魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者

        第11話

  • アースラ内救護室

疲れてはいたが、不思議と眠気は訪れなかった。
2~3度寝返りを打ったが一向に眠気が訪れないため、仕方なく体の位置を仰向けにし、リンディの到着を待つ。
途中大きな音がしたため自然と首を嵌め殺しの窓の方に向けると、夜の様にほの暗かった景色か金属で出来た壁に変わっていた。
おそらく本局内のドックだろうと結論付けたナイトガンダムは首を戻し、天上を見据える。
「(・・・・今更だが・・・・ラクロアではベッドで寝る事など、ほとんど無かったな)」

ラクロアでの生活は9割、いや10割が旅と言っても過言ではなかった。
湖でフラウ姫を助けそのまま城へ行き、そこでサタンガンダムの存在を知り討伐の旅に出た。
旅ゆえ、殆どを野宿で過し、たまに止まる宿でも値段からか、布団が硬かった事を思い出す。
それに比べ、月村家で自分に提供された部屋のベッドは逆に居心地が良すぎ、当初は全く眠れなかった。
「あの時は隠れで床で寝ていたなんで・・・言えはしないな・・・・」
今ではその様な事は無く、ふかふかのベッドの感触を味わいながら眠る事が出来るようになった。
自分としては凄い成果だと思う。(アリサには猛烈に笑われたが)
今寝かされているベッドも、月村家の物に負けず劣らず心地よい。それでも眠気が襲ってこないとなると、
体質によるものか、見知らぬ部屋だという無意識の警戒心によるものだろう。諦めるしかない。

「・・・・昔の私も・・・そうだったのだろうか・・・・」
自分という存在がラクロアに何時からいたのか、正直今でも分からない。
気が付いたら焼け野原の真ん中にいた。それ以前の記憶など全く持ち合わせていなかった。
あの時は景色、建物、食べ物に関しても、見る物全てが新鮮だった。どれも知らない物ばかり。
剣の腕に関しては記憶には無いものの、体に染み付いていたため剣士だったのかという予想しか出来ない。
まさに自分の事は何一つ知らない。だが、この世界に来る切っ掛けとなり、三種の神器の力を借りてどうにか倒す事ができた強敵、
『サタンガンダム』に関しては別だった。奴の名前は、当時はレビル王からはじめて聞かされたため、記憶になかった。
だが、奴の姿を見た瞬間、邪悪な気配と途轍もない魔力に圧倒されはしたものの、初めてとは思えなかった。
「・・・・奴に・・・会った事があるのか・・・・・」
ならあの戦いの時、奴が自分に何かを言ってくる筈。もし、以前の自分か奴に手を貸していたのなら尚更だ。
だが、奴は自分を『自らの城に潜入してきた敵』としか見ていなかった。自分を全く知らなかった。
「・・・・知っていたのは私だけ・・・・・ならば私は・・・・・やめよう」
軽く頭を振り、考える事をやめる。手掛りがない以上何を考えても仮説で終ってしまうからだ。
「お待たせ~」
そのタイミングを待っていたかのように扉が開き、トレイに軽食をもったリンディが入ってきた。


リンディが持って来たサンドイッチとスープの軽食を、ナイトガンダムはお礼を言った後黙々と食べた。
自分でもこれほど空腹だった事に驚きながらも全て平らげ、スープを飲み干す。
その光景を満足げに見つめていたリンディに改めてお礼を言った後、今回の戦闘に関しての報告を事細かに説明した。

フェイトを人質に取った仮面の男。
守護騎士達は主に内密に収集活動を行っている事。
闇の書の主は争いを望んでいない事。
そして、闇の書の力が主に必要不可欠なこと。
「なるほどね・・・・・それなら、彼女達の行動も納得がいくわね・・・・」
10年前の闇の書事件の時の彼女達と比べると行動が積極的でない事、人間に対してはリンカーコアから魔力を吸収するのみに留めている事、
そしてアルフとナイトガンダムの報告から纏めると、今回の主は闇の書の完成を望んではいない、その力を欲してはいない、これはほぼ確定と言って良いだろう。
それなのに彼らは闇の書の完成を望み、魔力を集めている。
「闇の書の力が主に必要不可欠ね・・・確かにガンダム君の言う通りね・・・そうとしか考えられない」
「はい。ですが、主が望んでいないのに、なぜ彼らは集めるのでしょうか・・・・そういえば、
闇の書が完成したら絶大な力が手に入るとしか聞いてませんが、その力に他に使い道があるのでは?」
それなら彼女達の行動にも納得がいく。絶大な力といっても、三種の神器のような、ただ自分の力を底上げするだけではない筈。だが
「いえ・・・・それは無いわ。無限書庫・・・ああ、とても大きな図書室と考えてくれて良いわ。ユーノ君がね、そこで闇の書に
ついて調べてくれてるの。さっき途中結果を報告してくれたんだけどね・・・・」
躊躇するように言葉を詰まらせた後、リンディは報告通りに話し始めた。

闇の書の本来の姿、使い道。そして、持ち主に対する性質の変化。

「一定期間、魔力の収集が無いと、持ち主の魔力や資質を侵食し始めるのよ」
「なら、彼女達の行動も理解できます。主を救うためには十分な理由です」
それなら、自らの誇りを踏みにじってまで魔力を集める彼女達の行動も理解できる。だが、
「だけどね、もし完成したらそれこそ主の命を縮めるのよ。完成した闇の書は持ち主の魔力を際限なく使わせる。
無差別破壊の為に。だからね、ここで疑問が出るのよ。なぜ彼女達はあえて完成を急がせるのか?
確かに一定期間、魔力の収集が無いと、持ち主の魔力や資質を侵食し始める。だけど完成させたら結果は同じ、矛盾している」
たしかにそれでは矛盾している。間を置いて収集するならまだしも、シグナムの様子から、闇の書の完成を急いでいたように見える。
これでは逆に主の命を縮めることにる。だが、剣を交えたからこそ分かる。シグナムが嘘をついてはいないと。心から主を救おうとしていることを。
「・・・リンディ殿、闇の書の力というのは、本当に無差別破壊のみにしか使えないのでしょうか?」
「ええ、局のデータに残っている物や、ユーノ君が調べてくれた昔の物まで確認したけれど、それ以外で使われた事はないわ。
主に関しても、完成後、全員が・・・・・・」
「その時、シグナム・・・・守護騎士達はどうしていました?やはり主の護衛を?」
ナイトガンダムの質問に、リンディはハッとする。
そういえばそうだった、自分達は『闇の書』そのもに関しては徹底的に調べているのに対し、守護騎士に関しては殆ど調べを進めいていない。
『主を守るための騎士』それで十分だと思っていた。
「ちょっと待って、前回の事件なら今すぐ調べられるわ」
リンディは早速、端末を取り出し前回の闇の書事件のデータを漁る。
程なくして、目的である『闇の書完成後の守護騎士』についての報告書を発見、その内容にただ呆然とする。
「・・・・・前回の事件、彼女達は主によって『収集』されているわ・・・・・・彼女達はリンカーコアからなる『魔法生命体』
『収集』されたとなると・・・・消滅、人間で言うと死と同じ事ね」
「ならば・・・・・まさかだとは思いますが、シグナム達は闇の書の完成が主に齎す本当の影響を知らないのでは?」
「まさか」と声を出し否定しようとするが、リンディはその言葉を咄嗟に飲み込む。

そう、よく考えてみれば可笑しい。なぜ闇の書事件は今まで同じ様な末路を辿ったのだろうか?
確かに効力からして主に逃げ道は存在しない。だが、今までの主は収集を率先して行っていた。正に自滅である。
魔力の収集に関しても『一定期間』であり、直に収集が滞ると侵食されるわけではない。いっそ、ある程度集め、
繰り返し使ったほうが効率としてはいい筈。だが、主達は完成を急いだ。
(守護騎士達を戦力として使用したケースもあるか、結果的には完成させている)
闇の書に操られての行為かと思ったが、そうなると今回のケースは当てはまらない。
それ以前になぜ守護騎士達は主を侵食する事を話さなかったのか?確かに完成させるために彼女達が収集されるケースもある、
だが全てではない。だからこそ末路を知ってる筈。
主に使える守護騎士である以上、いかに外道な主でもその事を言わないのは可笑しい。ならなぜ闇の書の長所のみを説明したのだろうか?
考えられる可能性は一つしかない。守護騎士達がその事を忘れているという事。
そもそも闇の書自体、悪意のある改変が原因で恐ろしいデバイスと化している。その影響が守護騎士達に反映されていても可笑しくはない。

自然とリンディは目を閉じ腕を組み、自分の中で考えをまとめていく。
そして自分の中の考えがまとまったのか、ゆっくりと瞳を開け、ナイトガンダムを見据える。
「・・・・・確かに、主を想っている彼女達が、早期に闇の書を完成させようとするのは可笑しいわね。
本当に影響を知らずに、絶大な力が手に入るとしか信じていない。ガンダム君の考え・・・・間違ってはいないかも知れない。
とにかく、今までの守護騎士達についても調べてもらうように頼んでみるわ。ああ、ガンダム君はすずかさんの家に戻らないとね。
あと、君の鎧は治しておいたわ。傷だけだったからアースラの設備でもそれ程時間は掛からなかったわ」
その好意に早速お礼を言おうとしたが、『すずかさんの家』という単語を聞いた直後、ナイトガンダムは目に見えて慌てた。
「リ・・・リンディ殿!!私はどの位眠っていましたか!!?今は何時でですか!!!何時ですか!!!朝ですか!!?」
「ふふっ、落ち着いて。あの戦闘から一日しか経っていないわ。すずかさんの家にも、私の家に泊まる事になったって連絡は入れてあるから大丈夫よ」
その言葉に心底ほっとするナイトガンダムに、リンディは悪いとは思いながらもつい笑ってしまう。
その笑みに、ナイトガンダムもまた、目に見えて慌てた自分の恥を隠すかのように俯いた。
「さて、私は行くわね。帰るときは本局の転送装置を使うと良いわ。あと、よかったらフェイトさんの様子を見てあげて。
君にお礼がいいたいって言ってたわ・・・・あと、これだけは言わせて、本当にありがとう、フェイトさんを助けてくれて」
笑顔で手を振りながら退出するリンディを見送ったナイトガンダムは、一度大きく背伸びをした後ベッドから下りる。
「・・・・・新品のようだ・・・・・感謝しなくては」
そして、近くの机に飾られる様に置かれた自分の鎧を一度関心の瞳で見つめた後装着し、部屋を後にした。

  • アースラ内救護室

「よかったよ、命に別条が無くて」
「・・・・・うん・・・・・・」
心から安心するナイトガンダムとは裏腹に、フェイトの表情は重病人ではないかというほど曇っていた。
その表情にナイトガンダムは何か言葉をかけようとするが、それより早くフェイトは言葉を吐き出した。
「私・・・・役に立てなかった・・・・騙されて・・・・捕まって・・・・リンディ提督が優しい言葉をかけてくれたけど、
私に・・・・・・そんな言葉をかけてもらう資格なんて・・・・・無い!!!」
シーツを握り締め、吐き出す言葉にナイトガンダムは沈黙で答える。
フェイトもまた、感情に任せて吐き出した事に、今になって後悔した。
「(私・・・・何を言っているのだろう・・・・・・まるでガンダムを攻めるかのように言葉を吐き出して。
彼は自分を助けてくれて・・・・・心配してくれるのに・・・・・・最低だ)」
静まりかえる病室が心を重くする。もう何も言いたくは無かった。一人になりたかった・・・・否、消えてしまいたかった。今すぐこの場から。
「・・・・・フェイト・・・・・・」
名前を呼ばれただけで体をびくつかせてしまう。
いつもよりナイトガンダムの声は重かった。こんな自分に怒っているのだろう。当然だと思う。
だからこそ怖くて顔を向ける事が出来なかった。自然と体をこわばらせる。そして

                  ビシッ!

平手にしたナイトガンダムの腕が、フェイトの頭に軽く打ち付けられた。
俗に言う『空手チヨップ』を受けたフェイトは、呆気に取られながらも、顔をガンダムの方へと向ける。
其処にいたのは、フェイトが予想していた怒った表情をしたナイトガンダムではなく、
いつもの笑顔で優しく自分を見据えるナイトガンダムだった。
「フェイト、自分を責めてはいけないよ。誰にでも失敗はある。誰にでもだ。だからこそ、今回の失敗を次の教訓にすればいい」
「・・・・でも・・・・・」
自分の中で納得が出来ないのか、フェイトは再び俯こうとする。だが、それより早くナイトガンダムの掌が、彼女の頭に優しく置かれた。
「それに、失敗をしない人なんていない。私やクロノ、リンディ殿さえ失敗はする。
失敗というのはね、物事を行ないう時には必ず体験する事なんだ。問題は経験した失敗に押しつぶされるか、
その失敗を今後の糧にするかだよ。私は、フェイトになら出来ると信じているよ」
「・・・ガンダム・・・・・」
「それに、君はリンディ殿だけじゃない・・・・なのはやアルフ、色々な人に甘えていい。君は確かに優秀な魔道師だ。
だけど、それ以前に君は子供なんだ。甘える事に資格なんて必要ないよ」
優しく頭を撫でられながら語りかけるナイトガンダムに、フェイトは恥ずかしいと思いながらも、暖かい気持ちに包まれる。
だからこそお願いしてみようと思う。恥ずかしいけど、早速実行に移してみようと思う。
「ガンダム・・・・その・・・・お願いがあるんだけど・・・・・」
やはり恥ずかしい。言葉が出ない。だけど・・・・・やってもらいたかった。だからこそ勇気を振り絞った。
「・・もうちょっと・・・撫でて・・・・ほしいな・・・・・」
顔を真っ赤にし、俯くフェイトに、
「かしこまりました。お姫様」
ナイトガンダムは一度恭しく頭を垂れた後、再びフェイトの頭を撫で始めた。



これで本局へ来るのは3度目、さすがにナイトガンダムの存在に慣れたのか、すれ違う局員からの目線も珍しい物を見るような瞳で
自分を見るような事は少なくなってきた。
後は特に用事は無いため、真っ直ぐに転送装置室に向かうナイトガンダム。すると、後ろから聞き覚えのある声に呼び止められた。
声からしてクロノだろうと思い、後ろを振り向く。案の定声の主はクロノだった。だが、彼の後ろには見覚えの無い女性が二人立っていた。
「(・・・・・・顔が似てる、双子か?・・・・それに獣の耳と尻尾・・・・使い魔か?)」
クロノには使い魔はいない筈、そうなると彼の知り合いの使い魔だろう。だが、ナイトガンダムはそれ以前に気になる事があった。
双子の使い間の内、髪が短い方の女性が、一瞬ではあるが自分に殺気を放った事に。
「クロノ・・・・彼女達は?」
「ああ、紹介するよ。僕の恩師の使い魔で、僕の魔法の先生でもある」
「リーゼアリアよ」
「リーゼロッテだぞ~!」
優しく微笑みながら自己紹介をするリーゼアリアと、無邪気に微笑みながら自己紹介をするリーゼロッテ、
数年来の友の様に気さくに挨拶をする二人に、ナイトガンダムは先ほどの殺気はただの気のせいとして処理する事にした。
「クロノの先生でしたか。私は(知ってるよ」
自分も膝をつき、頭を垂れ自己紹介をしようとするが、先ほど明るい声で自己紹介をしたリーゼロッテに止められる。
「異世界『ラクロア』から飛ばされた次元漂流者にして闇の書事件の協力者にしてクロノの友人である騎士、ガンダム君、噂は聞いてるよ。
今じゃ本局じゃちょっとした・・・・かなりだね、有名人だしね」
『有名人』と聞かされ、恥ずかしい気持ちになる。ある程度は覚悟してはいたが面と向かって言われるとその覚悟も簡単に折れてしまう。
「あ~も~照れちゃって、可愛いね~、クロノと一緒に可愛がってやりたいよ~」
「ロッテ、そんなにからかわないでくれ・・・・・帰るのかい?」
クロノのフォローに内心で感謝をし、これから月村家へ帰る事を簡潔に伝える。
なにか用事があれば少しの時間だか手伝うと申し出たが、クロノはその好意を直に断った。
「気持ちはありがたいけどね。君はなのは同様、ここの事を秘密にしている。君が世話になっている家に何時までも帰らないのは不味いな。何か進展があったら
連絡するから、今はゆっくり休んで来ると良いよ。アリア、ロッテ、僕達は急ごう。立ち話をしている時間も、今は無駄には出来ないからね」

何も知らない人から見れば、クロノがさっさとナイトガンダムの元から去るかのように行動しているかのように見える。
だが、実際にはそうではなかった。これにはクロノなりのナイトガンダムへの気遣いが含まれていた。
「(悪いね。でも、この二人と一緒だと別の意味で君が危険なんだよ)」
これ以上会話を続けると、ロッテあたりがナイトガンダムに何をするか(十中八九悪戯だろうが)分かった物ではない。
彼はとにかく真面目だ。彼女の悪さの良い鴨になる事は間違いない。
過ちは繰り返してはならない・・・・・生贄はユーノだけで十分だ。
だからこそ、彼には速やかに休息を与えてあげようと考えたクロノは二人を急かし、その場を立ち去ろうとする。
有無を言わさず歩き出すクロノに、リーゼ姉妹も一度手を振った後ナイトガンダムを見るのを止め歩き出した。
本当ならこれで終わり、クロノ達はエイミィの元へ向かい、ナイトガンダムは転送装置室に向かう筈。だが、
「あっ、クロノ、一つだけいいかい?今回の事件に関してなんだけど」
ナイトガンダムはクロノを呼び止め、リンディの話した闇の書事件の自分なりの予想を簡潔に話した。
一応リンディも納得した予想だったため、現場のリーダーでもある彼にも聞いてもらいという彼なりの配慮。
要点だけを話し、詳しい事はリンディに聞くように言った後、ナイトガンダムは一度頭を下げ、今度こそ転送装置室へと向かった。

「・・・・・・ねぇ、クロノ。彼の意見、どう思う?」
「簡潔に聞いただけだけど、納得出来る部分が多い・・・・・一度母さん・・・・提督に詳しく聞いてみるよ」
「そっか~」と天上を見ながら呟いたロッテは、ゆっくりとアリアの方へと顔を向け彼女の瞳を見据える。
「(計画を早める必要・・・・ありそうかもね・・・・・・)」
「(あの騎士・・・・実力もさることならがら頭も切れる。まったく、厄介なお客さんを連れてきたよ、クロノ達も)」
クロノの後ろを歩きながら念話で会話をする二人。当然クロノに聞かれては不味い内容。だが、ロッテは隠す事無く顔を顰める。
時より通りかかる局員が彼女の表情に体をびくつかせながらも、その表情を崩す事は無かった。
「(ロッテ、感情丸出しはやめなって・・・・・クロノに気付かれるよ。さっきも殺気を出していたでしょ?)」
「(ああ、ごめん。あの時の戦闘を思い出すと・・・・・・ついね。)」
あの戦闘のことを思い出すと否が応でも腹が立つ。あの一撃のダメージは今でも完全には抜け切れていない。
もし此処に自分達しかいなかったら遠慮なく攻撃を加えていただろう。
「(でもさ、あいつ正直厄介だよ。下手すれば父様が望む結果を滅茶苦茶にしかねない・・・・・消す?)」

確かにロッテの言う通りだと思う。正直、今回の闇の書事件を担当するアースラのクルーは自分達の思い通りに動いてくれている。
重要なポジションにいる人物は友や知り合いや弟子で構成されており、主戦力も執務官という立場からクロノが満足に動けない以上、
力はあるが、実戦経験に乏しいあの子供達だけとなる。確かにあの二人は素質があり下手な魔道師よりは戦力にはなるが所詮それだけ。
自分達では行動はせずにクロノ達の指示に従うだけの所詮経験が浅いお子様、どうとでもなる。いや、民間人が混じっている以上、クロノ達も行動を自首する筈。
後は表向き強力体制を取り、裏では仮面の男となって活動すればいい。
システムのクラッキングやリンカーコアの収集など、今の所全て上手くいっている・・・・いや、いっていた。

「(私もロッテと同じ考えを持っていたわ。あの騎士が話した『闇の書事件の予想』当事者じゃないかという位に当たっている。
だけどね、あのプログラム達がその事を『はいそうですか』って信じると思う?大方あのトンカチが『ふざけんじゃねぇ!!!』って叫びながら
襲い掛かってくるのがオチよ・・・・・ある意味では可哀想な連中・・・・いえ、哀れね)」
アリアは正直、守護騎士『ヴォルケンリッター』には多少だが同情の念を抱いていた。
主を救うために死に物狂いになりながらも、主を消して救う事が出来ない彼女達に。
慕う主を知らずに自分達の手で死に追いやっている彼女達に。
使い魔として生きている自分達も、主である父様には絶大の信頼と忠誠を誓っている。
だからこそ、あの連中の気持ちも分からなくはないし同情もしたくなるが、所詮それだけ。救ってやろうという気持ちは微塵も持ち合わせていない。

「(な~る、確かにアリアの言うとおりだ。それなら、特に計画の変更は無しって事で)クロノ!さっさと行くよ!」
突然大声と友に背中をたたかれた事に、クロノは遠慮なく顔を顰めるが、ロッテは笑顔でそれを受け流し、彼の肩を押す。
その光景を「やれやれ」と言いたそうな顔で見ていたアリアも、二人に続くように歩みを速めた。


今日はつくづく人に会う日だとナイトガンダムは思う。

「あっ、ガンダムさんだ~!!!」
転送装置室に到着し、いざ中に入ろうとした所で、聞き覚えのある幼い声に自然と歩みを止め、顔を向ける。
其処には声の主であるスバルと姉のギンガ、そして笑顔で軽く手を振る母親のクイントがいた。
スバルはナイトガンダムを見つけるや否や、真っ先に走り出し抱きつき、ギンガもまた抱きつきはしなかったが
嬉しそうに近づいてきた。
「あらあら、モテモテね。家の主人が見たら『娘はやらんぞ~!』って言いそうな光景だわ」
どう見ても目の前の光景を面白がっているクイントに、ナイトガンダムはスバルの頭を撫でながら乾いた笑いを漏らす。
「・・・・それで、クイント殿はどうして此処へ?確か地上本部という所での勤務なのですよね?」

昨日の昼食で、此処とは違う地上本部の局員の筈の彼女が、昨日に引き続き此処にいることに疑問に思ったため何となく尋ねてみる。
クロノから聞いた話だが、地上本部に勤めている人間が此処に来ることはあまりないらしい。何でも不仲など、色々と理由があるらしいが。
だからこそ、昨日に引き続き地上本部の局員であるクイントが本局にいる事に疑問を抱く。
まぁ、不仲といってもおそらく上に立つもの同士の事だろう、クイント個人が嫌いとは思えない。

「・・・スバル達と一緒という事は・・・・・見学でもさせているのですか?」
「あ・・・・・・・え、ええ、まぁそんなところ。もし駄目だなんて言うと、またスバルが一人でどこかに行っちゃうから。
それで、ガンダムさんは今帰り?」
曖昧に答えた後、その話題を無理矢理終らせるように話題を変えるクイントに少し不審感を抱きながらも、彼女の問いに答える。
だが、その答えに不満を抱く人物が目の前にいた。
「え~!?ガンダムさん、遊ぼうよ~!!」
スバルである。本当なら昨日の昼食の後、彼女はギンガと一緒にナイトガンダムを遊ぶつもりだった。
だが、あの時はナイトガンダムに急な仕事(クイント曰く)が入ったため、我慢して諦めた。だからこそ、今日こそ遊んで欲しい。
「ねぇ?お姉ちゃんも遊びたいよね?」
彼女も妹であるスバルと同じ気持ちであった。だが、迷惑ではないのか?仕事帰りで疲れているのではないかという彼女の
気遣いが、本当の気持ちを押しとどめていた。
「スバル、私も同じ気持ちだよ。だけど、ガンダムさんも疲れてるから、また今度にしよ?」
「そうよ、お姉ちゃんの言うとおり。ガンダムさんが好きなら、家に帰してあげましょ?」
大好きな母と姉に諭されたスバルは、頬を膨らませ不満を表しながらも、納得したのかナイトガンダムから離れる。
シュンとするスバルに申し訳ない気持ちになりながらも、正直ギンガとクイントの気遣いには感謝していた。
疲れに関してはゆっくり眠ったため残ってはいなかったが、あの月村家襲撃事件以来、全く顔を合わせていないイレインの事が気がかりだったからだ。
「今度日を改めて遊ぼう。それまでいい子にしてるんだよ」
笑顔でスバルとギンガの頭を優しく撫でた後、転送装置の中に入るナイトガンダム。
後は扉が閉まり、ハラオウン家が借りているマンション内に設置されている転送ポートに転送されるだけ。誰もがそう思っていた。
閉まる扉に滑り込むようにスバルとギンガが入ってこなければ。
スバルはあまり我侭を言う少女ではない。それに他人の気持ちを理解できる子でもある。
だからこそ、母と姉の言う事もちゃんと理解し、ナイトガンダムと遊ぶ事を諦めた・・・・かに見えた。
「(でも・・・・今度は何時会えるのかな・・・・・・)」
よく考えてみたら、ナイトガンダムと会えたのは全て偶然だった。決して連絡を取ったりしたわけではない。
また偶然が続くのか?そう考えるといてもたってもいられなくなる。
「(ねぇ、お姉ちゃんもそう思わない?)」
「(・・・・・・・うん、スバルの言う通りかな・・・・)」

母親であるクイントには内緒にしているが、スバルとギンガには心の中で互いに話す事ができた。
念話と言われる魔法に似ているが、自分達はまだ魔法は一切使えない。おそらく自分達の体が特別だからだろう。
互いに近くにいないと伝えられないという欠点はあるが、この能力は自分とスバルを繋ぐ絆のような物だと感じていた。

「(だからさ・・・お姉ちゃん)」
スバルが考えたアイデア(スバルは『作戦』と言っていた)にギンガは危ないから止めようと言おうとしたが、結局言う事ができなかった。
理由は簡単、ギンガもまた、スバルと同じ気持ちだったからだ。
「(・・・・・わかった。私もガンダムさんと遊びたいから・・・・・・お母さんには一緒に怒られよ)」
こうして、二人の作戦は見事に成功し、一人の騎士と二人の幼い姉妹は、海鳴市へと転送された。


  • 海鳴市

「・・・・・・二人とも~・・・・・・大胆な事をしてくれたわね~・・・・・」
端末越しにニコニコと笑顔で二人の娘に話しかけるクイント、だが、その笑顔を向けられているスバルとギンガは怯えきっており
彼女達の後ろで様子を見ていたナイトガンダムもまた、圧倒されたかのように一歩後ろへと下がった。
「(・・・・なんとう覇気・・・・・・これが母親というものか・・・・・・)」
顔は笑顔そのものだが、端末越しからでも分かるクイントのオーラにナイトガンダムは感心すると同時に
情けない事にスバル達同様恐怖を感じていた。だが、このままでは二人は怒られっぱなしになってしまうのではないかと思ったため
意を決して、二人の変わりに対応する事にした。
「クイント殿、二人も悪気が会ったわけではありません。もうそれくらいでよろしいでしょう?」
「・・・・まぁ、ガンダムさんがそういうのなら・・・・・・でもごめんなさいね、迷惑かけちゃって。
貴方も疲れてるでしょうに・・・・・それに貴方がお世話になっている家にも迷惑が掛かるんじゃ」
「その様な事はありません。とても親切な方々ですよ。お二人は私にお任せください」
歳が近いすずかとなら良い友達になれるだろうと思う。
お世話になっている月村家の人達に嘘はつきたくはないが、管理局の存在を隠す以上、
スバル達に関してはクロノの従妹と言う事でどうにかごまかすしかない。
「ありがとう。私は手続きを終えてからそちらへ迎えに行くわ。君達がいる地球は管理局の管理外世界だがら
許可やら手続きを取らないと行く事はできないのよ。少し掛かるかもしれない」
「それでしたらリンディ殿に相談をされてみてはいかがでしょうか?今、アースラスタッフは此処に拠点を置いています。
話しの分かる方ですし、迎えに行く位でしたら簡単に許可をいただけると思いますよ。おそらくまだ本局にいる筈ですから、
こちらで連絡を入れておきますよ」
「そう?それじゃあ御願いするわね。最後にスバルにギンガ、もう怒らないけど、こんな無茶をしちゃ絶対駄目だからね」
先ほどとは違い柔らかな笑みで諭すよう語りかけるクイントに、スバルとギンガはゆっくりと頷いた後、声を揃えて謝った。

  • 1時間後

:月村家正門前

ナイトガンダムのおかげで苦労せずにリンディと会う事ができたクイントは、彼女のおかげで
驚くほど時間を掛けずに地球へ来る事ができた。
「だけど・・・こうもあっさりと・・・・いいのかしら?」

ナイトガンダムの態度から、リンディ・ハラオウンという人物は自分と同じ局員だとばかり思っていた。
実際そうだったのだが、提督とう地位はクイントに必要以上の緊張感を与える事となった。
提督といえば地位は勿論の事、次元航行艦・・・・しかも艦隊クラスの指揮権まで持つ事が出来るほどの地位である。
自分が所属している隊の隊長よりはるかに偉い。緊張するなという方が無理である。だが
「ああ、クイント・ナカジマさんね?ガンダム君から話を聞いてるわ」
緊張していた自分が馬鹿だったかのように、リンディ・ハラオウンは気さくな人物だった。
自分の地位を鼻に掛けないで、まるで友人と話すかのように話しかけるリンディに、
クイントは呆気に取られながらも緊張していた自分を恥じた。
そしてあっという間に許可をとる事ができ(と言っても「ええ、どうぞ、家の転送ポートを使って」というあっさりとした許可だったが)
此処へくる事ができた。ちなみに、直に許可が取れたにも拘らず此処まで来るのに一時間を要したのは
リンディにお茶の誘いを受けたからであったのだが・・・・・今ではその事を猛烈に後悔している。
子を持つ親同士、話しはとても弾んだ・・・だが、出されたお茶は宜しくなかった。

「あの味覚・・・・・息子さん、糖尿病にならなかったのかしら・・・・・・さて、この月村さんの家にいるはずだけど」
良くない思い出だけをさっさと忘れたクイントは、改めて表札を確認した後、インターホンのボタンを押した。


「手加減無用!!覚悟ぉ!!!」
アリサの声と友に、力の限り投げられたバレーボールが容赦なくスバルを襲う。だが、
「えい」
可愛い声と友に片腕でアリサの必殺魔球を軽々と受け止め、
「やぁ」
同じく可愛い声で投げ返した。
アリサに迫り来るバレーボール、可愛い声とは裏腹に、どう見ても子供が投げたとは思えないスピードで迫り来る。
だが、そのボールがアリサに直撃する前に、すずかが前へと出て片手で受け止めた。
すずかの掌に直撃した瞬間、激しい音が響き渡り彼女の髪が棚引く。傍目から見てもそれなりの衝撃がすずかを襲ったかに見えたが、
彼女は顔を顰めるどころか相手を称えるかのように微笑む。そして、ボールの勢いが殺されないうちに、掴んだ腕を1回転、
「それっ!」
遠心力を加えて投げ返した。
すくい上げるように投げられたボールは回転しながら突き進み、スバルの隣にいるギンガに襲い掛かる。
大の大人でも当たれば悶絶間違いなしの剛速球。だが、ギンガは逃げる事無く両手を差し出しボールをキャッチ、
体を踏ん張ってはいたが、反動で体が無理矢理後ろに引きずられる。だが、受け止める事には成功した。
「・・・やるね、ギンガちゃんにスバルちゃん」
「すずかさん達も・・・・・すごいです」
「まぁ、アタシとすずかのペアに喰らいついていく実力は褒めてあげるわ!!だけど、これまでよ!!」
「アタシとお姉ちゃんも負けないぞ~!!!」
一方、外野では
「ねぇ・・・ガンダム。これって遊びよね?」
既にボールを当てられたイレインが木にもたれ掛りながら、同じくボールを当てられたガンダムに尋ねる。
時より聞こえるアリサの叫び声、何かが土にめり込む音、ボールが強く当たる音。
それらを乾いた笑いと友に受け流すナイトガンダムは
「・・・・・・おそらく・・・・・」
かなり間を空けた後、短く答えた。
「・・・・思うんだけどさ、アリサ、このままじゃ不味いんじゃない?この中じゃまともな人間、彼女だけよ?」
彼女なりにアリサを気遣うが、その言葉にナイトガンダムは引っかかりを感じた。
確かにすずかは夜の一族の血を引いているため、常人より体力はある。だが、スバルとギンガは普通の人間の筈。
見た所力はあるが、魔法はまったく使っていない。仮に使ったとしてもイレインが察知できるとは思えないが。
「イレイン、その言い方は感心しない。確かに力はあるが、それではまるで人間ではない様な言い方だ」
その発言にイレインは心底不思議な顔をする。そして腕を組んで数秒考えた後、確認するかのようにナイトガンダムに尋ねた。
「・・・・まぁ、すずかの事は謝るわ、だけどあのスバルとギンガって子、貴方本当に知らないの?」
「どういう事です?」
ナイトガンダムの表情から、本当に知らなかった事にイレインは意外そうな顔をする。
数秒沈黙した後、別に隠す必要もないと結論付けたイレインは、顔をスバル達の方へ向け呟くように答えを明かした。

          「あの二人はまともな人間じゃない。私やノエル達と同じよ」


「いや~、最近の子供はパワフルねぇ~」
日当たりの良い庭に置かれたテーブルと椅子。この家の主である月村忍はその椅子の一つに腰掛け、
右手に紅茶が入ったカップを持ちながらすずか達の様子をうかがっていた。
彼女に向き合うように座っていたクイントもまた、忍の言葉に釣られたかのようにスバル達の様子をうかがう。
歳が近い子と楽しく遊ぶスバル達の様子に、自然と顔が綻ぶ。
正直、この笑顔を見られただけで彼女の心は温かい気持ちになった。
スバル達はその存在から、未だに学校などに通わせるような事はしなかった。そのため、同年代の友達などは未だにいない。
だからこそ、歳が近い子達と遊べるのはとても良い経験だと思う。
「ありがとうございます。スバル達もとても楽しそうで・・・それにこんなに美味しいお茶もいただいて」
「気にしない気にしない、ガンダム君の知り合いなら、私達の知り合いでもあるから気にしない。だけどあの子達、スゴイ運動神経ね~。何か習い事でもしているの?」
以前顔を向けたまま尋ねる忍に、クイントは言葉を詰まらせるが、特に何もやっていないと答えた。
「・・・・・ふ~ん・・・・・そうなんだ・・・・・」
意味ありげに頷いた後、忍はゆっくりと顔をクイントの方へと戻し、紅茶のカップを置く。そして

     「当然よね?あの子達、体に機械が埋め込まれている、ただの子供じゃないんだから?」

クイントはその言葉に反応するかのように即座に立ち上がろうとする。だが、
「クイント様・・・お座りになっていてください」
先ほどまで自分達の様にスバル達の様子をうかがっていた筈のメイド『ノエル』が、クイントに気配を感じさせる事なく後ろに立っていた。
そして、彼女の両肩に手を置き、無理矢理椅子に座らせるかのように押し付ける。
「(何?この人!?なんて力なの!)」
違法とは分かってはいるが、魔力で体を強化し、無理矢理抜け出そうとする。
だが、それでももがくのが限界、脱出する事は出来なかった。
脱出が不可能と痛いほど理解したクイントは、せめてもの抵抗とばかりに忍を睨み付ける。
「・・・・貴方・・・・・いったい何者・・・・・」
射殺さんばかりに睨み付けるクイントの視線を忍は微笑みながら受け流す。
そして顎に手を乗せ、正面からクイントを見据えながら、ゆっくりと話しだした。
「何者っていってもねぇ・・・・・私はここの家の主、月村忍。決して火星人でも木星人でもないわ。
だけど驚いたわ・・・・あんな小さな子がいるなんて・・・・・世界は広いわね・・・・」

クイントは忍の言葉を信じてはいなかった。戦闘機人の技術は公式に公開されてはいない。
それこそ一般人、しかも管理外世界の住人が知る筈がない。
なのに目の前の女性はスバル達を機械が埋め込まれている人間『戦闘機人』と見抜いた。
彼女の態度から、カマを欠けたとは思えない。絶対の自信からでた結論だろう。
検査もしないで見抜けるという事は『戦闘機人』関係に詳しい人物、それこそ開発に関わった人物でもない限り不可能と言っても良い。

「・・・・・・で、貴方は何が望み・・・・・・」
局員としての性格からだろう。クイントは脱出を諦め、忍の話しに付き合う事にした。
『戦闘機人』に詳しい以上、彼女を無視するわけにはいかない。だが、後ろのメイドは無論、下手をしたらナイトガンダムとも戦わないといけなくなる。
正直勝ち目は無い。おそらく自分に出来ることは、救難信号を送り、管理局にこの場所を知らせる事くらいだろう。
おそらく向こうも自分が何かしらの行動を起こすと思っている筈。だが他に方法は無い。
「・・・望みねぇ~・・・」
目を瞑り、考え込むように黙りこむ。時間にして10秒程度、だがクイントには数時間にも感じられた10秒。
「まぁ、考えるまでも無いんだけどね」
以前自分を睨みつけるクイントの目線を正面から受け止めた忍は、ゆっくりと自分の望みを呟いた。

           「スバルとギンガ・・・あの子達を私にちょうだい」

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最終更新:2008年10月21日 19:55