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もう疲れたのです。

生きることに

呼吸をする事に


楽しくなんか無いのにバカみたいに笑って、バカな役を演じているのです。

まるでピエロのように。

どこにも本当のわたしは、いないのです。

どこの子の目にも、本当の私は遷っていないのです。

きっとわたしは誰かに見てもらいたいのでしょう。

でもそれはダメなのです。

私から仮面を剥ぎ取ってはダメなのです。

真の姿を見ては駄目なのです。

見てしまったらあなたは不幸になる。


だからこちら側には入ってはいけないのです。

私の表面だけでいいのです。

私は放浪者なのです。

どこにも根を張らず、本当の姿を見せず、ただ霧のように漂っているのです。


私に巻き込まれてはなりません。


冬の雨は、容赦無く私の身体にまとわりつき、体温を奪っていきます。


でも、私には冷え切るものなどありません。

既に冷えきっているからです。

傘は差しては駄目なのです。

この雨は、わたしへの罰なのです。

わたしは一人とぼとぼと帰り道を歩きます。

みんなに振りまいているあの嘘っぱちな姿を取り除いたわたしの身体はとても軽くて

今にも飛んでいってしまいそうです。

まるでひもの切れた風船のようなのです。

わたしと世界は一本の細い糸でつながっているようなものなのです。

すぐに断ち切ることが出来るものです。

すぐに断ち切られるものです。

仮面を剥ぎ取ったわたしの姿が、ふと水溜りに浮かびました。

 ・・・・・・・・・・っ

思わず嫌悪感が走ります。





醜い!








醜い!






醜い!





守ってくれるものがなくなったわたしの身体は腐っているのです。

ただれたわたしの身体を、容赦なく、雨が打ちつけます。


ばしゃん


ぱしゃっ


わたしは水溜りを踏みにじります。


水溜りは四方八方に飛び散って、また醜い、汚らしいわたしの姿を映し出すのです。


ふいに、わたしの頭上を何かが覆いました。

「大丈夫かい?」

それは傘でした。

いつの間にかわたしの吐く息が荒くなっていたのです。

瞬時にわたしが反応します。

「すいません、持病の発作がでてしまって。」

わたしは、嘘が得意なのです。

嘘をつく事に、羞恥心や、後悔は湧かないのです。

なぜなら、もう冷え切っているから。

どん底に堕ちた魂からは、何も生まれないのです。

「君、傘は?」

「・・・すいません、置いてきちゃって。」

わたしがそう言うと、その人は傘の柄をぐいっとわたしに突き出しました。

「僕、家あとちょっとで着くんだ。だから使っていいよ。」

「大丈夫です、わたしも家近くなので。」

「そんな格好じゃ風引いちゃうでしょ。」

そういって傘をわたしに押し付けると、じゃぁ、といって雨の中をバシャバシャと音を立てて走り去りました。

わたしは自分の姿を見ます。

わたしは冬だというのに、上着を着ておらず、マフラーもしていなかったのです。

それをいままで気づかなかったのです。

瞬時、悪寒が走りました。

凍えている自分に気づいてしまいました。


気づいてはいけなかったのだ。

気づいてはいけなかったのだ。

わたしの本当の姿を誰にも知られてはならないのだ。

あんなに気をつけていたのに、悲しいかな、わたしは簡単に他人に踏み入られてしまいました。

入ってはいけないのだ。

踏みこんではいけないのだ。

わたしは雨の中、立ち止まります。

そして、その男の人が走り去った方向を眺めます。

走り去れ

走り去れ

わたしの元から。

でもきっと無理でしょう。

あの人はわたしから逃げられないでしょう。

わたしは手の中に残る傘を見つめます。

なぜなら

あの人は風船の紐を握ってしまったのだから。

ドウケシャをつかんではならないのです。

捕まえてはいけないのです。

早く自由にしてあげないとあなたには不幸が訪れるでしょう。

ドウケシャは逃げるためには何だってしてしまうのです。

はやく放さないと、

わたしは紐をつたって

あなたを殺してしまうでしょう。
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