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僕は平穏を愛していた。


僕はもう高校一年生で、そろそろ受験生だな、将来のことにうっすら不安をもっているといったような人並みのことを考えているだけでよかった。

べつに冒険に出ようとか、主人公になろうとかなんて思っていない。

一回もそんなこと望んだことなんてなかった。


君にはあるだろうか


朝起きたら


自分の右手が腐っていたなんてことは。







          • あるはずがない


          • これは夢か?


          • これは全部僕の勘違いなのか?

『ちがうよ』

と僕が言った。

          • 僕が言った?

『この身体は今日から俺のものになるんだ』

これは誰が言ってるんだ?

『だから俺だって』

といって僕は自分の胸を腐った手で指差した。朽ちて真っ黒のぼろぼろの塊で。

勝手に状況が進んでいた。

しゃべることもできなかった

というより 僕の中の誰かがかってにしゃべっていた。


これは、だれだ?

今まで自分の体だと思っていたものが、いつの間にかのっとられようとしていた。

僕は一回深呼吸した。壁にかかっている時計を見る。

今はまだ3時半。母さんもまだ起きていないだろう。

こんな時間に起こしてしまったら怒られるに決まっている。

母さんといっても血はつながってない。本当の母さんはとっくに死んで、父さんがどこからか新しい母さんを連れてきた。僕の新しい妹とともに。母さんは僕の妹(要するに母さんの本当の子どもだ)を可愛がる。父さんは外国に単身赴任で正月も帰ってこないけど、僕はたぶん庭の片隅に埋められているんだと思っている。

僕は悲鳴を押し殺した。

母さんは僕が家でしゃべることを禁じた。表向きは偽物の作り笑顔を顔に貼り付けている。僕が一言でもしゃべると一瞬、嫌悪感と疲労が顔によぎる。いつまでこんなことを続けなきゃいけないの。僕に対する不満が顔に表れる。

要するに母は家族ごっこにうんざりしていたのだ。


それを僕はただ眺める。

僕は見ている。

ただ何も望むこともなく


何も知ることもなく



なにもせず



自分を隠し



隠し





















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