建具 


念佛宗(念仏宗)無量寿寺「佛教之王堂」の主要な建築物の建具類を制作された
㈲松田建具製作所 代表取締役 松田一郎氏 よりのコメント

念仏宗無量寿寺様の建具製作について
どんな仕事をするにしても、職人と名の付く限り、全てにこだわりがあります。その中で、特にここだけはどうしても譲れないという箇所は、それぞれだと思います。材料にこだわる人、技にこだわる人、デザイン、金具、表具等、建具には多くのこだわり処があります。今回、「念佛宗(念仏宗)無量寿寺 佛教之王堂」の建具を製作するにあたり、私は全てに、いえそれ以上にこだわりました。こだわりという言葉は、当てはまらないかと思います。なぜなら、私にとって全てが未経験だったからです。何一つとっても手探りの状態からのスタートでした。
施工図面は全て書くのに5年近くかかり、材料を保管する倉庫も借り、新しい機械も入れ、準備するのもこだわりました。とにかく一世一代の大仕事、子孫に残せる大仕事、なんとしても後世に残すために、全てにこだわっていい仕事をしたい。皆に喜んでもらいたいと思いました。
まず、取付け金具を開発しました。重さ一トンにもなる桟唐戸を取り付ける。どうすれば危険が少なく取付けが出来、後々も簡単に調整が出来るかと、試行錯誤しました。4年がかりでなんとか出来上がり、取付け作業を始めるまでには、特許も取りました。
建具のデザイン、特に木柄・マスの数・彫刻の図案・飾り金具の図案・塗装の色等、数え上げたらきりがないくらいの要点がありました。気の抜けない日々の連続でした。
ようやく形が見えてきた頃に、金箔襖の取付けが始まりました。壁面に金箔の襖を取り付けるのです。とにかく大きな壁面です。1枚が幅約1600㎜高さ最大4300㎜にもなる襖を、何枚もつなげる作業です。三阪画伯が心をこめて書かれた絵画。ジョイントが合わなかったら、傷を付けたら、心配のタネは尽きません。長袖・マスク・手袋を付けての職人にとって、真夏の作業は大変でした。それでも大した問題もなく、終えることが出来ました。後で聞いた話ですが、金箔を貼る職人さんも、こんな大きなサイズのものは、扱ったことがなく、最初に話を聞いたときは出来ないと思った。仕上がった現場をみてもらった時に「こんなすばらしい仕事が出来て、本当に良かった」と言われました。ここにも職人の心意気があると思いました。
平成19年3月に能登沖地震がありました。能登半島の中にある当社も、当然ながら揺れました。仕上がった建具が高く積まれています。崩れていたら・・・飾り金具がつぶれているかも、彫刻が欠けているかも、祈る思いでした。大丈夫でした。少しずれていただけで、建具はそのままの状態でした。仏様のお陰です。
山門の建具は高さ7mあります。直径1m以上長さが12mの丸太1本で建具の縦框が1本しか取れません。海外へ出かけて、ようやく6枚分12本を用意しました。取付けが終わってからも、台風がなどの風にあおられ、急に戸が開閉して人に当ったりしないだろうか?等と又心配します。
桟唐戸に組み込む彫刻、廻りに付ける飾り金物、それぞれにデザインが違い、向きも違う。何万枚もあるそれらを間違えずに取り付ける。釘を打つのも膨大な数です。何十年選手の職人たちも腱鞘炎になるくらいでした。
それでも職人達は、日本一いや世界一の建具を作るのだと、わずかの誤差にも妥協せずに、知恵を出し合い、経験したこともない製品を完成させたのです。
奥の院と太子殿に輪島塗の建具が入っております。その建具一枚一枚に細かく文字が書かれています。輪島塗の職人さんが一字一字、息を止めるようにして書かれたと思います。
平成20年11月の落慶法要の時、無事この日を迎えられた喜びで一杯でした。
一枚一枚の建具に大勢の職人たちの、魂がこもっています。すばらしい仕事をさせていただいた感謝と、成し遂げた満足感。言葉には表せない感動でした。
職人としての誇りです。
大勢の方々に沢山のお力をいただいて、無事納めることが出来ました。本当に感謝でいっぱいです。有難うございました。












最終更新:2016年07月04日 01:02