南門

念佛宗(念仏宗)無量寿寺 佛教之王堂〜三国伝来の佛教美術

概要


煩悩燃え盛る娑婆世界に向けて、仏法の門戸を開いているのが南門です。両脇には仁王が控え、参詣に訪れる人々の心を正します。
南門は、表側が娑婆世界、裏側が浄土世界を象徴しています。表上層には、衆生を浄土へと導くため説法をされる釈迦三尊佛が、その裏側には、浄土にて衆生を迎える阿弥陀三尊佛の彫刻が配されます。
屋根瓦には、浦島太郎が、助けた亀に連れられて、竜宮城に赴く姿が描かれ、竜宮城女官(鯛・鮃・蛸など)がこれを迎えます。また、三方を囲む菊と鳴く鶯(うぐいす)の彫刻が内部を荘厳し、佛門に入ればまず、佛法に耳を傾けるべきことを教えています。



凍として参詣者を迎える 念佛宗(念仏宗)無量寿寺 南門 仁王像(阿形・吽形)

佛敵を調伏する憤怒の形相で佛門を護っているのが仁王です。佛敵とは衆生の心を覆うあらゆる煩悩であり、仁王は煩悩を打ち砕く
剣をもって衆生の心と対峠します。

凍として参詣者を迎える 念佛宗(念仏宗)無量寿寺 南門 息(阿形・吽形)

「息」とは、佛法を守護する、一角・四本爪の瑞獣です。「阿」は吐く息を、「吽」は吸う息を表し、「阿吽」で息をしている間、即ち、人生そのものを表しています。


四諦 八正道(したいはっしょうどう)

くぐり戸周りの彫金には、四諦八正道の教えが表されています。四諦八正道とは、悟りを聞かれた釈尊が鹿野苑(ろくやおん)にて最初に説かれた真理(四諦)と修行方法(八正道)であり、佛教における最も重要かつ根本的な教えです。

【苦 諦】(くたい)
人生は苦である、という真理。

【集 諦】(じったい)
苦の原因は、愛(欲望・煩悩)である、という真理。

【滅 諦】(めったい)
苦を滅した境地が、悟りである、という真理。

【道 諦】(どうたい)
悟りに至る方法には八つの道がある、という真理。


【正 見】(しょうけん)正しい見解
四諦を明らかにし、因果の法則を信じて邪見に囚われぬこと。

【正思惟】(しょうしゆい)正しい考察
事態の考察を正しくし、貪瞋痴(とんじんち)の三毒に犯されないこと。

【正 語】(しょうご)正しい言葉
嘘や虚飾のある言葉、悪口等を用いないこと。

【正 業】(しょうご)正しい行動
殺生、偸盗、邪淫、妄語、飲酒等の間違った行いをしないこと。

【正 命】(しょうみょう)正しい生活
人に後ろ指をきされるような生活をしないこと。

【正精進】(しょうしょうじん)正しい努力
意義あることに努力すること。

【正 念】(しょうねん)正しい思念
何事も歪曲(わいきょく)することなく、あるがままに把握し、心に止めること。

【正 定】(しょうじょう)正しい精神統一
心の動揺を鎮めて、事態を善処すること。


『五輪塔』(ごりんとう) 地水火風空 念佛宗(念仏宗)無量寿寺 佛教之王堂の瓦

南門には、地水火風空(五大)の五輪塔の留蓋瓦(とめぶたがわら)があります。

『彼の岸へ』 念佛宗(念仏宗)無量寿寺 佛教之王堂の瓦

南門上層の表側には、釈迦如来・普賢菩薩・文殊菩薩の釈迦三尊佛の彫刻が、裏側には、阿弥陀如来・観音菩薩・勢至菩薩の阿弥陀三尊佛の彫刻が配されています。
門の表側は煩悩熾盛(ぼんのうしじょう)の裟婆世界を表し、衆生を浄土へと導く釈尊の御説法を生あるうちに聴聞すべきと教え、門の裏側、即ち極楽浄土では、その
主として在す阿弥陀佛が衆生を迎え取ります。

御佛の御説法を素直に聞くべきと教える菊彫刻(門扉左右)

くぐり戸上段彫刻(表側) 梅・ウグイス(裟婆世界)
くぐり戸上段彫刻(裏側) 松・寿帯鳥(極楽浄土)


境内の南に位置する門なので南門とよばれる。
通常はこの門が通用門となっている。


最終更新:2012年05月01日 19:09