少年少女の旅路
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少年少女の旅路
ja
2013-11-30T16:01:58+09:00
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マルーンでの夜
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*プラチナ・ガーネット
ベッドに横たわるルーラちゃんのすぐ隣で、シリウスちゃんは彼女の目覚めをずっと待っていた。
あの後、ベノン・ファングの傷を受けたルーラちゃんはラナセルさんの家へと運ばれた。それからというもの、ラナセルさんの部屋で彼女は眠り続けている。……心配なところだが、ラナセルさんが言うには気を失っているだけらしい。
「……ルーラの具合はどうだ?」
「ラナセルさんに診てもらったけど毒は回っていないって。一日安静にしていたら大丈夫みたい」
「そうか……」
シリウスちゃんの言葉にどこか安心そうに呟くと、翔くんは静かに玄関へと向かって歩いていった。外はすでに日も暮れており、こんな時間に外出するのは危ない。そう思ったのか、シリウスちゃんが再び翔くんに声を掛ける。
「ちょっと、どこ行くのよ?」
「今日中にやっておかなきゃいけない事があってな」
「……一応訊くけど、何?」
「ツケ払い」
呆れたようにため息を吐くシリウスちゃんに「じゃな」と後姿のまま手を振り家を後にする翔くん。便乗するように、僕もなんとなく彼の後に続こうとする。……翔くんとは目的が違うが、僕も気になる事があった。
「シリウスちゃん、僕もちょっと……」
「はぁ、プラチナも一緒なら大丈夫かしら……二人とも、あんまり遅くならないうちに帰ってくるのよ」
そんなお母さんのような事を言いながらシリウスちゃんは僕らの出発を見送った。
――というのが数分前の出来事。
マルーンの夜の町並みを、無言のまま先頭を切って歩く翔くんと、少し間を開けてその後ろに続く僕(と、クロ)。
僕の存在には気づいているらしいが、翔くんは何も口を開くことはなかった。洞窟にいる時は、翔くんの傍にはシリウスちゃんがいて彼女の隣で軽口を叩いていたけれど、普段はきっとこんな感じなんだろう。僕もあまり人と話すのが得意な方ではないからこの距離感がちょうど良く感じた。……そんな風に考えていると、不意に肩に乗っていたクロが不機嫌そうに僕の顔を覗いてきた。
『おいプラチナ、わかってるだろーなー?』
その問いに苦笑しながら「分かってるよ」とだけ返しとく。クロの言いたい事はなんとなく理解できた。おそらく「もう面倒事に巻き込まれんじゃねーぞ」か「本来の目的を忘れてるんじゃねーだろーなー?」の辺りである。……もちろん、僕
2013-11-30T16:01:58+09:00
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つかの間の一息
https://w.atwiki.jp/sstabiji/pages/115.html
*ルーラ・キャラット
――――。
.
.
.
(う……ううん……)
私はあれからいったいどうなっちゃったんだろうか。……解らないし、覚えていない。
ぼやけた視界が徐々に鮮やかに色づいていく。視界に一番最初に飛び込んできた色はスカイブルー。
それはシリウスちゃんの今にも泣き出しそうな顔で――……って、えっ??
「シリ、ウスちゃん……?」
「ルーラ!!」
……目を開けると、そこには見慣れた親友のシリウス・フィーナちゃんがいた。
(ここ……は?)
辺りを見回すとそこは木製の小さな部屋で、私は白いベッドに横たわっているようだった。……はて、洞窟にこんな部屋なんてあったかな??それにこんなふかふかなお布団まで。未だにぼうっとする頭を必死に起こし、私は今の状況をゆっくりと思い出す努力を始めた。
私は確か、闇の洞窟と呼ばれている場所でシリウスちゃんと翔くん、プラチナくん。そしてブレスくんと……流星の石と白夜樹の葉を探す為に探索をしていて、そこで洞窟の最深部で黒い毛のおっきいワンちゃん――『ベノン・ファング』と戦ったんだっけ。
それから、流星の石を採取している途中でベノン・ファングの残党がブレスくん目掛けて襲い掛かってきて、それで……私――。
「……ああああ~っ!?」
――そうだよ!私、洞窟でベノン・ファングからブレスくんを守ろうとしてやられたんだ!!
「ルーラ!?」
その時、誰かが部屋まで駆けつけてきた。それは私がまさに今、頭の中で思い描いていた人物で。
「よかった……目を覚ましたんだな!」
「ブレスくん……」
私の声を聞いて慌てて飛び出したのか、少し息を切らせながらブレスくんは私を見て安心したように笑った。その隣でシリウスちゃんが怒ったような、悲しいような顔で私を見つめて口を開く。
「本当に心配したのよ……アンタってば、ずっと目を覚まさないんだから……!」
「え……ずっと? 私、ずっと寝てたの!?」
「洞窟からマルーンに戻ってきて半日くらい、ね」
疲労も溜まっていたんだろう、とブレスくんが続ける。マリック王子の件といい、怖いワンちゃんといい、確かに色々あって疲れていたかもしれない。
「ところで――」
……それはそれとして、私はさっきから疑問に思っていた事を二人に投げかけた。
「あのぉ、
2013-11-30T16:01:21+09:00
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僕が誇れるもの
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*トレアン・ブレス
僕とルーラが進んだ先
そこには虹色に輝く石の宝庫だった。
「わぁ…綺麗…!ねぇねぇ、ブレスくん!あれが流星の石?」
ルーラが何か言ってるけど僕は気に留めず流星の石へと走る。
「わわわっ!ま、待ってよブレスく~ん!!」
僕は即座に本を取り出し確かめる。
…七色の乳白色。それでいてところどころ、きらきらと星のように煌めいている。
水晶のように、一部分に群生している。
「…間違いない!これは確かに流星の石だ!」
「本当っ?!わぁああっ!すごい!やった!やったねブレス君っ!!」
「ああ!!」
…なんでお前がそんなに嬉しそうなんだよ。って、思ったけど言わないことにする。
そして僕は採掘道具一式(持ち運び出来るミニミニポケットサイズだ)を取り出し、もくもくと採掘する。
薬に必要なのは…流星の石20g。量はこれで十分だろう。
袋いっぱいに石をいれ、僕は立ち上がる。
そのときだった。
突然の地響きと共に、生温かい突風が僕たちを襲う。
「わっ、風??」
風?そんな馬鹿な。ここは風の通り道なんてない。…いやな予感がする。
フラッシュバックのように、僕は本の記憶思い出す。
脳裏でページがぱらぱらとめくれる。
群をなして行動する危険な魔物。
危険とされる原因の第一は、群を率いる親玉の存在。
かなり巨大なその親玉は「ベノン・ファング」と呼ばれ…
「…ルッ!」
「危ないブレス君!!!」
僕はハッとして、すぐさま後ろにいたルーラに注意を呼び掛け、ようとした。
そのたった、一瞬。
僕の視界一杯に、黒い豪腕が遮った。
そして、耳に響いたのは打撃音…!!
「る…ルーラ…?」
次に、僕の視界に入ったのは
ぐったりと倒れているルーラの姿………!!!
理解する。ルーラは僕を庇ったんだ。僕の反応が、どんくさいばっかりに!
「るっ、ルーラぁ!!!」
僕は駆けた。
ベノン・ファングは巨体だ。いくら僕の足が遅くても、反応は遅い。
「ルーラ!ルーラ!」
腕から血が出ていた。爪だ!引っ掻かれたんだ…!
僕は細長い布を取り出してルーラの上腕部をきつく縛りつけた。
…一時しのぎの応急処置にしかならないけど…爪の毒が全身に回ったら、最悪の事態にしかならない…!
2013-03-10T23:36:31+09:00
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魔法・技
https://w.atwiki.jp/sstabiji/pages/113.html
*魔法
|&bold(){技名}|&bold(){使用者}|&bold(){技の備考}|
|アース・トルネード|シリウス・フィーナ|地属性。一部の地を震わせる魔法。泥やぬかるんだ地面では、泥を上昇させ矢のように放つことが可能である。硬い地面や森では不向き。|
|ウィンドランス|シリウス・フィーナ|風属性。どの地域でも"空気"があれば使用可能。大気を使用し、風の槍を作る。風の刃(エア・ソーサー)よりは早い詠唱時間だが威力は弱め。|
|風の刃(エアソーサー)|シリウス・フィーナ|風属性。詠唱者を中心とし、四方八方に鋭い旋風が吹き荒れる。少しレベルが高く、詠唱には時間がかかる。|
|シャイニング・エクスプロージョン|プラチナ・ガーネット|火属性。まばゆい光ののちに、広範囲の爆発を起こす。マナに理解のある者ならば、魔力の調整で爆発範囲を決める事ができる。|
|ファイア・ボルト|プラチナ・ガーネット|火属性。炎魔法の基礎魔法。少量のマナで炎を編み出し敵を撃つ。|
|氷の雨(アイスガン)|プラチナ・ガーネット|氷属性。水分をマナで氷結させ、無数の氷の弾丸にし相手にぶつける。|
|ファイア|トレアン・ブレス||
|ライト|トレアン・ブレス||
*技
|&bold(){技名}|&bold(){使用者}|&bold(){技の備考}|
|猫パンチ|ルーラ・キャラット|-|
|バレッドアロー|プラチナ・ガーネット|弓攻撃。迅速な矢で敵を射る。|
|シャワー・アロー|プラチナ・ガーネット|弓攻撃・無属性。矢の種類によって属性が変わる。広範囲に無数の矢を天に向けてシャワーのように発射する。|
|倭寇・一式|明 翔|抜刀術。高速で抜刀することにより、斬撃の威力があがり、斬撃が飛ぶ。|
2013-03-23T21:22:21+09:00
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暗雲
https://w.atwiki.jp/sstabiji/pages/112.html
*明 翔
暗闇の中の戦闘は久しぶりだった。ずっと一人だったから、誰かを庇いながら戦ったことなんてない。毒消し草ひとつでも節約できることに越したことはない。
…邪念とは、まさにこれ。
それで魔物に脇を抜かれるなんて、激ダサ。ざまあねえ。
随分と幼い失敗を責め立てる心内と諌めようとする心内が葛藤し、刀を持つ手に無駄な力が加わる。倭寇が狼の懐に思った以上に喰い込み、血潮に塗れていく。死屍累々横たわる魔物の亡骸のせいで、もういい加減足の踏み場もない。
最後の一頭と目が合った。
ああ、ひと段落ついたらきちんと拭って、マルーンに戻ったら研いでやんねーと…、その前にこの依頼片づけて薬草学者から報酬をがっぽり頂いて……
あーもう。
反射的に飛びかかってくる最後の一頭をいなし、止めの一撃を喰らわせた。
それでも、ムシャクシャは止まらない。
脳内のどこかで、ふと師匠の顔が思い浮かんだ。その顔は、俺を馬鹿にしている時のあの表情で、小刻みに肩を震わせて、口元を手で覆い隠している。――だっせーのくらい分かってるってば。
そう思うと、溜めこんでいた空気が、ふっと口から外に噴出した。
「おい、大丈夫か?」
ファングたちの死骸を飛び越え、シリウスとプラチナの元に寄る。シリウスはふと戸惑った表情を浮かべながら、口ごもるように「ええ」と小さく呟いた。
「これで全部かな…」プラチナが辺りを見回しながら心配そうに言う。
「たぶんな」俺は倭寇を鞘に戻しながら言った。
確かに気配は消えてるし、こんだけ暴れたあとなら他の魔物であっても多少なりとも野生の習性から警戒もするだろう。逆に興奮させることもあるかもしれないけど。
「それより、あいつら追わなくていいのか?」
「そうだね、何があるか分からないし…」
俺とプラチナは先へ進もうと歩き始めたが、シリウスはその場に立ち止まったままだった。
おい、どうしたんだ、と声をかけようとした時シリウスが口を開く。
「ねえ、この魔物ってファングよね?」シリウスは座りこみ、ファングの亡骸に手を触れながら何かを確かめるように言った。
「ああ、多分な…」
「トラスタにもときたま出てることがあったんだけど…こいつらって、群れを成すでしょう?」
2013-02-09T03:44:34+09:00
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戦闘体勢
https://w.atwiki.jp/sstabiji/pages/111.html
*シリウス・フィーナ
「シリウスちゃん、気を付けて!」
炎を敵に向かって撃とうとした時、その背後からプラチナが大きく叫んだ。
「なに!」
私の目の前には今に飛びかかろうと待ちかまえている敵がいて、背を向ける行為は危険な状況だ。
そんな振り返る余裕もない時に、一体プラチナは何を気をつけろと言うのか。
私は敵から目を離すことなく睨み付けたまま、敵の様子を見る。
双方目を逸らすことも、攻撃をすることもなく張り詰めた空気が流れた。
掌から消えることなく燃えさかる炎の熱気と、場の緊張感でこめかみから一筋汗が流れるのを感じた。
それ程までに戦闘に集中し、自分の全神経がびりびりとしているのがわかる。
トラスタ村に居ればまず遭遇しない量の敵との対峙だ。
「ここはマナの力が強くて、威力も強くなる――」
「分かってるわよ、そんなの!」
神経が張っていることもあって、いつもより強めの口調でプラチナの言葉を振り切るように言う。
プラチナはまだ私に何か言おうとしていたが、私の先程の返答で諦めたように、唇をかみしめて言葉を飲み込んだ。
そんな中、真っ先に翔が軽やかに走って敵の方へ向かい、斬りかかる。
翔の刀で斬りつけられた敵が雄叫びを上げて、血しぶきを散らし倒れ込んだ。
ドクドクと敵の体内から吹き出す緑が、その被毛を汚していく。
戦う翔の姿は白く輝く白夜樹の背景と相俟って、まるで銀世界の中で戦っているみたいに見えた。
私も負けていられない、と翔の攻撃の間に出る隙を埋めるように魔法を唱えながら敵と応戦する。
その横でプラチナが、弓を発射させるために用意をしているのが見えた。
何頭かは翔の手によって倒されたが、生き残っている敵はまだいる。
あの数の敵を相手したというのに、翔は息一つあがらない。
(――さすがね、ギルドに所属していたら戦闘にも慣れるのかしら)
ふと、後ろを振り返るとプラチナがぎこちない手つきで弓を引いているのが見えた。
射程距離の長い弓では攻撃自体が難しい。前衛に当てないようにするのも一苦労だ。
――それは、私も同じ条件ではあるけれど。
本格的な戦闘といえば、兄さんに魔法を教えてもらった時以来だった。
考え事をしていた、その時。
「ッ――!?」
翔の身体をすり抜けて私の方をめがけて走って
2012-09-23T00:17:06+09:00
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第一章「闇の洞窟編」
https://w.atwiki.jp/sstabiji/pages/110.html
*第一章
|&bold(){話数}|&bold(){タイトル}|&bold(){視点}|&bold(){書き手}|
|16|[[真昼の悲劇]]|プラチナ・ガーネット|里村りん。|
|17|[[予感と胸騒ぎ1]]|シリウス・フィーナ|芹沢響子|
||[[予感と胸騒ぎ2]]|シリウス・フィーナ|芹沢響子|
||[[予感と胸騒ぎ3]]|シリウス・フィーナ|芹沢響子|
||[[予感と胸騒ぎ4]]|シリウス・フィーナ|芹沢響子|
|18|[[腹が減っては戦はできぬ]]|明 翔|愁|
|19|[[白馬の王子様??]]|ルーラ・キャラット|里村りん。|
|20|[[赤い果実と、友情と1]]|フォルテ・カンパネラ|芹沢響子|
||[[赤い果実と、友情と2]]|フォルテ・カンパネラ|芹沢響子|
|21|[[闇の洞窟]]|プラチナ・ガーネット|里村りん。|
|22|[[どちらを選ぶか分かれ道]]|シリウス・フィーナ|芹沢響子|
|23|[[ツイてない日]]|明 翔|愁|
|24|[[ぬかるみ注意。1]]|シリウス・フィーナ|芹沢響子|
||[[ぬかるみ注意。2]]|シリウス・フィーナ|芹沢響子|
|25|[[慌ててどっきりびっくり]]|トレアン・ブレス|桧丸|
|26|[[脳筋少女と知的少年]]|ルーラ・キャラット|里村りん。|
|27|[[道が無くても諦めない、という事]]|シリウス・フィーナ|芹沢響子|
|28|[[水路での戦い]]|明 翔|愁|
|29|[[仄暗い洞窟で]]|シリウス・フィーナ|芹沢響子|
|30|[[白夜樹とは?]]|トレアン・ブレス|桧丸|
|31|[[彼の目的]]|プラチナ・ガーネット|里村りん。|
|32|[[信用材料]]|シリウス・フィーナ|芹沢響子|
|33|[[深奥への入り口]]|明 翔|愁|
|34|[[強いマナにはご用心!]]|トレアン・ブレス|桧丸|
|35|[[白夜樹を貪るモノ]]|ルーラ・キャラット|里村りん。|
|36|[[戦闘体勢]]|シリウス・フィーナ|芹沢響子|
|37|[[暗雲]]|明 翔|愁|
|38|[[僕が誇れるもの]]|トレアン・ブレス|桧丸|
|39|[[つかの間の一息]]|ルーラ・キャラット|里村りん。|
|40|[[マルーンでの夜]]|プラチナ・ガーネット
2013-11-30T01:08:47+09:00
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序章「それぞれの旅立ち」
https://w.atwiki.jp/sstabiji/pages/109.html
*序章
|&bold(){話数}|&bold(){タイトル}|&bold(){視点}|&bold(){書き手}|
|1|[[悪ガキとモンペと暴走少女]]|ルーラ・キャラット|里村りん。|
|2|[[蒼い宝石は時に濁っても見える]]|フォルテ・カンパネラ|芹沢響子|
|3|[[ルナトーンからの旅立ち]]|プラチナ・ガーネット|里村りん。|
|4|[[幻の薬]]|トレアン・ブレス|桧丸|
|5|[[その傷の代償と失ったもの]]|フォルテ・カンパネラ|芹沢響子|
|6|[[森の中の少女]]|フォルテ・カンパネラ|芹沢響子|
|7|[[兄妹の追憶]]|シリウス・フィーナ|芹沢響子|
|8|[[アシンメトリー]]|シリウス・フィーナ|芹沢響子|
|9|[[トラスタを離れる決意]]|ルーラ・キャラット|里村りん。|
|10|[[二人の少女]]|シリウス・フィーナ|芹沢響子|
|11|[[旅は道連れ?]]|シリウス・フィーナ|芹沢響子|
|12|[[邂逅]]|明 翔|愁|
|13|[[静寂]]|明 翔|愁|
|14|[[素敵な出会い]]|トレアン・ブレス|桧丸|
|15|[[少女たちの旅路]]|ルーラ・キャラット|里村りん。|
&bold(){【NEXT】}[[第一章「闇の洞窟編」]]
2012-07-31T17:54:52+09:00
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白夜樹を貪るモノ
https://w.atwiki.jp/sstabiji/pages/108.html
*ルーラ・キャラット
「みんな…気をつけて。この魔物…毒を持ってるよ」
目の前に立ちはだかる、黒々とした毛並みを持つ、ワンちゃんと形容するには凶暴すぎる――強大な魔物。
ようやく身体を動かせる!……と一瞬考えたけれど、プラチナくんの重たい口調に、私は構えた両腕を仕方がなく下ろした。相手が毒を持っているのでは容易に殴りかかっちゃ危ないかもしれないし、さすがの私もそこまでおバカじゃあないよっ。
「メンドーな魔物が出てきたな…獲物は手に入ったし、逃げるのが得策じゃねーか?」
「そうね…厄介な戦いは私も避けたいわ」
無事に白夜樹の葉を手に入れた翔くんは余計な体力を消耗する前にギルドに報告に行きたいだろうし、ムダな争いを避けたいのはシリウスちゃんも同じようだった。だけど……。
「ブレスくん??」
私は、隣にいるブレスくんがある一点を見て顔色を変えたことに気づいていた。
視線を辿れば魔物が立ちふさがる奥の壁。そこには、虹色に輝く神秘的な石が、仄暗い洞窟に光を点している。
(そういえば……)
ふと、洞窟に来る前のブレスくんの言葉を思い出した。
『えぇと、『流星の石』って言う錬金術の材料を探しているんだ。洞窟のどこにあるかは僕もよく分からないんだけど……』
ブレスくんの様子から察するにあれがきっと……流星の石。それがブレスくんが洞窟に訪れた理由だと言う事は、出発前に耳にしていた。
どんな理由で、なんの為にあの石を欲しているかは分からない。でも。
「あの石が、ないと……。ディムアの薬が……フィーネの病気が……」
小さく呟くブレスくんの顔が悲しげに歪む。
――やっぱり、ブレスくんにとってあの石は大事なものなんだ!!
「翔くん! シリウスちゃん!」
魔物に背を向けようとする二人を慌てて呼び止めると、二人とも苦笑しながら振り返ってくれた。私の言いたいことをなんとなく理解してくれたらしい。
「ルーラならそう言うだろうと思った……はぁ、ここまで来たなら私は付き合ってあげるけどね。――翔、アンタは?」
「さっさと帰りてぇけど、俺だけ美味しい思いをするのも悪いし。……しょうがねぇよな」
いつもの不器用な言葉でシリウスちゃんが、困ったように目を逸らしながらも翔くんが苦笑い
2012-08-03T03:00:07+09:00
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強いマナにはご用心!
https://w.atwiki.jp/sstabiji/pages/107.html
*トレアン・ブレス
「これが、白夜樹…?なによ、毒草って言うわりには綺麗じゃない…」
シリウスもやはり女の子と言ったところか、キラキラと光る木々に目を奪われていた。
「すごーい!雪みたいに溶けてるよ!」
ルーラが駆け出し、木に触れようと…っておい!!
「ルーラぁああぁあ!!」
「はひぃ?!!?」
僕が大声でルーラの名前を叫ぶと、驚いたのかルーラは硬直した。
「全く、どういう神経してるんだ!毒草だって言っただろ!
しかもそれを素手で触ろうとするなんて!野蛮にも程があるよ!」
「ふぇ…ご、ごめんなさい…」
ルーラはしゅん、とし俯いた。…ちょっと言い過ぎたか…?
い、いやいや、でも素手で触って毒でもあったらルーラの手が大変な事になってたんだ!
と、なぜか僕は自分に自分で言い訳をする。
「そうね、ルーラはちょっと猪突猛進過ぎるところがあるんだから」
ぽん、とシリウスがルーラの肩を叩いた。
「これからは気をつけるのよ?」
「う、うんっ!気をつけるっ!」
シリウスの一言に、ルーラは元気よく頷いた。
さて、と…
「ちょっと待ってろ」
僕は毒素のマナをも防げる錬金術師用の白手袋を装着する。
ひらり、と落ちてくる葉を受け止める。
見たところ…どうやら、マナの変化に敏感な植物らしい。
僕は皮の袋とチョークを取り出し、軽く魔方陣を描く。
「こんなものかな」
魔方陣が光り、光が袋を優しく包んだ。
「わあ!なになに、すっごい!何が起きてるの??」
ルーラが歓喜の声をあげる。
「袋にマナを量を固定させる魔法をかけたんだよ」
僕は少し得意げにそう話すと、もくもくと袋の中に葉を採取する。
この魔法がかかっている間なら、葉も溶ける事はない…はずだ。
「こんなもんでいいか?翔」
「あ、ああ。サンキュ!」
僕は十分な量を採取すると、袋を翔へと投げた。
翔はそれを片手で受け取った。
…と、あとは…。
「?どうしたんだ、ブレス?」
「いや、これだけマナが強い場所だ。僕が探してる石も…ひょっとしたらここにあるのかもしれない」
キョロキョロとあたりを見回す。
木の根っこが大量に絡まった地面と壁。
少し掘れば見つかる可能性がある…かもしれない。
と、思ったその時だった。
2012-07-27T03:03:17+09:00
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