏宗)無量寿寺の彫刻]
確認中
ウィキペディア 獬豸

老亀 ろうき
亀は老いて霊力をもつ「霊亀」となるとされ、治水(ちすい)の才を持つ人間が生まれると姿を現すとされている。
甲羅には水脈が刻まれ、治水を助け、参詣者に浄水を振る舞う。
[念佛宗(念仏宗)無量寿寺の彫刻]
念佛宗(念仏宗)無量寿寺 手水舎 水盤
ウィキペディア 霊亀

龍亀 りゅうき

念仏宗の総門前で蓮の花に向かい、口から清水を噴出している巨大な霊獣が「龍亀」。龍の頭と亀の胴を持ち、大自然の力を操り、邪気を払い、国を護るといわれる。
亀は長寿の象徴であり、身を制し、精神を制して、長い歳月を生き、さまざまな経験を積んで、龍に近づいてく。亀が龍になった姿が「龍亀」であり、人も精進を積んで、佛になることを教えている。
[念佛宗(念仏宗)無量寿寺の彫刻]
念佛宗(念仏宗)無量寿寺 佛教之王堂 総門前 石盤

水辺を彩る石彫刻  念佛宗(念仏宗)無量寿寺 手水舎

浄水がこんこんと湧き出る手水舎は、大自然の恵みを湛える大切な器。
その水場を慕って、多くの瑞獣(ずいじゅう)や生き物が集い、ここを守護し、御佛から賜った生命を尊ぶ植物たちが、その可憐なる花をもって、この地を飾っている。
砂岩で製作された、空を舞って佛を讃える飛天(ひてん)、凡夫が転じて佛となる「登竜門」(とうりゅうもん)の教えを説き示す鯉、生まれ変わり死に変わりの理を象徴する鳥、浄域を彩る植物たちが、石彫刻をもって精緻に描かれている。
[念佛宗(念仏宗)無量寿寺の彫刻]

海駝 かいだ ヘッテ

山門をくぐると全長15メートルの石舞台の両脇には、瑞獣(ずいじゅう)「海駝」が「阿」「吽」の様相で横たわっている。
頭は牛、胴は獅子、足は駱駝(らくだ)という、この瑞獣は、水を持って火を制し、燃え盛る参詣者の煩悩(ぼんのう)の炎を、この場所で消し去るべく、聖なる火を身体にまといながら、水辺で活躍するための鱗に身を包んでいる。
[念佛宗(念仏宗)無量寿寺の彫刻]
念佛宗(念仏宗)無量寿寺 山門周辺
最終更新:2023年11月28日 20:03