魔法少女リリカルなのはStrikers 外伝 光の騎士 第三話


「・・・・・ん・・・・・」
意識を覚醒させると同時に感じたのは木の香りだった。
仄かに漂う木の香り、そして肌に感じる心地よい風、今すぐにでも目を開けなければ、再び眠りに入ってしまう。
だが今までの規則正しい生活が二度寝を許さず、自然と瞳を開け、体を起こす。
「・・・っ・・・・」
意識を覚醒させた直後、軽い頭痛と眩暈に襲われるが、額に手をあて意識を集中させる事で症状を和らげる。
そして、いつもの落ち着きを取り戻した事を確認した後、先ほどまで眠っていた騎士、『バーサルナイトガンダム』はゆっくりと周囲を見渡した。
壁、天井、床、全てが木で作られた部屋、木の香りと温もりが自然と心を落ち着かせてくれる。
そして窓から差し込む暖かな光が、今が夜でないことを表してくれた。
先ずは周囲に敵がいないことを目視で確認する。
だが目覚めてから今まで、近くで殺気が一切感じられなかったため、敵がいない事はほぼ分かっていた。
一応再確認として改めて周囲を見渡す。
「・・・だれも、いないか・・・・」
何処かの家の部屋なのだろう、今自分が寝ているベッドの他にも椅子とテーブル、タンスなど日常生活を送るには必要不可欠な物が置かれている。
そしてテーブルには水差しに入った水、そしてハムとチーズ、トマトとレタスといったシンプルな組み合わせの大き目のサンドイッチが二つ置かれていた。
水差しに入っている氷が溶けておらず、容器に水滴が付いている事から、つい先ほど持って来たものなのだろう。
おそらくは自分への食事であると考えていいと思う、そして自分を殺さない所か、拘束もせずにベッドで寝かせてくれている。
そして自分のために用意してくれたであろう食事、此処に自分を始末しようする輩がいないのは程間違いないだろう。

先ずは現状での安全を確認した後、次にガンダムは自分について考え始めた。
「・・・・なぜ、自分は此処にいるのだ?」

導きのハープにより、自分とアルガス騎士団はジークジオンが住まう巣窟『ムーア界』へと飛ばされた。
其処で待っていたのは今までにないモンスターの大群、手誰の騎士、そして泥の巨人『マッドゴーレム』
だが、ガンダム族の末裔であるアルガス騎士団という心強い仲間達の力を借りる事で、これらの脅威を悉く打ち破る事ができた。

                 「うおぉおおおお!ゼータ乱れ彗星!!」
                 ゼータの剣捌きがモンスターを次々を射抜き、

                     「邪魔だどけぇ!!!」
         ダブルゼータの鉄拳がが自身の数倍の重さがあるモンスタ-を彼方へと投げ飛ばし

                  「朽ち果てろ!フェーン爆風陣!!」
              ニューの法術が泥のマッドゴーレムを次々と火達磨にすし

                      「邪魔をするな!」
           騎士団長のアレックスが手誰の騎士を次々と光へと変えていった。

戦力差など物ともしない皆の力に、自分達はジークジオンが住まう巨塔へとたどり着き、奴がいるであろう最上階へと徐々に近づきずつあった。
だが、最上階まであと一息という所で現われた『ジオン親衛隊』なる騎士達、そして『呪術士ビグザム』と『騎士ゼノンマンサ』
今までの敵とは明らかに違う相手に緊張が走る、だが、彼らの相手をしたのはアルガス騎士団だった。
「「「我々にお任せを!!」」」
「此処は任せ早く!!」
自分を最上階に上げるために戦いを始めるアレックス達、当然自分も残ろうと考えたが、
皆で誓ったジークジオン討伐の決意、そして自身の危険を顧みず送り出してくれたアルガス騎士団の気持ちを無駄にすることは出来なかった。
「・・・すまぬ!!」
皆の勝利を祈りながらも階段を上り最上階へ・・・・そして・・・・・其処で待っていたのは、倒した筈の宿敵だった・・・・

「っ!?なんだ・・・・記憶が・・・・・」
此処で記憶は途切れていた、否、途切れ途切れになっていたという方が正しい。
アルガス騎士団の皆が敵諸共奈落へと落ちる所、自分とサタンが何かを話している所、そして腹に風穴を開け、光に包まれるジークジオンの姿
今までの記憶とは違い、まるで綺麗に切り捕らえた一枚絵の様に頭に過ぎる光景、
いくら考えても、その後のこと、そして詳しい詳細などは全く思い出せない。
「くっ・・・一体・・・・」
肝心な事を中途半端に思い出せない自分に腹正しさを感じながらも、心を沈めようと深くゆっくりと深呼吸をする。
その時であった、外から爆音が響き渡ったのは。


タントは負傷した腕を押さえながら、ただ目の前の敵を睨みつける事しか出来なかった。
彼の後ろにはミラと非戦闘員、そして彼の前方には此処に所属している武装局員全員が倒れている。
見たところ傷は酷いが、全員が痛みに唸っている以上、直ぐに死んでしまう事はないだろうと思う、痛みを感じられるということはまだ症状が絶望的ではないという事だ。
「へっ、やっぱり大したことねぇなぁ~」
そして、そんな自分達を面白そうに見ている男達。
奴らには見覚えがあった、以前此処で乱獲を行っていた密猟者達の取り逃がし。
指名手配をし、捕まるのも時間の問題化と思っていたが、奴らは堂々とこちらを責めてきた・・・・傀儡兵数機を引き連れて。
奴らに戦闘能力は殆ど無い、一番強くてもBランクがいい所。だが、奴らが持って来た傀儡兵は戦闘用に特化された機体、戦闘だけならAA+ランクは軽いだろう。
そんな機体が4機、奴らの後ろに陣取っている。無論自分達も挑みはしたが、結果は現状が物語っていた。
「あなた達!自分達が何をしているのか分かってるの!!?」
ミラの疑問も最もである。
彼らは故意に自分達を襲ってきた、しかも非合法である武装を施された傀儡兵を使って。
これは密猟などではない、襲撃事件だ。だからこそ彼らの行動が理解できない、何故このような事をするのか。
「私達は乱獲された動物を守るために貴方達を追い詰めた、ええ!確かに復讐する動機は十分よね、けどいい逆恨みじゃない?それに
こんな事をした以上、追跡は一層厳しくなる上に、罪も半端なものじゃなくなるわよ!」
「半端じゃなくなる・・・か、結構なことだ」
つかさず言い返す相手に、ミラはつい言葉を詰まらせてしまう、そんな彼女の態度が面白かったのだろう。
密猟者は笑いながら話し出した。
「俺達はなぁ、管理局なんざぁ目じゃねぇ犯罪者と手を組んだんだよ!おかしいと思わなかったのか?ただの密猟者風情の俺達がこんな
上物の兵器を持ってることが?これはそいつの仲間に加わった証拠ってことさ」
「・・・・仮にそうだとしても信じられないわね、『管理局なんざぁ目じゃねぇ犯罪者』が『ただの密猟者風情』の貴方達を仲間にするなんて」
「確かにな、だが天は俺達を見放してはいなかったようだ。お前たちから逃げる時偶然入った遺跡であるもんを見つけてなぁ、
てっきりただの宝石かと思ったんだが、何でもあの犯罪者には必要不可欠な物だったらしい。其処で美人の秘書さんと交渉して仲間にいれてもらたってことさ、
この傀儡兵はサービスらしいぜ・・・・さて、御託は其処までだ、今まで散々コケにしてくれたお礼をしなくっちゃなぁ!!」
ニヤつきながら右手をゆっくりと上げる、それは進軍の意味だったのだろう、4機の傀儡兵はゆっくりとミラ達へと歩み寄る。
恐怖心を与えるためだろうか?斧や剣などの武器をちらつかせながらゆっくりと一歩一歩近づく。

「(くそ・・・・万事休すか・・・・)」
現状でマトモに戦えるのは自分とミラだけ、だが二人がかりでも一体を足止めできるのが精一杯だろう。
こんな事では仲間を逃す事も出来ない所か、自分達の身を守ることも出来ない。通信機の類は襲撃の際にアンテナ諸共吹き飛ばされたため応援を呼ぶことは出来ない、
否、仮に応援を呼べたとしても到着する頃には自分達はただでは済まない事に・・・・・物言わぬ屍と化しているかもしれない。
投降も考えてみたが、相手は此方に情けをかける気など無いらしい。
「(・・・・まったく、考えれば考えるほど・・・・)」
傀儡兵はもう目の前まで迫っている、一歩一歩、大きな音を立てて。
後ろからは非戦闘員が次々に諦めの声を漏らす、自分の様に末路をしっているからこそ口に出すのだろう。
そんな彼らの声に影響されてか、唯一戦えるミラとタントも戦意を徐々に失い、デバイスを持つ手の力が抜ける。
不思議と取り乱したり命乞いをする隊員は誰一人いなかった、死ぬのなら醜態は晒さないというプライドだからであろうか?

そんな中、ミラとタントだけはある人物の事を考えていた、つい最近まで此処で一緒に仕事をしていた女の子とその子の相棒の龍・・・・キャロとフリードの事を。
初めて此処に来た時、キャロは常におどおどしており、フリードはそんな彼女を守ろうと声を出し威嚇していた。
だがそんな時も数日で終わり、直ぐにキャロとフリードは自分達の大切な仲間・・・・家族となっていた。
特にミラはキャロを妹の様に可愛がり、彼女が機動六課へと赴く時には見送りの時、そしてその日の夜に一人部屋で泣いていたのをタントは見たことがある。
ミラは無論、タントや此処の仲間は全員キャロが残る事を望んでいたが、彼女が決めた道を遮る事など出来なかった。

それでも、此処を離れて直ぐにキャロはメールや手紙をよく送ってくれた、他人から見れば少女の日常を書いた日記の様な文面だが、
此処にいる全員から見れば、それはキャロの元気な姿を伝える大切な手紙、部隊での訓練の事、上司や先輩の事、そして同じ歳の男の事
(その事が書かれた手紙が届いた時は、部隊の男性陣は偉く落ち着いていなかった)
そして今日も手紙が届いており、早速読もうとした矢先に起きた襲撃事件、
「(・・・・手紙・・・・・なんて書いてあったのかな・・・・)」
ミラのこの余裕は諦めからか、絶望による感覚麻痺からか。だが、自分達が助かる事による余裕ではない事は確かだ、それは間違いない・・・そう思っていた

「何事ですか?」

後ろから聞き覚えの無い声が聞こえるまでは

先ほどまで眠っていた家の入り口であろう、木のドアを開けたガンダムが見たのは戦闘が行なわれていたであろう光景だった。
周辺の木は折れ、緑の大地は惨たらしく捲れ、中の土を露出させている、
外に出てみて分かったが、先ほどまで自分がいたこの小屋も部屋の一部が吹き飛んでおり、木や何かの機械の残骸を撒き散らしている。
そして、苦しそうに呻きながら倒れている男女が数名、自分のすぐ近くには非戦闘員だろうか、恐怖を隠さずに震えている女性数名がいる。
唯一立っているのは自分の目の前と少しはなれた所にいる同じ服を着た男女だけ、それでも立っているのがやっとだという事が見て直ぐに分かった。

そして、そんな彼女達を面白そうに見つめる男達と、そんな彼らに絶対的な自信と勝利を与えているであろう傀儡兵が4機、
これだけ見れば直ぐに状況は分かった・・・・だが、先ずは聞く必要がある、
早速傀儡兵を従えてる男に聞こうとしたが、新しい獲物が来たのが嬉しいのだろう、密猟者の男は面白そうにバーサルナイトを・・・新たな獲物を見つめる。
「お~、何だ何だ?お前らの秘密兵器か?それにしちゃあ可愛いなぁ~」
「っ!?この人は次元漂流者よ・・・・せめてこの人だけでも助けてあげて!!」
「きけねぇな・・・見られたからには皆殺し(一つ聞きたい」
凛とした声がミラと密猟者の会話を無理矢理断ち切る、その声に自然と会話と止めた二人・・・否、此処にいる全員が同時に彼へと首を向ける。
全員が自分へと首を向けた事を確認したガンダムは、数秒間を置いた後、ゆっくりと・・・問い詰めるように話し始めた
先ずは自分をニヤニヤしながら見つめる男へと視線を向ける
「この惨状を起こしたのは貴方達ですか?」
突然投げかけられた質問に、密猟者の男は言葉を詰まらせる。だが、自分達が圧倒的に有利な事には変りは無い。
直ぐに面白そうにニヤつきながら答え始めた。
「ああ、俺達さ。仕事の邪魔ばかりしてくるこいつらに天罰を与えている所さ、何か文句あるか?寸詰り」
「・・・・・・彼女達が何を行ったのかは知りません。ですが一方的な攻撃、そして現状、会話からして彼女達を殺害しようとしている。
なぜ話し合いをしようと(ウルセェ!!」
此処で先ほどまで話していた密猟者の我慢は限界だった。元々彼は我慢強くは無い、律義にガンダムの話に付き合ったのも、勝利を確信したときに出た余裕からだ。
だが、自らが置かれている現状に対しても一切恐怖をせず、あろうことか堂々と説教をするガンダムに男の我慢は早々に臨界点を超えた。
「そもそも俺達はなぁ!『動物を保護しましょ』って考えてるこいつらの考えには虫唾が走ってるんだよ!!何が保護だ、狩って剥製にしたり毛皮にした方が
人様の役に立つってモンだろうが!散々御託並べやがって!テメェから始末してやらぁ!!」
散々怒鳴り散らした後、男は素早く手を上げる、それは『傀儡兵』に攻撃を、対象を殺せという意味。
早速大きな斧を持った傀儡兵がゆっくりとガンダムに向かって歩き出す。
「っ!早く逃げて!此処は私達がどうにかするから!!」
デバイスを構え、ガンダムを守るように前に出るミラ、タントもまた同じくデバイスを構え戦闘態勢に入る。
だが、ガンダムは彼女達の忠告を聞かずに、ゆっくりと前に、迫り来る傀儡兵に向かって歩き始めた
「な・・・何やってるの!はや(大丈夫です」
「大丈夫ですから・・・・後は私にお任せを」
振り向き、ミラを安心させるかのように、微笑みながら優しく語り掛ける・・・・・ただそれだけの行為、
だが、その『それだけの行為』だけで、言いようの無い安心感が体を、そして心を満たしてくれる。
彼の言葉を聞いていたタント達も同じなのだろう、自然と強張らせていた体の力を抜いた。

そして、ガンダムが歩みを止める、其処には彼の二倍以上の身長も持った傀儡兵が一体、
目の前のガンダムを真っ二つにするため、ゆっくりと獲物である斧を振り上げる。
それでも尚、ガンダムは何もせずにただ目の前の傀儡兵を見つめる、その瞳には恐怖もなければ恐れも無い、否、
もし彼をよく知っている人物がいたら気付いていたかも知れない・・・・少しだけだが『哀れみ』が含まれていた事に
「・・・・・・最後に忠告します・・・・・投降してください、今なら痛い目を見ずに済みます」
突如告げられた投降勧告、これはガンダムからして見れば心からの願い、だが密猟者から見れば戯言にしか聞こえない、
そしてミラ達からして見れば、状況を考えてない馬鹿な行為、当然敵対する側の考えは決まっている
「馬鹿が・・・・・あの世でそのオツムをもう少しマシにしてくるんだな!!」
その声が合図となったのだろう、傀儡兵は振り上げていた斧をガンダムの頭目掛けて一気に振り下ろした。
距離からして避けることは無論、防御する事すら難しいだろう。
そして、振り下ろされた斧が直撃したのだろう、甲高い金属音が周囲に響き分かる。
斧が振り下ろされた瞬間、ミラは自然と目を瞑ってしまう。結果が分かっている以上、見ることなど出来ないからだ。
嫌でも想像してしまう・・・目を開けたら其処には彼の無残な姿があるのだろうから。

だが不思議に思う、音が聞こえてから数十秒が経つ、だが、誰も声を出そうとしない。
てっきり密猟者辺りが『いい気味だ!』位言うと思ったのだが、一切声が聞こえず、ただ静まり返っている・・・否、耳を澄ませば聞こえる、何か金属が軋む音が。
覚悟を決めゆっくりと瞳をあける。先ず目についたのは驚きの表情をしたタントの顔、次に目に付いたのが、タント以上に驚き、唖然としている密猟者達
最後に彼らが揃って見ている所へと瞳を向ける、その直後、ミラ自身も彼らと同じ表情をすることとなった。

傀儡兵が振り下ろした斧、その斬撃をガンダムは右腕に持った剣だけで受け止めていた。
傀儡兵の力は嫌でも理解してる、正面から受け止めるなど早々出来るものではない、だが彼の表情に苦痛も力を入れている様子も見受けられない。
むしろ傀儡兵の方が必至に力を込めている様に見受けられる、先ほど自分が聞いた金属が軋む音は、力を入れるたびに悲鳴を起こしている傀儡兵の間接から聞える物だったのだろう。
だが状況は一切変らない、むしろ傀儡兵が力を入れるたびに振り下ろした斧がガンダムの剣に食い込むだけ。

「・・・・・これが、回答ですね・・・・」
ガンダムが言い終わってから初めて、自分達に向けられた言葉だと密猟者達は理解した。だが言い返すことが出来ない。
真っ直ぐに自分達を見つめるガンダムの視線、それだけで金縛りにあったような感覚に囚われる。
足がガタガタと震える、中には地面にへたり込んだ仲間もいるが、他者を気にする余裕など誰にも無い。

そんな彼らを一瞥したガンダムは再び目の前の敵へと目を向ける。
命令をただ忠実に遂行する傀儡兵は命令が達成されるまで動作を止めない、そんな機械人形に同情をしながらもガンダムは行動に出る
彼らの返事など待つ気は既に無い、後は己が正義を実行するのみ
「ならば貴方達の回答に答えよう・・・・・私の正義で」
剣を食い込んでいる斧ごと勢いよく右横へと払う、
突然の行為、そして予想以上の力に傀儡兵は対処しきれず、斧を放してしまう。
離れた斧は、最初は剣に食い込んだままだったが、払いきった反動で自然と剣から離れ、回転しながら地面へと深々と突き刺さった。
武器を失ってもこの傀儡兵は戦闘用に特化されたゴーレム、直ぐにインプットされた戦闘用プログラムに従い行動を起こそうとする、
だが、並みの武装局員ならまだしも、バーサルナイトの前では余りにも遅すた。
切り払った直後、ガンダムは片手で剣を構えなおし、今度は左横に一閃。
余りの速さに皆何が起こったのか理解できていない、唯一理解できているのは行動を起こしたガンダムと斬られた傀儡兵のみ。
先ず傀儡兵はダメージを受けたことを確認する、そしてダメージの比率、戦闘継続の可不可、今後の行動を瞬時に決定しようとする。だが
傀儡兵に出来たのはダメージの比率の計算そして戦闘継続の可不可だけだった・・・・・・出た回答は単純な物『ダメージ大・戦闘継続ふか』
完璧に報告する前に、傀儡兵の体は上下に別れる・・・・そして上だけが大地へと落下し爆発。
体は離れても、爆発は上下同時だった。

「や・・・やれぇ!!!」
ガンダムの気迫に負けながらも、攻撃命令を下した密猟者のリーダーはある意味では立派だったのかもしれない。
残りの3体の内、砲撃専用の一体がキャノン砲を展開し、残りの二体がそれぞれの獲物を構え突撃する。
傀儡兵が取る戦法は簡単な物、砲撃で相手を牽制し、その後接近戦用の傀儡兵で仕留める。
シンプルだがフォーメーションとしては問題ない戦法、傀儡兵達もこれで戦闘は終ると予想していた・・・・・計算上では。
砲撃専用の傀儡兵はキャノン砲をチャージ、目標を定めるためカメラアイで標準を捕らえようとする、
だがその機械の瞳が捕らえたのはガンダムの姿ではなく電磁ランスの切っ先、捉えた物が目標と違うと認識した直後、砲撃専用の傀儡兵はその機能を停止した。
ガンダムが投げた電磁ランスが砲撃専用の傀儡兵の頭を貫通し破壊する、だが突撃した残り二体の猛攻は止まらない。
先に間合いに入った傀儡兵が両腕に持った剣を振り下ろす。スピード、狙いは無論、傀儡兵のパワーも含まれてる、攻撃としては申し分ない。
だがその斬撃をガンダムは軽々と切り払い吹き飛ばす、だが吹き飛ばされた傀儡兵の後ろに隠れていた残りの一体が、ガンダム目掛けて武装である槍を突く。
狙うは対象の体、前方の傀儡兵の攻撃を払ったため、直ぐに先ほどの剣の様に斬り払うのは不可能。
今の対象は丸腰も同じ、直撃は間違いないだろう・・・・だが防がれた。
突かれた槍はガンダムの体に届く寸前に、彼の左手によって掴まれる、そして突刺す位置を変えられ、そのまま引き寄せられる。
されるがままに引き寄せられた傀儡兵が見たのはガンダムの姿、それが最後に見た光景だった。
引き寄せた傀儡兵の首を剣で一瞬で跳ねる、そして引き寄せていた槍を脇に抱え体を半回転、その勢いと遠心力を使い、残った胴体を投げ飛ばした。
空中に放り出された首なし傀儡兵は上空で爆発、だが、その光景を見る事無くガンダムは残りの傀儡兵に向かい突進する。
だがその時には吹き飛ばされた傀儡兵は体制を立て直しており、再び攻撃を行なうため対象を捜索する。
しかし正面は無論、左右、後方にも見当たらない・・・・否、上空を確認していない。
即座に空へと頭部を向ける、其処には剣を振り上げ、落下するガンダムの姿。
その後の行動は予測できる、落下と同時に剣を振り下ろす可能性が約100%、元の力に加え落下運動も加えた一撃、直撃すればダメージは計り知れない。
だが防御に徹すれば防げない攻撃絵ではない、あのような体制での攻撃、防がれればバランスを崩し隙が生まれる。
行うべき行動を決定した傀儡兵は武装である剣を頭の上でクロス、更にその上から防御フィールドを張り攻撃に備えた。

目標目掛けて落下するガンダムにもその光景は見えた。だが止まる事など考えない。信じるのは己が腕、この程度の防御、打ち砕く事など簡単だ。
「はぁあああああああああああああああ!!!」
落下と共に剣『バーサルソード』を叩きつける。先ずは防御フィールドがガラスを砕いたかの様な音を立て砕け散る。
だがその勢いもクロスさせた大剣の前に止まってしまう。甲高い音を立て大剣にめり込むバーサルソード、だがそれで終わりではない
「一刀!!」
手に力を込め、振り下ろす力に更なる力を加える。その直後、軋む音が響き傀儡兵の大剣にヒビが入る・・・そして、一気に振り下ろした
「両断!」
大剣が砕ける、そして勢いをそのままにし、バーサルソードは傀儡兵の頭に叩きつけられた。
無論、それだけで終る筈が無い。振り下ろされた剣は頭部を切り裂き胴体を切り裂く、正に縦一文字。
ガンダムの着地と同時に、傀儡兵は左右に別れそれぞれ大地に落ちる、剣を払い鞘へと戻すと同時に、二つに分かれた傀儡兵は同時に爆発した。

「ひっひぃいいいいい!!!」
5分も経たずに自慢の傀儡兵がすべて破壊された現実に、ミラ達は安心を感じるよりも呆然とし、密猟者達は叫び声を上げながらわれ先へと逃げていく。
此処まで来る時に乗ってきたジープなのだろう、全員がそれに向かって走り出す。だが、彼らがたどり着く前にジープに落雷が落下、爆発炎上してしまう。
燃え盛るジープを唖然と見つめる密猟者達、だが、後ろから聞こえるスパーク音に全員がゆっくりと振り向く。
其処には電磁ランスの切っ先を突きつけたガンダムが、じっとこちらを見てい・・・・そして
「逃すつもりは無い・・・だが殺すつもりも無い。大人しくしていてもらおう、『ファン!』」
電磁ランスから放たれる微弱な電撃、だが彼らを気絶させるには十分な威力だった。



「・・・これで少しは楽になった筈です、どうでしょうか?」
「ああ、痛みも引いたよ、本当にありがとう」
笑顔でお礼を言う武装局員に笑顔で返したガンダムは、次の負傷した局員の元へと向かう。
戦闘は終わり今は現状の被害報告や通信機器の修理など、動ける職員は慌しく作業をしている。そんな中ガンダムは
負傷している局員の治療に当たっていた。僧侶ガンタンクや法術師ニューの様なレベルの高い回復魔法は使えないが、
自身もある程度の回復魔法は使える、彼らの傷を癒す事位は出来る筈だ。

そして、ほぼ全員に回復魔法を施したガンダムは深く息をはきへたり込む。
負傷しているほぼ全員に回復魔法『ミディア』を施したのだ、正直先ほどの戦闘よりも疲れた。
だが負傷した人達が元気になった事実は彼の疲れを自然と癒してくれる。
大地に座り込み自然と空を見上げる雲一つ無い晴天、そんな青空を見上げている最中、後ろから声をかけられた。
「あの・・・少しいいかしら?」
立ち上がり声がした方へと体を向ける。其処にはミラやタントを初め、今作業を行っていない隊員全員がいた。
「皆さん、大丈夫なのですか?怪我は完治していません、おやすみになられては?」
「大丈夫、君のおかげで全員仕事が出来るほどに回復している。それより、ありがとう、私達を助けてくれて。
君がいなかったらどうなっていたか分からない・・・本当に感謝している」
タントの言葉が合図となったのだろう、全員がそれぞれ感謝の言葉を述べながら深々と頭を下げる。
突然の行為にガンダムは慌てながらその様な事をする必要は無いと言うが、命を助けられた彼らにして見れば、この行為でも足りない位だ。
「私は自分が出来ることをしたまでですよ、お礼の必要はありません。それより、貴方達ですね、私をベッドで寝かせてくれたのは」
既に気付いていたのだろう、答えを聞く間も無く、ガンダムは皆の前で跪き、深々と頭を垂れた。
「私、ラクロア騎士団所属、バーサルナイトガンダムと申します、この度は私を保護していただき、誠にありがとうございました」
突如感謝する側からされる側に変った事、そして本の中から飛び出たような騎士の振る舞いに呆気にとられる者、呆然としてしまう者、照れくさそうにする者様々
そんな中、ミラだけが彼の感謝の言葉を受け止め、小さく呟いた
「・・・・・思ったとおり・・・騎士らしく紳士ね・・・・」

その後、自分が何故此処にいるのか、何故寝かされていたのかと説明を願うガンダムにミラ達は
「ここでは何だし、ベースキャンプでしましょ、温かい飲み物付きで」
と提案、その申し出を感謝の言葉と共に受けれたガンダムは彼女達と一緒にベースキャンプへ、
そして、今はベースキャンプ内にある部屋の椅子に座り、テーブルを挟んで座っているミラ、そして彼女の側で立っているタントから経緯を聞いていた。
だが経緯と言っても詳しく話すことなど殆ど無かった。突然空から落ちてきた事、発見できたのは自分だけだった事、そして丸一日眠っていた事、ミラ達が分かっているのはそれだけだ。
むしろ自分の事や住んでいた世界など、ガンダムの方が遥かに提供した情報は多い。
「・・・・そうですか・・・・・ですが改めて御礼を言わせてください、見ず知らずの私を保護していただき、ありがとうございます」
「言いのよ、お礼なんて。私達も最初に貴方を見つけたときはビックリしたわ。見たことの無い種族に聞いた事の無い世界。
鎧を着ているから知的生命体では無いかと思っていたけど言葉を話し、常識を理解している・・・・これは次元漂流者に間違いないないわね」
「『次元漂流者』・・・・武装などから予想は出来ましたが、皆さんは管理局の方々なのですか?」
その発言に二人は驚きを隠すことなどなく顔に出した。

本来、『管理世界』に該当する世界に住んでいる種族はすべて管理局などの施設のデータバンクに登録されている。
人やそれに酷似した生物は無論、動物や微生物に至るまで事細かに登録されている。
だが、ガンダムが話した『スダ・ドアカ・ワールド』や『MS族』それらのデータは無論、聞いたことや見たことも無い。
仮に管理外世界であろうとも、彼の様な珍しい種族は記録として残しておく筈、だがそれすらも見当たらない。
それは彼が住んでいる世界が次元を渡る能力を持たない管理外世界であること、そして管理局ですら発見できていない次元世界であるという事だ。
だからこそ可笑しい、なぜ『次元漂流者』である彼が、武装局員のデバイスを見ただけで自分達を管理局と判断できたのか・・・・否、なぜ管理局を知っているのだろうか。

「驚かせて申し訳ありません・・・・・実は私は2年ほど前に管理局と関わったことがあるのです」
驚く二人を落ち着かせるように二人にゆっくりと話す、ガンダムが体験した地球での出来事を。

管理外世界とはいえ、地球を故郷とする人達、先祖が地球人の人は多い。
特に管理局では知らぬ者はいないと言われているエースオブエース『高町なのは』夜天の主『八神はやて』の生まれ故郷でもある。
そのため、地球は下手な管理世界よりも有名な世界として認知されていた。

「なるほど、あの有名人達と知り合いだったの、納得がいったわ。それでどうする?本来なら私達が貴方を保護し、本来の世界へ返す・・・・のは難しそうね。
保護施設へ送ることになっているけど、彼女達の知り合いなら直接連絡を取るわ。最近まで此処で働いてた子が高町一等空尉の部隊にいるから
直ぐに連絡がつくわ。そろそろ通信機器も直っているだろうし、どうする?」
「・・・そうですね、申し訳ありませんが先ずは『クロノ・ハラオウン』執務官、もしくは『リンディ・ハラオウン』提督に連絡をお願いできますか?
現状では私は『次元漂流者』です。私の今後の扱いに関してならクロノ達のほうが詳しい筈ですから」
「分かったわ、クロノ・ハラオウン執務官かリンディ・ハラオウン提督ねすぐに(大変です!!」
端末を起動させ、早速本局に問い合わせようとしたその時、血相をかいた局員が扉を破る勢いで入ってきた。
右手に双眼鏡を持ち、息を荒げながらガンダム達を見据え、何かを伝えようとする。だが、此処まで全速力で来たのだろう。
自身の呼吸が言葉を出すのを防ぎ、只『ゼイゼイ』と荒く呼吸することしか出来ない。
だが、その必至の表情を見れば誰にでも理解できる・・・・・彼が話すまでも無い、緊急事態が起こっているという事が。
局員に連れられ、ガンダム達はベースキャンプの外に出る。其処には此処にいる武装局員、非戦闘員が全員、そして先ほどガンダムが懲らしめた密猟者全員がいた
そしてその全員が肉眼で、または双眼鏡を使い地平線を見つめる。
肉眼では何かがいるとしか分からないが、双眼鏡を使用している者にははっきりと見えたのだろう。
だが誰も何が見えたか報告をしない、依然見続ける者、ゆっくりと双眼鏡を下ろし、呆然とする者。
見かねたタントが呆然としている仲間から双眼鏡を引ったくり、皆が見つめている地平線を見る。
其処で彼が見たのは大群だった。此処、スプールスでは自然動物も多く、時には動物の大群を見ることも珍しくない。
だが今目にしている大群は動物ではない、見事な隊列で進軍する鉄の塊、この塊は見たことがある。
最近ニュースでも取り上げれれている次元犯罪者が使用する手駒、質量兵器と対魔法防御を駆使し、並みの武装局員では歯が立たない強さを持つ機動兵器
タントは他の局員同様、ゆっくりと双眼鏡を下ろす。そして絶望が入り混じった表情で迫り来る軍団の名を呟いた
「・・・ガジェット・・・・・ドローン・・・」

「はは・・・ははははははは!!やっぱりスカリエッティは俺達を見捨てていなかったんだ!!」
数名を除き、皆が呆然とする中、捕まっている密猟者達だけは純粋に嬉しさを表す。
其処には先ほどまでの絶望感はなく、自分達の勝利、そして自分達をコケにした連中へ報復できる嬉しさがにじみ出ていた。
否、絶望する必要など無かったのだ、自分達は既に奴らと仲間になっている、だからこそ助けに来るのは当然だ。
他の仲間も同じことを思っているのだろう、ニヤニヤしながら慌てふためく局員達を勝ち誇った表情で観察していた。
そんな時である、双眼鏡で様子を伺っていたミラが叫んだのは


                        約一時間前

「あら・・・・まぁ、これはこれは」
ほの暗く、左右にカプセルがびっしりと並べられた通路の真ん中で、空間モニターを展開する女性『クアットロ』
空間モニターに映し出されているのは先ほどガンダムが倒した傀儡兵3体のステータス映像、
だが3体すべての機動信号が先ほど途絶えた事に、クアットロは純粋に驚き、つい声まで出してしまう。
彼女と一緒に歩いていた女性『ウーノ』も最初は空間モニターを展開したクアットロの様子を伺っているだけであった。
だが、本来マイペースを崩さない妹の驚きの表情を見た瞬間、つい何かあったのかと口に出してしまう。
「いえ・・・・お姉さま、あの『俺達も仲間にしてくれ』とかほざいていたアホ共をご存知ですよね?」
「・・・ええ、レリックを偶然見つけた密猟者達よね?2時間後にトーレが行く筈だけど・・・・捕まったの?」
「いえ、あの自信過剰のアホ共に与えた玩具がすべて破壊されましてね・・・・・戦闘から5分と経たずに」
その報告にはウーノもクアットロ同様に驚きを隠す事が出来なかった。
密猟者に与えた傀儡兵はガジェットとは別にスカリエッティが作った試作量産期、それにクアットロが趣味もかねて性能を上げた物だ。
3体同時ならトーレの訓練相手も十分こなす事が出来るほどの性能を持った機体。それが5分も経たずに破壊されたとなると・・・・・
「確か、あそこの人員には殆ど戦闘力は無い、だけど機動六課にいる召喚師と関係があったわよね・・・・もし相手がフェイトお嬢様達だとしたら納得がいくけど・・・」
「いえ、一応猪突猛進馬鹿でしたので『何をするにも先ずは通信設備だけは破壊するように』とアドバイスをしてあります。先ず連絡を取るのは無理でしょう。
それに傀儡兵と一緒に送ったレリック保管用のケースは殆ど動いていません、もしあの連中でしたらそろそろ持ち出している筈でしょうし、何より戦闘中に魔力が殆ど感じられませんでした。
あの連中は馬鹿魔力の集団ですから嫌でもセンサーに反応しますわ・・・・無論得物を使う騎士達もいますが、魔力反応が殆ど無いというのは不自然ですし・・・・」
話ながらも、用済みの傀儡兵のデータを削除すると同時に、ガジェットの発進スタンバイ、任務内容の入力、転送先の座標確認などを素早く行う。
そして後はエンターを押すだけで全てが進行する所まで作業を終えたクアットロが、微笑みながら姉の方へと顔を向ける。
「あの連中である可能性は低いとしても、それなりの実力者がいることは変りません、ドクターが引きこもっている以上、決定権はお姉さまにありますわ。
確実に遂行させるために物量の強みを、Ⅰ型とⅢ型を計50体ほど・・・・・よろしいでしょうか?」
「此処まで作業しておいてよく言うわね。どうで許可を出さなくても『手元が滑った』とか言いながら押す気でしょ?」
「残念でしたお姉さま。『うっかり手元が滑った!』ですわ」
「まったく・・・・いいわ、クアットロ。貴方に任せるわ」
ウーノの許可を得たクアットロは短くお礼を言った後、嬉しそうにエンターキーを押した。



最初、ミラは何が起こったのか理解できなかった。双眼鏡を使いガジェットドローンを観察している最中、
カプセル状のガジェットから突如幾多にも何かが放たれ、真っ直ぐこちらへと向かってくる。
だが直ぐにそれが何なのか理解できた。そして理解した瞬間、自然と大声で叫んだ。
「ミサイル!!?皆逃げて!!」
叫んだミラは自分でも何を行っているのだと思う、一発二発ならまだしも、接近している数はそんな物ではない。防御などしても無意味だろう。
撃ち落す?無理だ、全員先の戦闘でデバイスなどが壊れている。仮に使用できてもこの数だ、撃ち落しきれない。
避難?無理だ、走るより明らかにミサイルの砲が速度が速い、死ぬ時間を多少先送りに出来るだけだ。むしろ未だに状況を掴めていない人の方が多い。
避難行動することさえ難しいだろう。
短い時間で自問するも打開策など見つからない、ただ迫り来る死を受け入れるしかないのか・・・・・その時、

                        「やらせん!!」

力強い声に現実に戻される。その直後、その声の主、ガンダムは自分の足元を凄いスピードで走り去る。
そのまま迫り来るミサイル目掛けて走る、そしてミサイルが肉眼でも十分確認できる距離まで近づき、ある程度距離をつめた瞬間、
両足で大地を削りながら速度を落とし、同時に詠唱をしながら剣を真横に構える。
そして、体が止まった瞬間、力の限り真横に構えた剣を横薙ぎに振るった。

                       『メガ・サーベ!!』

振るわれた剣から、先ずは光りのみが飛び出る。そして徐々に巨大なブーメラン上の斬撃刃となってミサイル群へと迫る・・・そして直撃。
まるでリズムでも取っているかの様にミサイルが次々と爆発してゆく。爆音を轟かせながら爆発するミサイル。それは横に広がる花火と言っても過言では無い。
不謹慎とは思いながらも、次々と花火を裂かせるその光景をミラは綺麗だと思ってしまった。

すべてのミサイルを撃ち落したのだろう、爆発と爆音は消え、周囲には爆煙が立ち込める。
そして、先ほどまで咲いていて花火に見惚れていたミラの隣に、空を飛んできたガンダムがゆっくりと着地した。
その姿に現実に引き戻されながらも、二度も命を救ってくれた騎士に感謝の言葉を述べいようとする、だが
「へっ!いくらあがいても無駄だ!無駄だ!!ガジェット共の進行は止まらねぇ!俺達は助かり、お前たちは死ぬ、その結果はかわらねぇ!!」
「・・・・それは無いかと思いますよ」
自分達の有利を疑わない密猟者達、だがガンダムがその余裕を真っ向から否定した。
否、ガンダムだけではない、此処にいる密猟者達以外の全員がガンダムと同じ考えを持っていた。中には今まで感じていた怒りを忘れ、
哀れみの表情で彼らを見つめている者もいる。
未だに自分達の状況が理解できていないのだろう、タントが一度溜息を吐いた後、説明をしようとするガンダムを手で制し、説明を始めた。
「ガンダムさんが先ほど落としたミサイル群、もし迎撃に失敗・・・・いや、迎撃しなかったどうなっていた」
「そりゃあ・・・・」
「間違いなく絶滅・・・・・仲間であるお前たちもだ。お前たちは言い様に使われただけさ」
「だ・・だが、こちらにはレリックがある!!これまで吹き飛ばすなんて事は」
「レリック?ああ、貴方達のジープの残骸から押収した物のことかしら?これね、中身を調べようとしたけど専用のパスコードでも無いと開かないのよ。
こじ開けようにもとっても頑丈で無理。どれ位頑丈かというとね、さっきのミサイル攻撃にも余裕で耐えられる程かしら。
結論から言うとね、貴方達は見捨てられたの。いえ、この切り捨て様からして、元から仲間にする気なんてなかったのかもしれないわね。
あの傀儡兵も貴方達が他のバイヤーに浮気しないためのご機嫌取りの玩具って言った所かしらね?」
此処でようやく密猟者達も理解する事ができた・・・自分達の現状を
先ほどまで見せていた余裕の表情をしている者は誰も無い・・・・・皆が先ほどまで局員がしていた表情と同じになる。
結果的に煩かった密猟者達を黙らせる事は出来た、だがそれで現状が解決したわけではない。
自分達が危機的状況なのには代わりは無いのだ・・・・・そう考えると、体が絶望感に支配される感じに苛まれる。
必至に助かる方法を考えようとするが頭が働かない、自然と相棒であるタントの方へと顔を向けるか、彼も何かを諦めたかのように力なく俯いているだけであった。
「(もう・・・だめなの・・・・)」
全てを諦め、楽になってしまおうと思ったその時
「諦めるのは早いです!」
凛とした声が部屋に響き渡った。

声を発したガンダムは皆を見据えながら自信が囮になることを提案する。
自分がガジェットと戦い、その隙にミラ達が安全圏まで逃げるという方法を。
「先ほどの話を聞く限り、敵の狙いは此処にいる皆さんの命よりこの『レリック』という物だという事は間違いないと思います。
ですから私がこれを持ち、奴らを迎え撃ちます、その間に皆さんは逃げてください」
その一見無謀とも思える提案につかさずミラは言い返そうとするが、ガンダムと目が合った瞬間、言葉を詰まらせた。
自分達の様な諦めや絶望など微塵も感じさせない強い意思が篭った瞳、決して死にに行くわけで無いと嫌でもわかる。
だが、それでもこの作戦を了承することなど出来ない、恩人を見捨てて自分達だけ逃げるなど
「で・・・でも(わかった、頼む・・・・必ず応援をよんでるから・・・・死なないでくれ」
ミラの言葉をタントが遮る。そして有無を言わさずにミラの手を取りベースキャンプの中へと入っていった。
タントの余りにも強引な行動に、つかさずミラは握られた手を乱暴に振りほどき、勝手に話を進めたタントを睨みつける。
だが悔しそうに顔を歪めるタントの表情を見た瞬間、内から湧き出ていた怒りは一気に静まった・・・彼も同じ気持ちなのだと気付いてしまったからだ。
「・・・・君の気持ちも分かる・・・だが、自分達に出来ることは応援を呼ぶ位の事だ・・・・いっそレリックを渡せばいいと思ったが、
渡した所で命が助かるとは思えない。共に戦おうにも、確実に彼の足手まといになるだけだ・・・・・・SOS通信もジャミング妨害で送ることが出来たかも怪しい。
だから出来ることをする・・・・いいかい?」
「・・・わかったわ・・・・ごめんなさい、感情的になって・・・・・」
「気にする事は無いさ、立場が逆だったら同じことをしていたに違いないし・・・さぁ、行動を開始しよう」


ミラ達局員、そして逮捕した密猟者を乗せた数台のジープが走り去る事を確認したガンダムはゆっくりと前を向き、両腕に自身の武装である電磁ランスとバーサルソードを構える。
背中に背負っている『レリック』と言うロストロギアが入ったケース、ガジェットと言われる機械はこれを狙って来る筈。
ミラ達の命は無論、このロストロギアをスカリエッティなる犯罪者に渡る事も避けなければならない。
「・・・・数にして50前後か・・・・・」
迫り来る敵、並みの戦士なら見ただけで十分戦意を喪失するその光景をガンダムは臆する事無く見つめる。
此処に来る前に戦っていた場所、ムーア界の方が敵の数が圧倒的に多かった。それこそ空が飛行モンスター達で埋め尽くされているほどに。
そんな戦いを経験してしまった以上、迫り来るガジェットなど物の数ではないと感じてしまう自分が可笑しくなる。
小さく笑いながらも、顔を引き締め、武器を持つ両手に力を込める・・・・・そして
「参る!!」
ガンダムが地を蹴り、鋼の大群目掛けて突進する、ほぼ同時にガジェットも唯一の目標であるガンダムにレーザーやミサイルで迎撃を開始した。

『JF704式ヘリコプター』管理局武装隊制式採用の輸送ヘリコプターであり、最近になって武装隊に配備される事となった最新型である。
八神はやてが部隊長を務める機動六課にも配備されており、パイロットの腕も合間って、事件現場に隊員を素早く送り届けている。
今機内にいるのはパイロットである『ヴァイス・グランセニック』、スターズ分隊副隊長である『ヴィータ』、空曹長『リインフォース・ツヴァイ』
そして『スバル・ナカジマ』『ティアナ・ランスター』『エリオ・モンディアル』『キャロ・ル・ルシエ』と『フリードリヒ』、六課を代表する
新人ストライカーズ達である。
本来なら輸送中の時間に作戦内容の確認や緊張を解すための軽い雑談などで、機内は騒がく賑やかになっているのだが、今回は違っていた。
キャロはフリードを抱きしめ俯いていた、よく見れば小刻みに震えてる。
抱きしめられているフリードは主人を励ますかのように泣き声をあげるが、この空間を支配する沈黙の前ではただ虚しく響くだけ。
隣に座っているエリオは何か励ましの言葉をかけようとするが、何を話してよいのか分からず言葉が出ない。
友達を励ます事も出来ない自分の内心で罵りながらも、そっと彼女の手を握り不安を少しでも和らげようとした。
そんな二人を見ていたスバルは自分もキャロに何かしてあげられないかと考えるが思いつかない。
助けを求めるかのように隣にいる同僚に声をかけるが、彼女は冷静に自身のデバイスのチェックをしていた。
「・・・ティア・・・」
「冷たいけど、今の私達には自然保護局員の皆の安全を祈るしか無いわ。もし祈って助かるのなら何百万回でも祈ってあげる。
だけどそんな上手い話なんてあるわけが無い・・・・無力よねホント」
自身のデバイス『クロスミラージュ』のチェックを終え待機モードにしたたティアナはそれを懐にしまう。
そして隣にいるスバルにしか聞こえないほどの小さな声で呟いた。
「私・・・不器用だから・・・ごめんスバル、キャロを少しでも励ましてあげて・・・・私現状を聞いてくる」
そのつぶやきスバルはしっかりと頷く、それを確認したティアナは小声でお礼を言った後、席を立ちヘリのコクピットへと向かった。


JF704式ヘリコプターの操縦席は広く、運転席を含めて椅子が4つ存在する。今座っているのは操縦しているヴァイス、
必至に自然保護局との通信を試みているツヴァイ、そして腕を組みジッとツヴァイの報告を待つヴィータの3人。
そこへ後部座席から来たティアナがやって来たが、皆の態度に変化は無い、だがヴィータは体制を変えないまま口を開いた。
「・・・・キャロの様子はどうだ?」
「落ち込んでます、エリオとスバルが元気付けてくれてますが・・・・・」


自然保護局からのSOS信号、それはレリック回収を担当るす機動六課に真っ先に報告された。
だが受信出来、言葉として拾えたのは『レリック』『ガジェットドローン』という言葉のみ、
その後、こちらから通信してもジャミング、もしくは通信施設の破壊によるものなのか反応は一切かえってこなかった。
自然保護局は六課に来る前のキャロの職場であり、自分を妹の様に接してくれた人たちがいる場所。
音信普通の報告を聞いたキャロの今の態度は当然のものである。むしろ取り乱さない辺り、立派なものだとヴィータは素直に感心していた。

「リイン曹長、通信はどうです?」
「だめです・・・・ジャミング・・・もしくは機器そのものが破壊されています。念話にしても何処にいるのか分からない以上」
「そうですか・・・引き続きお願いします」

ツヴァイは再び通信を試みるが、この操縦席に流れる空気はその行為に意味が無いと結論付けている。
自然保護局に配属されてる局員にはAMFに対する戦闘訓練など行われていない、それに加え連絡が一切無い現状。
口に出してはいえないがほぼ間違いなく自然保護局員は絶滅しているだろう。
本当はその様な事は考えたくは無い、だが常に最悪の状況を考えることも必要だ、そして今回は知りうる情報をまとめると、
嫌でもその『最悪な状況』に合致してしまう。
自然とティアナも最悪の状況を考えてしまい顔を顰める。
その考えを打ち消すかのように頭を2~3度振ったあと、操縦しているヴァイスに後どの位で現場に突くのか聞くため近づく、その時であった。
「?なんだ?」
最初に気が付いたのはヴァイスだった、そしてほぼ同時にティアナも気が付く、前方から近づく何かに。
周囲が何も無い草原のため、肉眼でもその姿を確認出来た。ティアナは咄嗟に掛けてあった双眼鏡を取り覗き込む。
見えたのは数台のジープ、乗っているのは服装からして自然保護局員だろうか?
先ずは報告しようと、ヴィータの方へとふり見たその時、
『そこのヘリ、きこえますか?こちら自然保護局の者です!!』
ツヴァイが開いていた緊急通信回線から、ミラの必至な声が聞こえてきた。


「良かった・・・・皆・・・無事で・・ほんと・・う・・・に」
我慢出来ずに泣き出し、ミラへと抱きつくキャロ、ミラはそんな彼女を優しく抱きしめ、あやすかの様に優しく頭を撫でる。
その光景をスバル達は安心した気持ちで見つめていた。スバルとエリオ、そしてツヴァイに関してはもらい泣きをしている。
ヴィータもその光景を安心した表情で見つめていたが、顔を引き締めミラノ元へと歩き出す。
ほんとうなら暫くはこのままにしてあげたいのだが、事態がそれを許してくれいない。
再開の邪魔をするという罪悪感に苛まれながらも、現状での代表であるヴィータは気付かせるように咳払いを一回、自身の存在を気付かせる。
「キャロ、邪魔して悪いが任務中だ・・・・・後で時間はやるから任務に頭を切り替えてくれ」
「あっ・・・す、すみませんヴィータ副隊長!!」
「気にすんな、お前の気持ちは分かってるつもりだ・・・・・・話をそらしてすまない。現状での代表であるヴィータ三等空尉だ。先ずは何が起こったのかを聞かせてくれ」
敬礼をしながら名と階級を言うヴィータに対し、ミラも同じく階級と名で答える。だが彼女は今までの経緯を話すより先に、ヴィータに現場に行ってほしいと懇願した。
否、ミラだけではない、タントや他の自然保護局員全員がヴィータに詰め寄る。
「お・・・落ち着けって・・・誰か戦ってるのか?」
「そうです!お願いします!早く援護に行ってください!!あの数じゃガンダムさんでも持ちません!!」

                     「「えっ!?」」

『ガンダム』その名に真っ先に反応した人物は2人いた。
一人はヴィータ、彼女にとってガンダムは自分達の呪縛を断ち切り、仲間を救ってくれた恩人、そして共に戦った戦友
一人はスバル、彼女にとってガンダムは優しい騎士。あの頃恐怖した自身の力の使い道を教えてくれた兄の様な存在。今でも忘れない、頭を撫でられた時に感じた暖かさ、優しさを。
その何を聞いたヴィータは唖然とするも、詳しく聞こうとする。だが彼女より先にスバルがミラに詰め寄った。
「すみません!!その、『ガンダム』ってこの写真に写ってる人ですか!!?」
スバルはポケットから二枚の写真を取り出した、一枚は憧れている隊長の高町なのは(直筆サイン入り)ブロマイド、そしてもう一枚は昔撮った写真。
其処には自分とギンガ、そして母クイントとガンダムが写っていた。
この写真を撮った後、ガンダムは元の世界に帰ってしまい会う事は出来なかった。だがもしミラが言っている人物が自分が知っているガンダムなら、再び会えることが出来る。
そんな願いを抱きながら、スバルはミラ達に写真を見せた。
「・・・・ええ、着ている鎧は違うけど間違いないと思うわ、優しくとても紳士な人よ」
「やっぱり・・・・・やっぱり帰ってきたんだ!!」
写真を抱きしめながら大粒の涙を流すスバルにミラはどうしていいか分からず、自然とヴィータの方へと視線を送る。
ヴィータ自身も突然のガンダム帰還に頭が追いつかなかったが、、軽く頭を3度ほど叩く事で何時もの冷静さを無理矢理取り戻す。
正直ガンダム帰還の連絡は直ぐにでもなのは達・・・・・・・特にリインフォースとアリサ・バニングス、そして月村すずかに伝えたい。
だが今は加勢に行くのが急務だ、彼の強さは嫌というほど知っている、直ぐにやられると言うことは無いだろう、だがガジェットのAMF、そして物量、急いだ方がいいのは確かだ。
「エリオとキャロ、ティアナはアタシらが帰ってくるまで此処で待機、そろそろ別任務で遅れたなのはも来る頃だ、
それまで情報収集、連絡、周囲警戒を忘れるな!ティアナは雑務に慣れない二人のサポート、あとミラ達と一緒に密猟者の取調べを頼む」
「「「了解!!!」」」
「スバルはアタシと来い!!待機命令出しても突っ込んでいきそうだから仕方ねぇな、アタシが担いでいく。ツヴァイ、ユニゾン後一気にかっ飛ばす。
此処まで来ればフルに飛ばしても戦闘に影響が出るほど魔力は減らない・・・スバル、目回すなよ!?」
「「了解(です!)」」

「はぁ!!」
ガジェットⅢ型のカメラアイ目掛けて電磁ランスを突刺す、そして間髪いれずに体内に電流を流し込み、直ぐに引き抜く。
機能を停止した事を確認する事もせずに、ガンダムは先ほどのⅢ型を踏み台にしジャンプ、上空でバーサルソードを振り被り、落下と同時に振り下ろした。
目標は真下にいる別のⅢ型、だがガジェットも直ぐに巨大なケーブルアームを頭上で交差し、受け止める体制をとる。
だがガンダムはそんなガジェットの行動を気にする事無く、剣を振り下ろした。
バーサルソードはケーブルアームにぶつかり、甲高い音を響かせる。最初は剣の猛攻を停止させるがそれも一瞬、
直ぐにケーブルアームはガードしていたⅢ型諸共真っ二つに切り裂かれた、その直後、先ほど電磁ランスで突刺したⅢ型、そして今真っ二つにしたⅢ型、その二体が同時に爆発した。
その結果、至近距離にいたガンダムは二体分の爆煙と爆風に包まれることになる。突如目標が煙に巻かれたため、Ⅲ型の後ろで待機していた多数のⅠ型がガンダムの姿を捉えることができない。
そのため、数機のⅠ型が爆煙に包まれている爆心地へと近づく、そしてある程度距離をつめた直後、接近していたⅠ型全機全てが、
ガンダムが爆煙の中から振るった大降りの横一文字の一閃により綺麗に上下に分断された。

振るった直後襲い掛かるレーザーの雨、その攻撃を咄嗟に力の盾で作られたショルダーシールドで防ぎながら
後方へと飛び、レーザーの射程外まで距離をあける。
着地直後、体の力を抜き呼吸を整える。だが、その僅かな休息も与えまいと、ガジェットは武器の射程内まで距離をつめ始めた。
その光景にガンダムは渋い表情をしながらも、直ぐに武器を構え、迎え撃つ体制を整える・・・だが、
「・・・・多いな・・・・」

この数、流石にすべてを接近戦で相手にするのは骨が折れる、だが魔法が無効な以上、接近戦で戦うしか方法は無い。
現に数回『ムービーサーベ』を放ったが、AMFなる防御手段で無効化されてしまった。
それでも『ファン』や『ファンネル』などの魔力によって雷を作り、それで攻撃をする戦法は効果があった、攻撃する方法が魔力の塊ではなく、雷そのものだからであろう。
だが、敵もそれらに対して対策を施しているのだろう。装甲表面に耐電対策を取っているらしく中に直接流すのならまだしも、正面からの攻撃では効き目が薄い。
『メガファン』や法術士ニューの様な魔法スキルがあれば問題は無いのだろうが、自分の魔法はサポートや牽制程度の能力しか無い。

「(熱そのもので攻撃するソーラ・レイなら・・・だめだ発動までの隙が多すぎる。広範囲に攻撃が出来、魔力攻撃では無い攻撃方法・・・あれしかないな)」
右手に持ったバーサルソードを腰の鞘に仕舞い、代わりに左腕に持っていた電子ランスを右腕に持ち帰る。
今ガンダムがやろうとしているのはソーラ・レイと同等・・・・否、それ以上の必殺技。使用後の体力の消耗が激しいため、
そして敵の援軍の可能性も視野に入れていたため、使おうととはしなかったが、半分近く数を減らしても増援は見受けられない。
正直このままでは戦い続けてもキリが無い、ならば一気に全てを破壊するまでだ。
「はぁああああああああああああ!!!」
体中の魔力を一気に高める。ガンダムの体があふれ出る魔力で光り輝き、彼を中心に風が吹き荒れる。
そして正面、迫り来るガジェットの大群を見つめながらゆっくりと電磁ランスの切っ先を向ける。
電磁ランスからはまるで大量の雷を溜めているかの様に彼方此方から激しいスパーク音が響き渡る。
そして徐々に電磁ランスの周りには風が集まり、包み込むかの様に荒れ狂いながらも定着する。まるで雷で荒れ狂う電磁ランスを抑え込むかの様に。
電磁ランスをゆっくりと引き、衝撃に備え、下半身に力を入れる。
その直後、射程圏内に入ったのだろう、進行していたガジェットが攻撃を再開した
迫り来るレーザーの嵐、だがガンダムは怯まない、逃げない、ただ冷静に前方を・・・目標を見つめる。
そして、ガジェットの群れ目掛けて雷と風で荒れ狂った電磁ランスを突き、そして放った、自身の必殺といえる技を。
「トルネェエエエエエド!!スパァアアアアアアアアアアアアアアアアアアク!!!!」

「そうか・・・・お前、すすかさんと知り合いだったのか・・・・それにガンダムにも会ってたとはな」
「はい、ガンダムさんはなのはさんと同じ位、私の中では憧れ、そして目標です・・・ああ!勿論ヴィータ隊長達もですよ!!」
「・・・・・後付け設定ありがとな。まぁ、気を取り直して、さっさとガンダムの助太刀に・・・!!?」
話しきる前にヴィータは突如止まり、何か様子を伺うように前方を見つめる。
突如止まったヴィータにスバルは何事かと思いながらも、理由を聞こうと口を開いた瞬間、二人は突如発生した強風に襲われた。
「ん・・・なろぉ!」
直ぐにバラスを取り体制を立て直す、そして突然発生した強風の正体を探るべく、前を見る。その瞬間3人は目を疑った。
「な・・・なんだありゃ」
「たつ・・・まき・・・?」
「(す・・・すごいですぅ・・・)」
全てを飲み込むかの様な巨大な雷を含んだ竜巻、それは突如現われ、その存在を嫌でも周囲にアピールする。
竜巻の予兆など全くなかった、そうなると故意に・・・・魔力により作られた者だろう。
そんな事が出来るのは彼しかいない、今から助けようとす騎士にしか。
「ガンダムの仕業か?・・・スバル、頼む」
「わかりました!」
早速スバルは瞳を戦闘機人モードに変更、望遠レンズを駆使し、竜巻が発生している周辺を検索する。
先ず目に付いたのが竜巻に飲み込まれるガジェット達、スバルがその姿を確認した直後、次々と爆発を起こした。
中の機械系統をズタズタにされ爆発する機体。竜巻内の加速により互いにぶつかり粉々になる機体、破壊され方は様々だが、行き着く先は機能停止という所は共通している。
そして次に周囲を捜索する。もうガジェットの絶滅は時間の問題だろう、それならガンダムを探す事に専念できる。
だがその必要は無かった、直ぐに見つかったからだ。
自然と目を見開き、その姿を思い出の中にいるガンダムと照らし合わせ確認する。
だが後姿なので完全に確認する事ができない。せめてこちらを向いてくれればと願うが、その願いは思ったより直ぐに叶った。
周囲に敵がいないか確認しているのだろう、左右を見渡した後、後ろを・・・・・ヴィータ達から見れば正面を向く。
その表情を、瞳を見た瞬間、スバルは確信した、彼が自分の知っているガンダムだと。そうなるといてもたってもいられない。
「ヴィータ副隊長!すみません!!」
「っておい!スバル!!」
ヴィータに謝しながら彼女の手を振りほどき、地面へと着地。直ぐにマッハキャリバーを起動し、砂煙を上げながら自分が出せるスピードで駆け抜ける。
早く会いたい。今の自分を見てもらいたい。今のスバルはその気持ちだけで動いていた。自然と顔も綻び、瞳からは嬉しさのあまりか涙も流れる。
だがそんな顔は見せたくは無い、手で荒く顔を拭き、顔を引き締めた。
「飛ばすよ!マッハキャリバー!!」『All right』

「これで・・・・終わりか?」
自身が起こした竜巻が消えたのを確認したガンダムは改めて周囲を見渡す。そこにあるのはガジェットの残骸のみ、
機動をしている機体所か、満足に原型を留めている機体すらない。
何度か周囲を見渡したが残骸が散らばっているだけであった
「・・・・・この大地を汚してしまったな・・・・」
広範囲に撒き散らされたガジェットの残骸を見つめながら申し訳無さそうに呟く。
もう少しマトモな撃退方法があったのではないかと内心で反省しているその時、二つの接近する魔力反応に気が付く。
一つなそれなりに離れた距離にあり、此処では『魔力を持った何か』としか分からない。
だがもう一つはそれなりに高い魔力だというとは分かる、それはこちらへ猛スピードで接近しており、肉眼でも近づくその姿を確認する事が出来た。
「敵か・・・・いや、違う」
敵だと思ったが殺気や敵意をまったく感じない、だが、真っ直ぐ自分目掛けて突っ込んでくる。
あの速度からするに自分目掛けて突撃でもする気なのだろうか?だがやはり敵意も殺気も感じられない。
そう考えている内に、徐々に近づいている人物の姿がはっきりと見えてくる。体系などからして10代前後の少女だろう・・・否、この少女はどこかで見たことがある

         そうだ・・・・初めて会ったのは本局の廊下だった、一人迷子で泣いていたあの時の少女・・・その名は

「・・・スバル・・・・・スバル・ナカジマ!?」
その呟きが聞こえたのだろう。スバルは嬉しそうに微笑みながらスピードを落とさずにガンダムに抱きついた。
ちなみにスバルはスピードを一切落としてない。それはすなわちガンダムに抱きつくと言うよりガンダムに強烈な体当たりを食らわしているのと同じだった。
もしガンダムが身構えていなかったら二人は抱き突いたまま大地を豪快に滑っていただろう。
だがガンダムは抱きつかれる瞬間、自身に強化魔法を掛けると同時に両足に力を入れる。
その行為が結果的に『二人で仲よくスライディング』という笑えない状況を作り出さずに済み、『再開を祝う少女とMS族』という状況を作り出した。

「ガンダムさん!!ガンダムさん!!」
何度もガンダムの名を叫びながら彼を抱きしめるスバル。
ガンダムもまた、突如現われたスバルとの再開を喜ぶように、ゆっくりと彼女を抱きしめた。
時間にして一分弱、ゆっくりとガンダムがスバルの体を話し正面から彼女を見つめる・・・見違えるほどに成長した彼女を
「・・・スバル・・・・・本当に大きくなったね・・・・・逞しく、そして美しく成長した」
『美しく成長した』といわれた瞬間スバルは顔を真っ赤にし、てれを隠すかの様に視線を下に向ける。
彼女もストライカーである以前に一人の少女、その様な事を言われて嬉しくない筈が無い・・・・だが、
「だが、本当に大きくなった・・・・・僅か2年でここまで・・・」
その発言にスバルは現実に戻される、ガンダムなんと言った?二年?そんなはずは無い、彼が旅立って絡もう既に・・・・
スバルは少し怒りながらガンダムの間違いを指摘する、そして、あっさりと真実を話した。

               「何言ってるのガンダムさん!!ガンダムさんが旅立って、もう10年経っているんだよ」

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最終更新:2009年12月28日 21:18