小話メドレーその18『StrikerS20話をフルメタル・パニックふもっふ風にしてみた、の図』
機動六課部隊長、八神はやてによって駆り出された次元航行艦、アースラ。その作戦室で、四人の新人は整列していた。
スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、そしてそれに向き合って立つのは、教導官であるなのはとヴィータだ。
「……これから私達は、“聖王のゆりかご”に突入する。みんなには市街に降りて、地上本部の防衛に加わってもらう」
それは、今までかつて無かった激戦である。その事に自然と六人の表情は引き締まった。
「みんなには、これまで生き残る為の技術は充分に教えてきた」
四人の脳裏に過るのは、なのはやヴィータから受けた特訓の日々。
泥だらけになり、泥を貪り、胃液が出なくなるまで嘔吐し、しかし貪欲に自らを鍛えた日々。
「最後に、私からみんなに言えるのは……これだけ」
そこまで言ってなのはは瞼を閉じる。そして大きく息を吸い、そして、
「――野郎共! 私達の特技は何だ!?」
「「「「殺せ! 殺せ!! 殺せ!!!」」」」
なのはの叫びに、四人の新人達が吠える――!
「――この作戦の目的は何だ!?」
「「「「殺せ! 殺せ!! 殺せ!!!」」」」
「――管理局を愛しているか!? 機動六課を愛しているか!!?」
「「「「ガンホー! ガンホー!! ガンホー!!!」」」」
「よし行くぞおぉぉぉぉぉぉッ!!」
「「「「オオオオオオオオォォォォォォォォォォォォッッ!!!」」」」
小話メドレーその19『A's11話をスクライド風にしてみた、の図』
「……てぇ~っ!」
遠くから誰かの声が聞こえ、私の意識が浮かび上がってくる。
「――ん」
どうも私は眠ってたみたいや。妙に重たく感じる身を起こせば、柔らかく暖かなベットの感触がある。んで目に入るんは自室、そんで声は屋外から響いてる。
「はーやてぇーっ!!」
大声やなぁ、と思いつつ私は足を動かす。ベットから降りて、廊下を抜けて、玄関でサンダルを履いて、ドアを開ければ屋外や。そこには一台の車が止まっている。そんでもって助手席からは、
「はやて、おはよ!」
私の大事な妹、ヴィータが窓から上半身を伸ばしとった。
「……おはよ、ヴィータ。何や今日はえらい早起きさんやなぁ……」
まだ眠気の抜けない頭で私は返事をしみると、ヴィータはほっぺ膨らませて不満顔。
「はやて忘れちゃったの!? 今日はあたし達と出かける約束だったじゃん!!」
「はれ、そうやったけか……?」
「折角シグナムが車借りてきたのにさ!」
そこまで言ってヴィータが運転席を振り返る。ちょいと視点を変えてみりゃ、運転席には私の一つ上の姉ちゃん、シグナムがハンドルを握っとった。
「……おはよう、はやて」
「ん、おはようさん」
「さて、はやては私に何か言う事は無いか?」
「……………えっと」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「………………忘れててごめんなさい」
「さっさと着替えてこい。ここまで待ったのだから、置いていったりはしない」
「はぁい」
私は生返事、んで自分の部屋に戻ろう思って振り返った。と、
「はやてちゃん、どこかへ行っちゃうの?」
玄関にシャマルがおった。一番上の姉ちゃんは、全然それに合わない子供っぽい泣き顔を浮かべてる。
「今日、はやてちゃんお料理を教えて貰おうと思ってたのに……前に教えてくれるって言ったのに……」
「え、あー、それはその、何と言うか」
「はやてちゃんの嘘つき」
……あ、結構グサリとくるわそれ!
ちゅうか一番歳上なのに、そんな可愛げのある顔できるなんて反則とちゃう!?
「もーはやてー、そんなんじゃダメダメのろくでなしだぞ!」
末っ子にも言われてしもうた。結構ブルーや……。
「まあ、そのぐらいにしてあげようじゃないか」
前門のシャマル、後門のヴィータとシグナムに挟まれて右往左往しとる私に横から声がかけられた。中庭からやってくるのは青い大型犬を引き連れた、銀色の髪をした私の伯父さん。
「グレアム伯父さん、ザフィーラ」
性格が合うのか、一緒にいるのが割と多い二人(一人と一匹かな?)や。
「料理については私が教えてあげよう、シャマル。君としては不満だろうが……男やもめの私の腕も、まだまだはやてには負けていないぞ」
えー、とか不平ぶうぶうな長女の頭に手を置いて伯父さんはにっこり笑いかける。威厳と和やかさが一緒くたなその笑顔はキラースマイル、我が家最強の武器や。
「やー伯父さん、助かったわぁ」
「暢気にしてはいけないよ、はやて。君は早く着替えてきなさい」
「はーい」
釘もしっかり打つ辺り、やっぱ年の功っちゅうもんを感じるなぁ……。
「ああ、それから」
「ん?」
シャマルの横を抜けて部屋に戻ろうとした私を、グレアム伯父さんが引き止めた。あれー、何か珍しい感じやね。
「彼等にも、ちゃんと朝の挨拶をしておきなさい」
へ、と伯父さんの後ろを覗いてみる。草が短く刈り揃えられた中庭、ダイニングと繋がるその場所に、その二人は立っていた。
……あちゃー、せやった。すっかり忘れとったわ……
どうも自分はすごいうっかり者みたいや。この二人に挨拶を忘れちゃ、あかんやろ。
「おはよ。――父さん、母さん」
●
「でっきた~!」
アリシアの元気な声が私の部屋に響く。それと一緒に掲げられたのは、私とリニスで考えたアリシア用のテスト用紙。そこにはつたない字が空欄に書き込まれいる。
「できたよ、フェイト~! リニス~!」
「出来たかどうかは答え合わせをしてからです」
そういって私の横に座るリニスはテスト用紙を受け取る。それからリニスは細かく視線を動かし、テストの結果を裁量していく。
「どうかな、リニス」
私の質問にリニスは、うーん、とはっきりしない返事。
「及第点といった所ですかね。でも今回のは割と簡単にしたのに、この点数は……」
「やーい、アリシアのばかー」
囃し立てるのはアリシアの隣で丸くなっていたアルフ。こいぬフォームだから声がちょっと子供っぽい。
「むぅっ! アリシア、ばかじゃないもん!」
アルフの言葉にアリシアが頬を膨らませる。その様子が可笑しくて私は思わず噴き出してしまう。そうすれば、アリシアはより一層頬を膨らませて、
「もうっ、アルフもフェイトもひどいっ! 私、お姉さんだぞっ!」
「だったら、もっといい点を取って下さい。フェイトなんか、執務官を目指して勉強しているんですよ?」
「むう~~っ!!」
アリシアの顔が真っ赤になる。さすがにやりすぎちゃったかな? 何とか宥めて……
「フェイトちゃん!」
「…なのは? どうかしたの?」
突然なのはが私の部屋に入ってきた。ちょっと息が乱れてて、それに慌ててる。
「リンディさんが集合だって! 何か事件が起きたみたい…」
「! 解った、今すぐ行く!!」
頷くなのはは先に部屋を出る。私も急がなくちゃ。
「ごめん、アリシア、リニス、アルフ。行かなくちゃ」
「気をつけて下さいね」
「すぐに片付けて、勉強教えてね?」
「犯人なんて、コテンパンにやっつけちゃえ~!」
三者三様のらしすぎる答えに、思わず笑みが生まれる。それからみんなに頷き返して、私は部屋を出て、
「フェイト」
廊下に一歩出た所で、呼び止められた。振り向けば、キッチンからその人が出てくる。
「プレシア母さん……」
「気をつけてね」
「――はい」
母さんの言葉に強く頷き、廊下に出た。長い道を駆け抜け、やがて開けた場所に行き着く。そこにはアースラクルーのみんなが集まってて、なのはやクロノの姿もある。
「フェイトちゃん」
「遅いぞ、フェイト」
クロノに、ごめんね、と返して私は整列に混じる。と、幾許もしない内に向こう側の出入り口からリンディ提督が出てきた。一歩後ろにはエイミィも並んでる。
「第49管理外世界で、次元犯罪が発生しました。そして先ほど、私達アースラクルーが捜査担当に任命されました」
リンディ提督の声に、自然と皆の顔が引き締まる。
「総員、ただちにアースラに乗船!」
『――了解!!』
私が、なのはが、クロノが、みんなが敬礼と声を一つにした。
●
気付くと、八神はやては暗闇の中にいた。意識は微睡んだ様にぼやけ、視界も同様だ。
だがそれでも、目の前に立つ銀髪の女性だけは見える。
「――わたしは、なにをのぞんでたんやっけ」
朧げな意思ではやては喋る。それに応じる様に銀髪の女性は、
『夢を見る事です。……貴方が欲した、幸せな生活の夢を』
「わたしが…ほしかったしあわせ?」
女性は頷く。
『健康な体、愛する者達との平和な暮らし。……眠って下さい。そうすれば、貴方はそんな世界にずっといられます』
それはとても幸いな事だと、はやては思う。
苦しみが無くて、幸せしか無くて、自分の欲しい全てが手に入る世界。
「何かな、ええ夢見させてもらった」
女性が笑み、はやても笑んだ。――しかし、はやては首を横に振る。
「――せやけどそれは夢や。ただの夢なんよ」
●
フェイト・テスタロッサは祭壇の中央にいた。見覚えのある風景、そこは母が住んでいた巨大庭園の深部だった。
俯くフェイトの顔、震える小さな肩、しかし涙は無い。ただ何かを堪える様に、小さく震えている。
「こんなささやかな……ああ、すぐにでも手に入りそうなものを、私はこんなにも欲していたの……?」
自分が見ていたのは、自分が本当に望んだ世界。
母がいて、姉がいて、先生がいて、使い魔がいて、友がいた。
そんな世界に、――そんな幻想に、フェイトは今も囚われている。
「――不器用だね。私は、本当に不器用だ」
●
「――せやから!!」
覚醒したはやての手が銀髪の女性を引き倒し、自身の懐へと倒れ込ませた。
●
「――だから!!」
望みが全て叶う世界、だからフェイトが望んだ時、その掌にはバルデッシュがあった。
●
「突き進む!!!」
はやての胸に銀髪の女性がとけ込み、白銀の光が放たれる――!!
●
「切り開く!!!」
フェイトの意思に呼応し、バルディッシュはその身を覚醒させる――!!
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バルディッシュの覚醒は黒の長斧から始まった。
時を同じくしてフェイトの身を黒いマントと拘束着に似たバリアジャケットが覆う。
だがバルディッシュの覚醒は終わらない。
先端の斧が左右に開き、柄が短くなる。そうして完成するのは刃の無い巨大な柄。
最後に巨大な光刃が生じ、バルディッシュの覚醒は完了、フェイトは静かに宣言する――!!
「――唯一無二の力を見せてあげる」
●
それは融合だった。
まずは袖と裾の短い黒の衣服に包まれ、続いて白のローブがそれを覆う。
更に大きなベレー帽が出現し、加えて頭髪は白く、両の瞳が蒼を成す。
最後に胸元に十字の飾りを表紙に頂く書が出現し、右手にも金色の長杖が握られる。
悠久の時を“闇”と蔑まれた最後の家族、それを救う為、己が身にそれを宿してはやては叫ぶ――!!
「――これが!! 天下無敵の力やあぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
小話メドレーその20『懲りずにStrikerS17話をONEPIECE風にしてみた、の図』
廊下を抜けきった時、スバル・ナカジマが見たものは、三人の戦闘機人によってトランクに押し込まれる重傷の姉、ギンガだった。
「――あ」
我知らずと、呻きが漏れた。
何故ギンガがあんな姿になっているのか。
血に塗れ、泥にまみれ、完全に脱力した、あんな――
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」
瞬間、スバルの中で何かが弾けた。
両眼が金色に変色し、足下には環状の幾何学模様、戦闘機人特有のテンプレートが発現する。
「アイツ……戦闘機人か!!」
「もう一人のタイプゼロっスか!?」
動じる二人の戦闘機人、そしてスバルは疾走する。
「……ギン姉を返せえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!」
リボルバーナックルがカートリッジを過重発動、そしてマッハキャリバーの爆走が床を割り、戦闘機人達に迫る。
「――ッ!!」
振り抜かれたスバルの鉄拳を、一際小柄な戦闘機人が避ける。慣性に引かれてスバルは転びかけるが、マッハキャリバーの車輪を立てて無理矢理それを押さえ込む。
「返せ!!! それは私の……私達家族の……大事なギン姉なんだ!! お前らなんかに渡してたまるかァ!!!」
スバルの慟哭、しかし小柄な戦闘機人はそれを鼻で笑う。
「何をムキに……。お前の家族がどうなった所で、このタイプゼロは私達の物だ」
開かれたトランクの中にギンガの体躯を納めつつその戦闘機人は語る。
「残念ながら私達は……社会がどんなに詰め寄ろうと気にしない。ただの遺伝子上の姉だろう? 不運なのはこの“タイプゼロ・ファースト”だな。姉の身も守れない様な……」
トランクの蓋が締められ、スバルが再び疾走する。だが、
「出来の悪い妹を持ってしまってなァ!!!」
小柄な戦闘機人が腕を振り抜いた直後、スバルの周囲に十数本のナイフが出現、そして爆発した。
「!!!」
強力な炎と爆風がスバルの身を嬲り、強引に平伏させる。
「ここは姉に任せて、お前達はこのタイプゼロを連れて帰れ」
「でもあっちのタイプゼロ、接触兵器系のISを……」
「姉なら触れずに戦える。心配するな」
それからトランクは一人の戦闘機人が持っていた大きな盾に連結される。ISの効力なのか盾は浮遊し、またもう一人の戦闘機人も両脚のローラーブーツを起動させている。
「待て!! 振動破さ……」
「ランブルデトネイター!!!」
投げつけられた鋼のナイフが再度爆発、ISを発動させようとしたスバルを吹き飛ばす。
「行け」
小柄な戦闘機人の言葉に、残る二人が離脱した。ギンガの入ったトランクを引き連れて。
「待て!!! 返せ――――ッ!!!」
スバルは追おうとする。しかし、小柄な戦闘機人の放つナイフの群がそれを阻む。
「返せよおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!」
スバルの叫びは、しかし爆音に掻き消された。
●
「あーもうっ! スバルってばどこまで言っちゃったのよ!?」
「屋内みたいな狭い場所じゃ、スバルが一番早いからね」
地上本部の長い廊下を高町なのはは飛行していた。その胸にはティアナが抱えられているが、しかしそれを感じさせない様な速度で突き進む。
「あの馬鹿、先走って……! 一人で行って何が出来るってのよ……!!」
焦燥のティアナ、顔には出さないがなのはの同様の思いだ。しかし走行するスバルと違い、飛行のなのはではどうしても速度で劣ってしまう。スバルとはもうずいぶんな距離が空いてしまった。
「スバル……」
自分を尊敬し、そして同じ場まで駆け登ってきた少女。その安否を不安に思うなのはがその名を呟く。と、
「……あれは」
廊下の行き先、そこに二つの影が見えた。近づくにつれてそれは人である事が解った。
「シグナム副隊長! シスター・シャッハ!」
それはなのはの同僚、そして聖王教会からの協力者だった。シャッハとは一度合流し、別れた筈だったが。
「どうしたんですか、二人とも」
「シグナム副隊長は屋外に出られるので……これから私がそこまで送り届ける所だったんです」
「シスター・シャッハは透過系の魔法が使えるからな」
とシグナムがシャッハの言葉を補足し、続いて怪訝そうな表情をこちらに向けてきた。
「それより……二人はどうしてそこまで焦っている?」
「――そうだった!!」
驚きから忘れていた目標、それを思い出してなのはは叫ぶ。
「ギンガと連絡がつかないんです。そんでスバルが先走って……一人でこの先に」
「何……?」
シグナムの両眼が細められ、スバルが駆け抜けた方を睨む。
「ひょっとしたらアイツ、一人で敵の戦闘機人と戦ってるかも知れない!!」
ティアナの類推が四人の危機感を掻き立てた。
●
そして数分後。
ティアナは、なのはは、シグナムは、シャッハは、その部屋で佇んでいた。否、なのはだけはしゃがみ込んでおり、他の三人はそれを囲む様に立っている。
「……高町隊長、息はあるか」
シグナムの確認になのはは頷く。
「うん、未だ息はある。完全に意識を失っているけど」
そう言ってなのは立ち上がる。そこにはとある物が転がっていた。泥と血に薄汚れ、輪郭も歪んだ物。
――それは、意識を手放す程に傷付けられた、スバルの体だった。
「ちょっと待ってて、スバル」
――なのはが、エクシードモードを纏う。
――ティアナが、一対のクロスミラージュを構える。
――シグナムが、レヴァンティンを振るって業火を生んだ。
――シャッハが、両碗のウィンデルシャフトを鋭く交差させた。
――四人の表情は、憤怒。
――睨むのは、地上本部の周囲を追おうガジェットの群。そして、どこかにいる戦闘機人達。
「――あのふざけた連中を、吹き飛ばしてくるから………!!!」
四人の戦鬼が、紅蓮に彩られる地上本部を闊歩する。
最終更新:2008年04月17日 09:23