魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者

        第13話

「・・・・・・以上だ」
季節は冬のため日が暮れるのも早く、辺りは夜の闇に包まれていた。
フェンスに背を預け、口出しなどをせずに黙ってナイトガンダムの話を聞いたシグナムは、
一度大きく息をはいた後フェンスから背を離し、ゆっくりと体をフェンスの方へと向ける。
ビルの明かりや車のライトにより夜の街が美しく輝く光景を見つめながら、ゆっくりと口を開いた。
「・・・・・・闇の書のことは私達の方がよく知っている。貴様の勝手な予想だといえなくもない。だが・・・・」
闇の書が完成すれば、主は絶大な力を手に入れる事が出来る。その事には疑問を一切感じていなかった・・・・最近までは。
切っ掛けはヴィータの煮え切らない言葉だった。

           「闇の書が完成すれば、はやては本当に幸せになれるんだよね?」

最初は自分を含めた全員が即答した『そうだ』と。だがその後、その言葉が妙に心に引っかかっていた。
当然だと確信できる断固たる自信。だが、その自信を不安に変えてしまうモヤモヤした感覚。
だが、先ほどのナイトガンダムの話しがそんな不愉快な気持ちを中和してくれた。
同時に思った。なぜ自分達は今までの主の末路を忘れてしまっていたのか、と。
自分達ヴォルゲンリッターは魔力生命体。そのため、自分達自身が闇の書に吸収されてしまう事もあったが、全てではない。
おぼろげに憶えている記憶では、闇の書の完成に携わった事もある。
だが結末が思いだせない。主は死んだのか?世界の覇者となったのか?自分達はどうしていたのか?
まったく思い出す事が出来ない。まるで記憶がリセットされたかの様に。

ナイトガンダムの話しでは、闇の書は悪意のある改変が原因で恐ろしいデバイスと化しているらしい。
その影響が自分達に出ていても可笑しくはない。今までの主の末路を知らない事が正に言い例だ。
確かにその事は認めようと思う。だが、

               『闇の書が完成すれば、主は絶大な力を手に入れる事が出来る』

その事だけは否定する事は出来ない。
実際、力を手に入れる事は確か。それを主の治療に役立てる事も出来るはず。
ナイトガンダムの話しでは完成した闇の書の力は無差別破壊にしか使われていないと言っていたが、
それは制御できなかった主が原因ではないのだろうか?

「騎士ガンダム・・・お前の話は『記録』から出た結論であり、真実ではない。確かに否定できない部分もある、だがすべてを話を鵜呑みにする事など出来ない」
確かにシグナムの言う通りだと思う。今自分が話した事は経験したわけではなく記録から調べた『結論』
闇の書の力に関しても無差別破壊にしか『使われていない』と記録されてはいたが『使う事が出来ない』というわけではない。
それこそ、主を救う様な効力もあるかもしれない。

「侵食に関してもそうだ。元々、今回の主の侵食は特別だ。本来闇の書は前の主が死を迎えた時点で合致する魔力資質の持ち主をランダムに選び転生する。
だが、今回は時を待たず生まれて間もない主の元へと転生、それから今までの10年近くの間、肉体と魔力に負担を与え蝕んできた。
そして闇の書が活性化し、我々守護騎士ヴォルケンリッターが表に現れたことで魔力の消耗が一段と増し、主の病状を悪化させてしまった。
お前の話の様に収集を一定に抑え適度に消費すると言う方法、健康な人間なら出来ただろう。だが、主は違う。
幼き頃から蝕まれた体は侵食を抑える事が出来ない・・・・・・・方法は無いのだ・・・・・」
ナイトガンダムの方へとゆっくりと体を向ける。そして正面から彼を見せた後、深々と頭を下げた。
「お前の話を理解し、納得しようとする自分がいる!だが、同時にその事を否定する自分がいる!!
騎士ガンダム!!・・・・時間をくれ・・・・・仲間にも話したい・・・・・」
この頼みが虫のいい話だとは分かっている。だが、シグナムにはそれしか手段が無かった。
仲間と直には連絡が付かず、主の正体がばれている。有利な条件は一つもない。
ナイトガンダムが仲間に念話を入れたら一環の終わり。おそらく自分がレヴァンティンを構えるよりは早いだろう。
正に自分達の命運は彼の意思に左右されている。
「・・・・頭を上げてくれ、シグナム」
言われるがままに頭を上げるシグナム、直に答えを聞こうとするが、その彼女の行動をナイトガンダムは掌を突き出し静する。
「・・・・私は管理局に協力しているだけのただの次元放浪者だ。逮捕などの義務は無いし、気持ちが
整理出来ていない君をどうこうする気は毛頭無い。むしろ私の推論を真面目に聞いてくれた事に感謝する。ありがとう」
今度は反対にナイトガンダムが深々と頭を下げた。その光景にシグナムはあっけに取られると同時にどうしたら良いのか言葉を詰まらせる。
「それに、私達は君達の主を見つけなければならない。先ずはそれを優先する必要がある」
「なっ!?貴様何を言っている!!主はやが(最初は!!」
『自分達の主を見つけなければならない』この発言にはさすがに食いついた、気づいている筈だからだ。
自分達の主が『八神はやて』だという事に。咄嗟にその事を言おうとするが、ナイトガンダムの大声に阻まれてしまう。
「最初は、『八神はやて』だと思っていた。だが、彼女から魔力を感じる事は出来なかった。闇の書の主である以上、魔術師、
もしくは魔力を持つ人間で無ければならない筈。確かに君達と関わりがあることは確認出来たが、わかったのはそれだけだ。
魔法の事を知らない少女に検査や真実を話すわけにもいかない。君たちの関わりに関しても、八神はやての話から君達が魔法を使える
様な事は言っていなかった。君達の事も『遠い親戚』と言っていた。本当に知らないのだろう、君達の正体を」

ナイトガンダムが嘘を言っている事は直に分かった。彼の勘の良さは理解してる。
間違いなく『八神はやて』が闇の書の主だと理解してる筈。
魔力に関しても現状では闇の書に封印されているだけであり、魔法の事を知らないというのは
自分達を『遠い親戚』と周囲に認識させるための嘘。奴が気づかない筈がない。

「(奴はわざと認識しようとしている・・・・・八神はやてが我らの主ではなく、
ただの月村すずかの友達だという事に。私の頼みを聞き入れるためにか・・・・・)」
「それに、私は君から主の名前を一切聞いていない。常に『主』と呼んでいるだけで名前を明かさない。それではわかるわけがない。
主に忠誠を誓う君のことだ、問いだ出しても口を割ることはないだろう」
あの時、大声を出して、自分の発言を阻んだのはこのためだとシグナムは理解した。
もし、あの時自分が主の名を出してしまっていたら、主が『八神はやて』だという事を認めてしまい、この嘘を作る事は出来なかったからだ。
「特徴は聞く事が出来たから其処から探りを入れてみようと思う。良いヒントを手に入れたから、3日で結論が出るだろう」
おそらくこの3日が期限ということだろう。その意思が伝わった事を確認させるため、しっかりと頷く。
「一方的に話してすまなかった。だが、最後に言わせてくれ。先ほど私が話した事、確かに今までの記録から導き出した推論に過ぎない。
だが、その推論を導き出した時に使ったのは過去に起こった『真実』だ。その事を忘れ名でくれ・・・・・失礼するよ。さすがにはやてが心配するだろう」
ナイトガンダムと共に屋上に来てから30分以上経過している。世間話に花を咲かせていたという理由はそろそろ通じなくなる頃
「肝に銘じておく。最後に聞かせてくれ・・なぜ、私に・・・我々にに機会を与えてくれた。その気になれば私達を捕獲し、
今回の騒動を終らせる事も出来た。それを・・・お前は・・・・」
シグナムの問いに、ナイトガンダムは数秒沈黙する。此処からでも聞こえる町の喧騒が、沈黙を打ち消すかのように響き渡る。
「・・・・・確かに、『管理局』としてなら、君の言った様にすればよかっただろう。だが、先ほども言ったが私は『管理局』の
人間ではない。烈火の将シグナム、私は主を思う貴方の忠義に心打たれた。だからこそ一人の騎士として決断した」
シグナムを安心させるように微笑みながら近づき、ゆっくりと右手を差し出す。

「私達は平和的な解決を望んでいる。そして君達が此処から慕う主を救いたいとおもっている。
今まで敵対していた同士だ。直には結論は出ないだろう・・・・だが、もし私達の力が必要なら、その時は力を貸そう」
その申し出を受けいるかの様に、シグナムは普段はあまり見せない笑顔でナイトガンダムの手を取り、握手を交わした。
「・・・・・もし・・・お前との出会いが・・・このような形でなければ・・・・・私はお前と・・・・
どれほどの友になれただろうか・・・・・・」
「・・・・・・まだ遅くは無い・・・・・だが、これだけは憶えていてくれ。
どのような結果であれ、私は、君を友と思っている・・・・・・迷惑ですか?」
言い出した後、不安げは表情をするナイトガンダムに、シグナムは自然と吹き出してしまう。
今までの張り詰めた空気を一層するかの様に笑うシグナムに、ナイトガンダムは呆気にとられながらも、釣られたかのように微笑んだ。


「・・・・・・あ~あ・・・知っちゃったか・・・・・まぁ、直にアクションを起こさないでくれたのは嬉しい誤算かな」
海鳴大学病院から1キロほど離れたビルの屋上、ナイトガンダムとシグナムを覗いていた人物が独り言をもらす。
「・・・・・三日か・・・・・完成の頃ね。イエスの生誕の日に父様の念願が叶う・・・・・お祝いの準備、ロッテに頑張ってもらわないと」
言葉を弾ませながら転送魔法を発動、誰に見つかる事無く、監視者『リーゼアリア』は地球から姿を消した。


  • 二日後

:月村家リビング

時刻は午後七時、夕食を済ませた月村家の住人一同はリビングに集まり食後のお茶を楽しんでいた。
ナイトガンダムが旅したラクロアの様々な場所やすずかの学校での出来事、そして忍のノロケ話などを肴に花を咲かせる。
(ノロケ話に関しては真面目に聞いていたのはナイトガンダムのみで、ほかは聞き流したり、
静かにお茶を飲んだり、ワザとらしくトイレに行ったりなど、様々ではあったが自分の世界に入り込んでいた忍は気づく事はなかった)
「あの、一つお伺いしたいのですが」
忍のノロケ話が終った所で、ふと疑問に思ったことをナイトガンダムは口に出してみる。
以前アリサも口にし、皆の話の中にも出てきた『クリスマス』という単語について。

「ああ・・・・ガンダム君の世界には無いわよね。こっちの人間の誕生日だし。クリスマスっていうのはねぇ~・・・・・・」
顎に人差し指を乗せ、天上を見つめながら考える事約一分。ばつの悪そうな表情で一度ナイトガンダムを見つめた後、
「・・・ノエル、御願い!」
ノエルへと投げた。
回答を投げられたノエルは、一度忍をジト目で見つめた後、正反対の優しい瞳でナイトガンダムを見据え、話し始めた。
「お答えしますガンダム様。クリスマスとは、この世界『地球』の人物イエス・キリストの誕生を祝う記念日です」
「まぁ、前夜祭である24日と本番である25日に祝うって事よ。イエス・キリストの誕生を祝うって言うのはもう建前ね。
ケーキ屋、玩具屋、その他諸々の商売人が気合を入れる日であると同時に、家族や恋人、友人なんかが破目を外して騒ぐ日って事。まぁ、言ってしまえばお祭ね」
ノエルの説明にイレインが独特の補足をいれる。
二人の説明により疑問が解消されたナイトガンダムは、大きく頷いた後、深々と頭を下げ、お礼を言った。
「だから忍殿は嬉しそうなのですね。恭也殿と過ごす明日や明後日が」
「そうなのよ~。明日は恭也と翠屋で・・・・・深夜まで・・・・・あああああん!!!もぉぉぉおぉぉぉおぉお!!!!」
急に顔を真っ赤にしながら転げまわる忍に、ナイトガンダムを含めた全員が避けるように自然と後ろへと下がった。

「・・・ああ~・・・ごめんなさい。我を忘れたわ・・・・」
『そんな、お客さんの前で』や『なのはちゃん達に聞こえちゃうわ!』などの謎の言葉を叫びながら転げまわる事約1分、
ようやく回りの空気に気付いた忍は我に帰り、大きく咳払いをした後、椅子に座りなおす。
「まぁ、24日は恭也といちゃ・・・じゃなくて翠屋でアルバイトだけど、25日は月村家の皆でクリスマスパーティーと洒落込みましょうか。
今年は騒ぐわよ~。なにせ二人も新しい家族が増えたんだからね~」
ナイトガンダムとイレインを交互に見つめながら嬉しそうに言う忍に、
「・・・・ま・・・まぁ・・・・・とりあえずお礼は言っておくわ・・・・ありが・・とう」
イレインは顔を真っ赤にし、そっぽを向きながら呟くようにお礼を言う。だが
ナイトガンダムは珍しく何かを考え込むように俯き、黙り込んだ。
「・・・ガンダムさん・・・・・どうしたの?」
普段は見せない態度に、すずかは皆を代表して尋ねる。俯いているため、顔を覗き込もうとするが、
それより早くナイトガンダムは顔をあげ、普段通りの笑顔を向ける。
「ああ、ごめん。少し考え事をしていた」
不安そうな表情のすずかに申し訳ない気持ちになりながらも、安心させるために優しく頭を撫でた。


「(・・・・家族・・・か・・・・)」
すずかの頭を撫でながらも、その言葉が心に響く。
記憶喪失である自分には故郷を見つける事もできない。旅をしていた時に色々な場所を目を凝らして見てみたが、
何も感じる事は無く、自分という人物を知る人もいなかった。
だが、そんな根無し草の様な自分を、何の疑いも無く保護してくれ、『家族の暖かさ』を教えてくれたのは月村家の皆だった。
この暖かさに何時までも甘えたいという自分がる。
同時に、異邦人である自分がこのまま甘えて良いのかと考えてしまう。
「(・・・今は考えるのを止めよう。明日や明後日を楽しみにしている皆の気持ちを濁してはいけない。それに、明日は答えが出る)」
病院でのシグナムとの会話から今日で2日、明日で3日になる。彼女がどのような答えを持って現われるか不安になる。
その答えによって、今回の事件の結末が分かるといっても過言ではないからだ。
彼女達が自分達の道を進むか、協力を求め、共に主を救おうとするか。
「(願わくば・・・共に歩む道を選ばん事を・・・・・・)」

  • 翌日

「はぁ!!」
真冬の早朝、ほのかに霧が立ち込める月村家の庭。冷たくも暖かさを持った眩しい朝日が
顔を出そうとしている時間。
ナイトガンダムは日課である剣の鍛錬を行っていた。
吐く息が白く濁り、嫌でも外の寒さを実感させる。だが、ナイトガンダムはそれを感じさせない動きで剣を振るう。
数にして100回目の素振りが終った時。
「朝から熱心ね~」
パジャマ姿でガウンを羽織った忍が、両腕にコーヒーを持って近づいてきた。

「まったく・・・・・此処じゃ戦いなんて・・・・あったわね、最近。でも、常にモンスターが出てきたり、
雌雄を決するライバルがいるわけじゃないんだから、たまには朝寝坊でもしなさい」
「申し訳ありません。ラクロアからの日課でして・・・・・・いただきます」
断りを入れた後、忍が持って来たコーヒーを啜る。
この飲み物を初めて飲んだ時はあまりの苦さに咽てしまった事を憶えている。
このような飲み物をおいしそうに飲んでいる忍を不思議に思いながらも、なれるように努力はしたが結果は惨敗。
それ依頼、コーヒーを飲む時は角砂糖×3とミルクというオプションが欠かせなくなっていた。
コーヒーの温かさが心地よく、砂糖の甘さが体を落ち着かせてくれる。
隣に座ってその光景を満足そうに見ていた忍も自分のブラックコーヒーを一口啜る。
「・・・・そういえば、忍殿はどうしてこんな朝早くに?」
「昨日言っていた翠屋でのアルバイト。今日は特別忙しくなるから仕込から手伝うのよ。
でも目的はもう一つ、ガンダム君に聞きたい事があったから」
両手でカップを包み込むように持ちながら、中のコーヒーを揺らし遊ぶ。
そして再び一口飲んだ後ゆっくりと首を動かし、ナイトガンダムを見据えた。

「・・・・ガンダム君さ・・・・・ずっと・・・この家で暮らさない・・・・・私達の家族として・・・・」
その発言に正直驚く、だが、忍の瞳は真剣だった。
「ガンダム君がこの世界の住人じゃない事は分かっている。我侭だとは理解している。だけど私達にとってガンダム君はもう家族なのよ。
だからね、もし帰る様な事があっても此処にいて欲しい。ラクロアに未練があるのなら別だけど・・・・」

不思議とラクロア・・・・・スダ・ドアカワールドには未練が無かった。故郷が分からないのか原因なのか、帰りたいという気持ちを感じた事は無かった。
もし、サタンガンダムが健在の時にこの世界に来たのなら、一刻も早く帰りたいと願っていただろう。
だが、奴を倒した今その心配も無い。ラクロアにも平和が訪れるだろうし、モンスターも大人しくなる筈。
キャノンやタンク、アムロ達もいるから治安の心配も無いだろう。
だからこそ、忍の申し出は魅力的に感じてしまう。忍の申し出を受け入れたいという自分がいる。

「・・・・忍殿・・・・・私は・・・・(騎士ガンダム」
自然と回答を口にしようとした瞬間、頭の中に声が響き渡る。
その声に聞き覚えがあるナイトガンダムは、いつも持参していた携帯電話を忍に見える様に取り出し、
言断りを入れた後、その場から離れた。
忍は誰かから電話が来たのだろうと思い、軽く手を振り見送る。
そして、怪しまれない程度に距離を取った後、ただ電源が入っている電話を耳に押し付け、
さも会話をしてるかの様に念話に答え始めた。
「(シグナムか・・・・・・答えはでたのか?)」
「(その事についてだ・・・・・申し訳ないが今すぐ、海鳴大学病院まで来て欲しい、無論一人出だ)」
突然の呼び出しに不審感を憶えるが、答えが出たかもれないこと、
そして一人の騎士としてシグナムを信用しているため、その申し出に乗る事にした。
通話が終ったかのように電話を切る真似をしたナイトガンダムは忍の所まで戻り、今から出かけることを伝える。
「何?朝からデート?羨ましくなんかないぞ~!!」
「いえ、そういうわけでは・・・・」
「嘘よ・・・・・・・・出かけるの?」
急に真面目な表情で尋ねる忍に、ナイトガンダムは真実を話してよいのか、迷ってしまう。
こんな時、咄嗟に嘘がつけたらと内心で後悔する。
「いいわよ、何も言わなくて。君がやましい事をする子じゃないって理解してるから、何も聞かない。
だけどこれだけは言わせて、気をつけてね」
その忍の気遣いに、ナイトガンダムは黙って頭を深く下げ答えた。
「ふふっ、いってらっしゃい。気をつけてね」
「はい、いってきます」
忍に背を向け、走り出すナイトガンダム。
この日12月24日、彼にとって、そして闇の書事件に関わる者にとって最も長い一日が始まった。


「シグナム、すまない」
ナイトガンダムが着いた時には、シグナムは既に着いており、病院前のバス停に備え付けられているベンチに腰を下ろしていた。
遅れてきたナイトガンダムを一瞥した後立ち上がり、彼の元へと近づく。
「答えを聞かせる・・・・・だが、場所は私の指定した場所・・・・それが条件だ」
「・・・いいだろう」
了承の言葉を聞いたシグナムは早速転送魔法陣を展開、ナイトガンダムが中に入った事を確認した後、
転送を開始、地球から姿を消した。

  • 無人世界

到着した次元世界は、砂漠に覆われた何も無い世界だった。
二人が本気で剣を交えた世界に酷似してるが、夜なのか太陽の光りが全く無く、
嫌でも肌寒さを感じさせる。
月と思われる惑星の明かりだけが唯一の光となり、二人の姿をてらしていた。
「ここは・・・・・・他の皆はいないのか?」
軽く周りを見渡しながらシグナムに尋ねる。てっきりヴィータなど、他の守護騎士もいるかと思ったのだが、
目視は無論、気配すら感じる事が出来ない。
さすがに不審に思ったナイトガンダムはシグナムに尋ねようとしたその時、
「・・・・愚かな・・・・」
素早く体を向けたシグナムは、突如ナイトガンダム目掛けて砲撃を放ち、彼を吹き飛ばした。
完璧な不意打ちによる攻撃だったため、ナイトガンダムは防御をする暇も無く喰らい、吹き飛ばされた。
「ぐっ・・・がはっ・・・・・・シグナム・・・・・・なぜ・・・・」
「なぜ・・か・・・・・・これを見ればわかるだろう?」
急に光りに包まれるシグナム、徐々に体の形が女性から男性へと変わってゆく。見覚えのある男の姿に
「貴様は・・・・」
痛む体を起し、シグナム『だった』人物を睨みつける。
その殺気が篭った視線を、シグナムに化けていた『仮面の男』は鼻で笑って受け流す。
「ご苦労な事だ・・・のこのことついてきて・・・・・」
「・・・・・貴様・・・・一体何が目的だ!!!」
あの時はシグナムに協力し収集を行っていた。だが、シグナムの様子から彼女達の仲間だとは思えない。
その問いに答える事無く、仮面の男は足元に転送魔法陣を展開、その場を後にしょうとする。
その光景を見たナイトガンダムは、咄嗟に近づこうとするが、ダメージが残った体は満足には動いてくれなかった。
「・・・我らの目的は闇の書の終焉・・・・・貴様の様な生ぬるいやり方では解決などしないのだよ。
後は我々に任せて、君は此処で遊んでいると良い」
突如地面が盛り上がり、雄たけびと共に巨大なミミズの様な生物『赤竜』が数匹現われた。
目標を弱っているナイトガンダムに定めたのだろう、鉤爪が付いた触手を鳴らしながら様子を伺う様にゆっくりと近づいてくる。
「安心しろ・・・全てが終ったら迎えに来る・・・・・そう、全てが終る。今日という日に・・はは、ははははははははは!!!」
勝利を確信したかのように、笑いながら魔法陣と共に消えてゆく仮面の男。
呼び止めようとナイトガンダムは声を荒げるが、その声は獲物を前にした赤竜の咆哮に打ち消されてしまった。

  • 数時間後

:海鳴大学病院

出会いは突然だった。すべては『アポ無しで行ってビックリさせてあげましょ?』という提案から始まった。
なのはとフェイトははやてに会うのは初めてだった。自分達は初めてだから連絡した方がいいのではという
フェイトの提案をアリサは
「だからこそいいのよ!事前に連絡なんかしたら面白みにかけるってものよ!」
その意見をバッサリと切り捨てる。
そのアリサの提案に何気なく乗った事で起こったシグナム達との出会い。
突然の出会いになのはとフェイトは戸惑い、シグナムとシャマルは警戒を強くし、
ヴィータは遠慮なく二人をにらみ付ける。
互いにギクシャクしながらも、なるべく普段通りにお見舞いをし、普段通りに別れの挨拶をし、帰宅するが
なのはとフェイトは残った、話をするために。だが、
「おりゃああ!!!」
彼女達を待っていたのは、ヴィータによるアイゼンの洗礼だった。

シグナムがとめる間も無くその打撃はなのはに直撃、爆発を起し辺りを炎で包む。

ヴィータは冷静さを失っていた。もうすぐ闇の書が完成し、はやてが助かる。
それなのに、あいつらは何食わぬ顔でやってきた。
あいつらは管理局の人間、はやてを封印しようとし、はやてを助けようとする自分達の邪魔をしてくる悪魔の様な奴ら。
だからこそ呼んでやった。自分の攻撃を受けて尚、何事も無く炎の中から現われる白い魔道師に向かって
「・・・悪魔め・・・・・」
「・・・・・悪魔で・・いいよ・・・・」
その言葉を悲しげな表情で受け止めたなのははゆっくりと左腕を肩の高さまで上げ、セットアップしたレイジングハートを掴む。そして
「悪魔らしいやり方で・・・話を聞いて貰うから!!!」
ヴィータの純粋な殺気に耐えるかのように唇をかみ締め、足を踏ん張る。
そして臆する事無く決意を込めた瞳でヴィータを見据え、レイジングハートの切っ先をヴィータに向けた。
その光景に、フェイトもデバイスをセットアップしようとする。だが、
「ヴィータ!!よせ!!!」
聞いている側の耳が痛くなる程の声でシグナムが叫ぶ。
その声にフェイトは驚き、なのはとヴィータ、シャマルは自然とシグナムの方へと顔を向ける。
「あぁ!?邪魔すんな!!シグナム!!こいつらが来たって事はガンダムの野朗がチクッたって事だ!!
正体が知られたからにはなぁ、手遅れになる前にさっさと口封じるぞ!!」
シグナムを睨みつけ、一方的に言い放った後、再びなのはに攻撃を行なうため地面を蹴りアイゼンを振るう。
その攻撃をなのははラウンドシールドで防ごうとレイジングハートを構えようとする。だが、

                     ガキッ!!

「・・・・・シグナム・・・てめぇ・・・・・」
ヴィータのアイゼンを防いだのはなのはの防御魔法ではなく、シグナムのレヴァンティンだった。
シグナムを仲間ではなく、一人の敵として睨みつけ、ヴィータはアイゼンに力を込める。
その純粋に相手を叩きのめそうとする攻撃に、
「いい・・・加減に・・・しろ!!!」
シグナムは鍔せりあい状態のレヴァンティンを切り払い、ヴィータを吹き飛ばした。
「っ!てめぇ!!裏切る気か!!はやてがどうなってもいいんかよ!!!」
「冷静になれといっている!!高町なのは、正直に答えてくれ。お前達は今日なぜ此処へ来た」
突然の質問に、なのはは戸惑いながらもレイジングハートを下ろし、正直に答える。
「えっ、それは・・・・・はやてちゃんのお見舞いにです」
「そうか。テスタロッサ、八神はやてが我らの主だと何時知った?」
今度はフェイトへと質問を投げかける。
なのは同様、突然の問いに戸惑いながらも、しっかりとシグナムの瞳を見据え答える。
「はやてが闇の書の主だと知ったのは、今・・・・・あの病室でです。はやての事は
私もなのはも、すずかから聞きました。写真で顔は見た事はありますが、直接出合ったのは初めてです。本当です」
「嘘つくんじゃねぇ!!ガンダムから聞いたんだ(それはないわ。ヴィータちゃん」
話にならないとばかりに、頭ごなしから否定するヴィータを、今度はシャマルが止める。
大きく舌打ちをし、シャマルを睨みつけるが、その瞳を正面から見つめ返しながら、シャマルはゆっくりと話し出す。
「多分・・いえ、間違いなくなのはちゃんの言う通りよ。今周囲を検索してみたけど、魔力反応が出ない以上、
他に局員がいるとは思えないわ。私達の事を知っていたのなら、それなりの準備をしてくる筈よ。
それに二人が私達を見たときの顔、とても驚いていた。いくら強くても、咄嗟に嘘がつけるような器用な子達じゃないわよ」
「なっ・・・・でも・・・・・」
ようやく頭が冷えてきたのか、殺気が徐々に消え困惑した表情になる。
それでも納得できないのか、自然とアイゼンを下ろしながらも、困惑した表情で食いつく。
そんな困惑するヴィータに、なのはとフェイトは一度顔を見合わせた後、戦闘の意思がない事を示すため
展開していたデバイスを待機モードにし、シャマルの説明に乗る様に話し始める。
「本当だよ、ヴィータちゃん。私達本当にはやてちゃんのお見舞いに来ただけ。ヴィータちゃん達がいるなんて知らなかった」
「なのはの言うとおりです。それよりシグナム、ヴィータが言っていたガンダムの事・・・・聞かせてもらえませんか?」
二人もまた、ヴィータの口からガンダムの名が出たことが気になっていた。
彼女の口ぶりから、ナイトガンダムはシグナム達とはやての関係を知っていた事になるからだ。
「ああ・・・・今日が期限でもあるからな・・・・教えよう」
無論、騎士ガンダムの事を疑っていたわけではない。だがなのはとフェイトの様子に安心感を得たシグナムは、
自然と微笑みながら話し出そうとした・・・その時。
「なっ!?魔力反応が!?突然」
突如強力な魔力反応が現れた事をシャマルはいち早く感じ取る。同時に
「っ!きゃ!?」
「なっ!?バインド!?」
突如出現した蒼い光りの帯がなのはとフェイトの体を拘束した。
よほど強力なバインドなのか、必至に解こうとするが、ただもがくだけに終ってしまう。
「な・・・・なんなんだよいきなり!?」
拘束されたなのは達の姿に、ヴィータは唖然としながらも、グラーフアイゼンを握りるてに力を込め、周囲を警戒する。
シグナムもまたレヴァンティンを取り出し、騎士甲冑を身に着ける。
なのはとフェイトを拘束したとなると、彼女達の味方である管理局である可能性は無い。
ならば自分達の味方。だが、そんな人物など・・・・・・心当たりは奴しかいない。
「出て来い!!貴様だという事は分かっている!!!」
響き渡るシグナムの怒声。すると、それに反応するかのように上空の空間が歪み、
仮面の男がゆっくりとその姿を現した。
「やはり気が付いていたか・・・・・・だが、私の姿を見つけ出す事は出来なかったようだな」
シグナム達を見下ろしながら淡々と話す仮面の男。だが、当のシグナム達は話を聞いてはいなかった。
彼女達はただ見ていた。仮面の男が脇に抱えている『者』を。なのはとフェイトは唖然とし、シグナムとヴィータは怒りのあまり歯を噛み砕かん勢いでかみ締める。
シャマルは両手で顔を覆いながら、へたりこむ。そして自然と大声で叫んだ。その『者』の名前を。
「ザ・・・・・ザフィーラ!!!」
その名でようやく気付いたのか、仮面の男は注目の的にされているザフィーラの襟首を掴み、見せ付けるように前に差し出す。
一切抵抗せず、仮面の男のされるがままにされるザフィーラ。もし死んでいたのなら自分達という存在は死体となって居座る事は出来ない。
だからこそ生きている筈。それでも四肢をだらけさせ、血を屋上の床に滴り落としているその姿に、怒りと隠す事などできない。
「ああ・・・・収集の帰りだったのだろう。此処に来る時に偶然出会ってな・・・・・しつこかったので黙らせた・・・・・ほら」
まるでゴミでも投げるかの様に血だらけのザフィーラをシャマルに向かって放り投げる。
屋上の床に叩きつけられ、一度大きくバウンドした後転がり、シャマルの目の前でようやく止まる。
「ザフィーラ!しっかりして!!」
大声でザフィーラの名前を叫ぶが、返事はおろかピクリとも動かない。
仲間の無残な姿に、シャマルは我を忘れそうになりながらもしゃがみこみ、回復魔法を掛ける為に右手を翳す。
「・・・てめぇ・・・・・・・そこを動くなぁ!!!!」
カートリッジをロードし、アイゼンをラケーテンフォルムへと変形、
ロケットブースターの遠心力を使い、回転しながら仮面の男目掛けて突撃する。
『あいつをぶち殺す』今のヴィータの行動力はそれだけだった。
仲間をあのような姿にしたあいつを許せない・・・・・否、許すという事など誰が出来ようか。
シグナムもまた、レヴァンティンのカートリッジをロード、剣身に炎を纏わせ、ヴィータに続く。
奴の強さは理解している。だが、自分とヴィータの同時攻撃なら十分倒せる相手。それで、仮面の男は防御などせず、腕を組んだまま
自分達を迎え入れるかの様にじっと佇んでいた。
「へっ!?余裕のつもりか!?それともビビッて動く事も出来ねぇか!?なら、じっとしてな!骨ばっきばきにしてやらぁ!!!」
獰猛に笑いながら叫ぶヴィータにも、仮面の男は一切アクションを起こさない。
ヴィータと違い多少冷静さが残っているシグナムは、そんな仮面の男の態度に不審感を感じる。
そもそも、なぜ奴はザフィーラを返したのだろうか?
邪魔なら消すなり、拘束するなりすればいい。もし、何かの理由で殺す事ができないのなら、わざわざ自分達に見せ付けるように返すなど変だ。
まるで自分達に冷静さを失わせるかのような・・・・・・・・
「っ!シャマル!!!離れろ!!!」
「えっ?」
突然のシグナムの叫びに、回復魔法を施していたシャマルは自然と上空にいるシグナムへと顔を向ける。

                        ザシュ!

ザフィーラの手がシャマルの胸を貫いたのは同時だった。
何かが抜け落ちた感覚がシャマルを襲う。
口をパクパクさせるが、言葉を発する事ができない。それでも力を振り絞り瞳をザフィーラの方へと向けるが、
其処には、ザフィーラはいなかった。
「・・・・・・収集完了・・・・・・もう消えろ」
仮面の男は左腕に闇の書を出現させ、貫いた右腕の掌にあるリンカーコアから魔力収集を開始する。
今までシグナム達がやってきた様な魔力のみの収集ではなく、リンカーコアそのもを収集する行為。
「安心しろ、本物は一足先に収集した・・・・・・安心するがいい・・・・」
「・・・・が・・・ぁ・・あ・あ・・あああああああああああああああああ!!!!!」
ようやく声を出す事ができたが、体を襲う喪失感により、叫ぶ事しか出来ない。
体は足元から徐々に粒子となり消えて行き、数秒後にはシャマルという存在はこの世から完全に消失した。
「シャマ・・・・ル・・・・・・シャマル!!!」
仮面の男が張ったバリアを破壊寸前まで貶めながらも、シャマルの消失にヴィータは攻撃の手を緩めてしまう。
その隙を仮面の男は見逃さなかった。
「・・・馬鹿が・・・・」
見下した様に呟いた後、ヴィータのわき腹目掛けて容赦なく蹴りを放つ。
直撃した瞬間、何かが折れる生々しい音と共にものすごいスピードで地面へと落下する。
「ヴィータ!!」
地面に叩きつけられる瞬間、シグナムが咄嗟にヴィータを抱きとめるが、勢いは殺しきる事が出来ずに、地面へと叩きつけられた。
だが、仮面の男の攻撃は緩まない
「・・・・・スティンガーブレード・・・・・・」
上空にいる仮面の男は、ミッド式の魔法陣を展開。周囲にナイフサイズの魔力刃を多数形勢する。その数100以上。
ザフィーラと違い防御しきれないと感じたシグナムは、気絶しているヴィータを抱え避けようとする。だが、
「ふふふっ・・・・いいのか?この魔法は物理破壊の殺傷設定・・・・・お前が避ければ下の病室・・・・お前達の主もたたではすまないぞ・・・」
シャマルを消したもう一人の仮面の男の声に、シグナムは地面を蹴ろうとした足を止める。
そして、一度射殺さんばかりに上空の仮面の男をにらみつけた後、ヴィータを抱きしめパンツァーガイストを展開。その直後、
「エクスキュージョン・シフト」
一本でも十分な殺傷設定のある魔力刃が、一斉にシグナムへと降り注いだ。

「ヴィータちゃん!!!シグナムさん!!!」
「・・・酷い・・・・」
拘束されているなのはトフェイトはただ見ている事しかできなかった。
全ての魔力刃が、シグナムへと降り注ぎ、爆音と煙が辺りに立ち込める。
そして煙が晴れ、彼女達が見たのは、血にまみれ殆ど原型を留めいていないバリアジャケットを着たシグナムが、
ヴィータを抱きしめ、ただ蹲っている姿だった。
「・・・生きているか・・・・」
「こいつらは無駄に丈夫だ・・・・・・それに餌を殺すわけにはいかないだろう・・・・・」
一度シグナム達の姿を確認した地上にいる仮面の男は、ゆっくりとなのはへと近づく。
先ほどのシグナム達の末路を間近に目撃したため、恐怖に顔を引きつらせながらも、バインドを解こうと必至にもがく。
だが、バインドを解くより早く、なのはの元へとたどり着いた仮面の男はなのはのバリアジャケットの襟をつかみ、
無造作にフェイト目掛けて投げはなった。
バリアジャケットの基本防御性能のためか、痛みを感じる事はなかったが、これからどうなってしまうのかという恐怖が彼女達を襲う。
「安心しろ・・・・・お前達にはまだ仕事が残っている・・・・・」
右手からカードを取り出し、二人に向かって投げはなつ。
すると二人を囲む様に壁が現われ、閉じ込めるように二人を囲んでゆく。
「クリスタルゲージ・・・・・お前達ならバインドを含め10分程度で解けるだろう・・・・・まぁ、無理でも10分で全てが解けるように設定はしてある」
「その後、拘束を解かれたお前達には、時間稼ぎという仕事が待ってる・・・・・」

一方的に話す仮面の男達になのは達は目的を聞こうと叫ぶが、防音性なのか、無視を決め込んでいるのか、
仮面の男達は何も答えることなく、仮面の男の一人が二人が入ったクリスタルゲージを上空へと運んでいく。そして
もう一人の仮面の男は蹲っているシグナムへと近づき、一瞥した後、闇の書を出現させ右腕を突き出す。

「・・・・・お前達も・・・もう狂った運命に振り回されることもない。安心して消えるがいい・・・・・」



「・・・・終ったようだな・・・・・」
シグナムとヴィータが光となって消えて行く姿を確認した仮面の男は、上空にクリスタルゲージを固定した後、
閉じ込められているなのは達の方へと顔を向ける。
「お前達の仲間・・・・・騎士ガンダムは闇の書の主が八神はやてだと偶然とは言えいち早く気付いていた。
だが、奴はこれを公表しようとはしなかった。奴は闇の書が壊れている事をシグナムに話し、奴らが納得する時間を与えた。
あのプログラム達は主のことを本当に慕っていたのだろう。奴らはお前達に協力を申し出るつもりだった。だが、
主を救ったとして何になる?所詮暴走して破壊の限りを尽くし、また転送するだけだ。愚かで甘い考え。
まぁ、奴は今頃赤竜と遊んでいる事だろう・・・・・あの腕なら死ぬ事はあるまい」
腿に付けられているカードホルダから一枚のカードを取り出し、それで顔を隠した後、拭うように右へと動かす。
「だからこそ、我々が行うのだ・・・・・闇の書の永久封印を・・・・・・」
高町なのはへと姿を変えた仮面の男は、話は終わりとばかりに背中を向け、屋上へと向かう。
其処には、フェイトに姿を変えたもう一人の仮面の男、そして、転送魔法陣から出てきた八神はやてが寒そうに体を震わせていた。

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最終更新:2008年11月22日 00:34