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第3章 有機物が土壌を作る

1. 土壌を完成させるもの

土壌の原材料→地殻表層の岩石
岩石→(風化+有機物)→土壌
有機物がポイント!

2. 土壌有機物は炭素循環で決まる

土壌が完成したら有機物は?
  • 「炭素循環」がキー
  • 有機物は炭素を含む化合物の総称=炭素量は有機物量
有機物を作る重要な存在は?→植物
植物の生育に有機物の添加量、分解量が左右される
植物の生育は?→気象、環境に左右される
土壌の有機物量はその場所の気象、環境条件の下での平衡値へ向かう。

1) 地球規模の炭素循環と土壌有機物

深さ1mの土壌中に現存する炭素量(推定) = 2,400Pg(2,400 * 10^15g)
  • 全植物: 550Pg
  • 大気中: 750Pg
  • 大気から植物へ吸収される炭素: 110Pg/year
…等々
合計すると、人為的な炭素放出等が原因で大気中炭素量は4.5Pg/yearの速度で増加していることになる。

2) 耕地規模での炭素循環

(家畜飼料用トウモロコシ圃場の例)

3) 土壌水分環境、気温の違いと土壌有機物の蓄積量

  • 植物の有機物生産速度: 25℃くらいで極大
  • 微生物の有機物分解速度: 35℃くらいで極大
→有機物が分解されていくか蓄積されていくかは概ね温度で決定される
好気的条件の方が微生物の活動は活発。嫌気的では抑制気味。
→畑より水田の方が有機物が蓄積されやすい

3. 土壌有機物、腐植、腐植物質―その意味の違い

1) 土壌有機物

土壌中の有機物
  • 生物(動植物、微生物)
  • 易分解性有機物(動植物の遺体など)
  • 難分解性有機物(微生物の分解を受けた有機物など)
非生物由来有機物(非生物有機物の方が適切な表現?)のうち、同定可能、除去できる動植物遺体以外のものを土壌有機物と呼ぶ。
土壌有機物と腐植は同義。
腐植は非腐植物質と腐植物質に細分される(ただし境界は便宜的で明確ではない)。

2) 非腐植物質

土壌有機物分解過程で生産される有機成分のうち、構造が明確な既知の物質のこと。
  • 炭水化物(多糖類)、タンパク質、アミノ酸、脂質、リグニン...etc.
分解の難易にはバリエーションがあるが、最終的には無機物まで分解される。
土壌中の存在量は少ない。

3) 腐植物質

土壌有機物の分解産物から化学的、生物学的に合成されたもの。微生物が利用・分解した後の残りカスみたいなもの。
土壌有機物の大部分は腐植物質が占める。
非結晶、黒色の高分子有機物の混合物。
腐植物質は酸・アルカリへの溶解性によりさらに細分される。
  • 腐植酸(フミン酸): 弱アルカリで溶けるが酸に解けない。暗褐色の高分子有機物混合物。分子量は300,000程度まで。
  • フルボ酸: 弱アルカリにも酸にも溶ける。黄色から褐色の高分子有機物混合物。分子量はやや小さく2,000から5000程度。
  • ヒューミン:アルカリや酸に不溶。土壌無機成分との結合がきわめて強い。
腐植酸が腐植物質としての性質がもっとも強く、以下の性質が強い。
  • 養分の保持能力
  • pH変化への緩衝力
腐植物質の大部分は単体で存在している訳ではない。
粘土鉱物、鉄、アルミニウム、金属イオンなどと結合した有機無機複合体として存在している。

4. 土壌有機物の働き

1) 植物への養分供給源

土壌有機物は無機化によりN, P, Kなど無機イオンを放出する。
無機化されてはじめて有機物は植物の養分となる。

2) 養分の保持と土壌の緩衝力を大きくする作用

腐植物質の表面にはpHに依存して電荷の正負が変わる官能基が多く付いている。
これが養分(陽イオン、陰イオン)保持やpH変動への緩衝力を高める作用をしている。

3) 養分の有効性や有害物の調整

腐植物質はアルミニウムと結合しやすい
  • アルミニウムの害減
  • リンとアルミニウムの結合を減らしリンの肥効UP
有害金属類とも結合しやすく汚染防止に貢献。

4) 植物の生育促進

腐植酸やフルボ酸は植物の発芽、発根、生育促進効果を持つ。
以下の表はChen and Aviad(1990)による
* 腐植物質の種類 * 生育への影響 * 濃度(mg/l)
腐植酸 水分吸収の増強、発芽の促進 1-100
腐植酸・フルボ酸 発根の刺激・根の伸長促進 50-300
腐植酸 根細胞の拡大促進 5-25
腐植酸・フルボ酸 生育全般の促進 50-300
これは
  • 溶解度の低い養分元素が有機物と結合して吸収されやすくなる
  • 腐植物質が直接吸収されて植物ホルモン様の作用をする
などの理由によると考えられている。

5) 団粒形成と土壌構造安定化

土壌粒子同士の接着剤として働くため団粒構造ができやすくなる。

6) 土壌への吸熱効果及び土壌の保温効果

黒色により太陽エネルギー吸収効率が上がる。
ただし水分保持量も多くなるので比熱が大きくなりやすく、寒冷地の春先などは温度上昇が緩慢となる。

7) 土壌微生物への栄養源

土壌有機物の複雑さは多様な微生物の栄養要求性を満たすことができるため、微生物の多様性維持に貢献する。
養分供給の面からのみならず、病原菌蔓延防止のためにも重要。

第4章 「土は生きている」―土壌生物の働き

1. 土は生き物か?

土は当然生き物ではないが、「緩衝力」を持っているという点で生物的ではある。

2. 土壌と有機物をつなぐ土壌生物

土壌の生態系
  1. 生産者: 植物
  2. 消費者: 動物
  3. 分解者(還元者): 土壌生物
分解者が有機物を分解し生産者が利用可能な無機物にする。土壌生物が土壌と有機物をつないでいる。

3. 土壌に生息する生物の種類と数

1) 土壌動物

土壌動物の分類
*グループ *サイズ
小型土壌動物 - 0.2mm アメーバ、鞭毛虫etc.
中型土壌動物 0.2 - 2mm トビムシ、ダニetc.
大型土壌動物 0.2mm - 2cm アリ、クモetc.
巨形土壌動物 2.0cm - モグラ、ミミズetc.
生息数としては中型土壌動物がもっとも多い。
巨形土壌動物としてはミミズの数が1m^2当たり数十〜数千とかなり多い。

2) 土壌微生物

土壌微生物の分類
*グループ *数(m^2当たり) バイオマス(g/m^2)
細菌 10^13-10^14 40-500
放線菌 10^12-10^13 40-500
糸状菌 10^10-10-11 100-1500
藻類 10^9-10^10 1-50
細菌や放線菌に比べると糸状菌の個体数は1/10〜1/10000と少ないが、バイオマスとしては糸状菌が圧倒的に多い。
糸状菌は植物病害に占める割合も高い(一方、動物の病気として重要なのはウイルスや細菌)。
土壌1m^2当たりの微生物の生体重を合計すると700g程度。
微生物700g当たりの炭素量は70g、窒素量は11g程度。
畑に施肥するときの窒素量は10g/m^2程度。
  • 10g/m^2 = 10kg/10a
  • 10%Nの肥料ならば5袋(1袋20kg)程度(やや少ない?)
土壌微生物の種類
  • 細菌
    • バクテリア。細胞壁を持つが細胞核を欠く。
    • 胞子を作り、悪条件環境を耐えるものもある。
  • 放線菌
    • 細菌と糸状菌の中間的な性質を持つが、細胞核を持たず細胞壁成分が細菌に近いので細菌の一種として扱われる。
    • 菌糸を持つが糸状菌より細い。
    • 抗生物質を産生するものもある(Streptmyces)
  • 糸状菌
    • 細胞核やミトコンドリアを持つ真核生物
    • 菌糸は放線菌より太い
    • 担子菌類と呼ばれるグループの多くは菌糸がまとまって子実体(いわゆるキノコ)を作る
    • セルロースやリグニンなど分解しにくい高分子物質の分解能力が高い
  • 藻類
    • サイズは肉眼で見えないものから数mまで様々
    • 原核生物でもあるラン藻はクロロフィルを持ち、空中窒素の固定能力を有するものもある
    • 緑藻や珪藻などは真核生物であり、光合成により二酸化炭素を固定する
    • 光合成能力を持つ微生物を光合成微生物と呼ぶ

3) 土壌動物と土壌微生物の関係

土壌動物が粉砕した有機物を土壌微生物が分解する等々、両者は密接に連携している。

4. 土壌動物の働き

  1. 摂食、粉砕: 植物遺体を食べる、砕く
  2. 混合: 動植物遺体の土中への引きずり込み

1) 粗大有機物の破砕

土壌動物の摂食により粗大有機物は破砕される。
  • ミミズ: 2mm以下
  • トビムシ: 30-50 × 10^-6m
  • ダニ: 10 × 10^-6m
破砕により細菌や糸状菌による分解が促進される。

2) 有機物の土壌中への引きずり込み

ミミズは土と一緒に有機物を取り込み、混合物として地表に排出する(糞塚の形成)。
糞として地表に排出される土の量は日本では3.8kg/m^2/yearに達し、厚さとしては3.1mmとなる。
ミミズ研究者の一人としてダーウィンを記憶しておくとよい。「ミミズと土」は名書。

3) ミミズによる土壌改良効果

ミミズの糞の特徴
  • 土壌粒子が細かく、粘土やシルト分が多い
  • 容積重はやや小さく、孔隙が多い
  • くずれにくく、構造が安定している
  • 養分含量が増えている
ただし3.1mm/year程度の量では耕作上有効とまでは言えない。
活用したい場合はミミズの糞を資材とした「ミミズ博士」等の利用を検討するのがよいかも知れない。

5. 土壌微生物の働き

1) 有機物の無機化

土壌動物により土中に引きずり込まれた有機物は微生物の働きで無機物へ分解される(無機化)。
  • C: CO_2
  • N: NH_4^+
  • P: PO_3^2-
  • S: SO_4^2-
など、各種元素は無機イオンの形で土壌中へ放出される。

2) 土壌酵素による有機物の分解と無機化

有機物は土壌中に存在する酵素(土壌酵素)による分解も受ける。
土壌酵素は微生物により生産された後、体外へ放出されたもので、菌体外酵素と呼ばれる。
菌体外酵素は基質が十分存在するときのみ生産・活動する(誘導酵素)。
これらの酵素にはセルラーゼ、プロテアーゼ、フォスファターゼなどが含まれる。

3) 有害有機物の分解と浄化

土壌微生物の有機物分解能力は幅広いスペクトルを持つ。有機塩素化合物を分解するものもある。
直接有害有機物を分解する酵素を産生する場合もあるが、基質特異性の低い酵素がたまたま分解する場合もある(コメタボリズム)。
この分解能力を利用し土壌汚染を回復しようという試みもある(バイオレメディエーション)。

4) 植物との共生関係

  • 共生的窒素固定院
    • 根粒菌: 根粒の中で根粒菌は炭素化合物としてエネルギーを植物から受け取り、空中窒素をアンモニアとして固定する。そしてアンモニアを植物が利用する。草地においてマメ科牧草が十分に存在するならば、窒素施与量を減らすことができる。
    • フランキアは放線菌の一種で、樹木に根粒を形成し窒素固定を行う。ハンノキやモクマオウはフランキアが共生するので「肥料木」として利用される。
    • ラン藻の一種アナベナはシダ植物のアゾラに共生し窒素固定をする。水田で窒素固定を行うため農業での利用もあり、有機栽培などで関心が高いが、特定外来生物に指定されている種類もあるので利用には注意を要する。
  • 菌根菌
    • 植物根の表面、内部に糸状菌が共生・半寄生している状態を菌根(micorrhiza)といい、菌根を形成する菌を菌根菌という。
    • 菌根菌はリンの吸収を促進し、亜鉛、銅、カルシウムなどの吸収も条件により促進する。
    • 外生菌根菌は植物根の表面を菌糸で覆う。マツタケやホンシメジなどの担子菌はこの一種。
    • 内政菌根菌は菌糸が根の内部まで侵入する。とくに、細胞内部まで侵入して樹枝状体(arbuscule)を形成するものをアーバスキュラー菌根菌またはVA菌根菌と呼ぶ。

5) エンドファイト

植物体内で生涯の大半を過ごす細菌、糸状菌をエンドファイトと呼ぶ。病原菌ではないので病徴が現れるわけではないが、産生する物質が中毒症状を呈することで家畜への害になったり、害虫への抵抗となったりする。培養が困難であるため現状ではその詳細は明らかとなっていない。

第5章 土壌の骨格とそれを決めるもの

1. 土壌の三相―固相・液相・気相

  • 固相: 土壌の固体部分(土壌粒子や粗大有機物)
  • 液相: 土壌の液体部分(溶けている養分を含む)
  • 気相: 土壌中のガスを含む大きな空隙
土壌の全孔隙は液相と気相を合わせたもの。

2. 土壌の容積重

単位容積当たりの土壌の質量は条件により様々。例えば水分量は容積重に直ちに影響する。
水分の影響を無くすため、乾燥させた土壌の単位容積当たり質量を容積重(または仮比重)と呼ぶ。容積重は固相の重さに等しい。
容積重は通常1g/cm^3程度であるが、黒ボク土では0.5-0.8g/cm^3である。

3. 三相分布と土壌の重量

三相分布は固相、気相、液相の面積割合。
液相は水分量に左右される→重力水を除去した状態(圃場揚水量)で測定(重力水、圃場揚水量などの用語については6章)。
固相部分のみの比重(真比重)は土壌の種類によらず2.5-2.8g/cm^3程度であるため、固相率の低い土壌ほど比重は軽くなる。

4. 土壌有機物と三相分布

有機物の多い土は団粒構造を作るので空隙が増え、固相率が減る。

5. 土壌粒子の大きさと液相

大きな粒子ばかりからなる土は間隙に水を保持できないため気相率が大きくなりすぎ、干ばつの被害を受けやすい。
逆に気相率の小さな土壌では排水不良を起こしやすい。
理想的な固相率としては
  • 黒ボク土: 25-35%
  • それ以外: 40-50%
気相率は
  • 黒ボク土: 15-20%
  • それ以外: 15-25%

6. 土壌の可塑性・粘着性

  • 粘土: 力を加えて変形させた後でも形が残っている(可塑性)
  • 砂: 可塑性や粘着性が低い
差を生むものは何か?

7. 土壌粒子の大きさと特性

1) 土壌と土性

土性とは?
  • どのくらいの粒径の粒子がどんな割合で含まれているか?
  • 有機物以外の粒子で判定する。
  • 国際法の区分に基づく。

2) 粒径区分と反応特性

    • 2mm以上の粒子。土性判定に含めない。
    • 粗砂と細砂の2つの区分を含む
      • 粗砂: 0.2-2.0mmまでの粒子
      • 細砂: 0.02-0.2mmまでの粒子
    • 砂が多いほど排水性、通気性大
    • 凝集性には欠ける
  • シルト(微砂)
    • 0.002-0.02までの粒子
    • 粉末のような感じ
    • 粗いものは砂に近い、細かいものは粘土に近い性質を持つ
    • シルトが多いと緻密な土になる
  • 粘土
    • 0.002mm以下の粒子
    • 土壌の物理性と化学的反応に寄与(後述)

8. 土性による土壌分類

粘土、シルト、砂の割合と三角図方を用いて土性区分を決定できる。

9. 土壌の性質を支配する粘土の働き

1) 粘土と比表面積

比表面積とは: 物質1g当たりの表面積
比表面積が高まると…
  • 可塑性、凝集性
  • 膨潤性
  • 吸着力
などが高まる。
比表面積は細かい粒子ほど高い。粒径と比表面積は概ね反比例するので、粒径が1/10になれば比表面積は10倍になる。
フォス(1983)の測定によると、
  • 粗砂: 23cm^2/g
  • 細砂: 91cm^2/g
  • シルト: 454cm^2/g
  • 粘土: 8000000cm^2/g

2) 粒子相互の調和

粘土が多ければよいのか?→NO
粘土質の土壌は雨が降れば粒子が分散して抵抗が減り、ぬかるむ。
乾燥すれば粒子相互が強固に結びつき、コンクリート状になる。
粘度の高すぎる反応性を緩和し有効に利用するためには砂やシルトとの共存が欠かせない。

10. 粘土と粘土鉱物

土壌は岩石が風化することで
岩石→礫→粗砂→細砂→シルト→粘土
と変化する(細粒化過程)。
岩石(一次鉱物)が重要。
一次鉱物の種類は2000にもなるが、重要なのは次の5つ
  • 長石
  • 石英
  • 輝石
  • 角閃石
  • 雲母
これだけで大陸岩石圏の9割を占める。
一次鉱物が風化過程で変性し、新たにできた鉱物を二次鉱物または粘土鉱物と呼ぶ。
粘土は粒径のみによる区分だが、粘土鉱物はその構成成分に着目した区分をする。

11. 粘土鉱物の種類

1) 層状ケイ酸塩粘土鉱物

2つの基本的層状構造からなる
  • シリカ4面体シート
  • アルミナ8面体シート
この2種のシートの重なり合い方により粘土鉱物が3種に分類されている。
  • 2:1型粘土鉱物
    • スメクタイト、バーミキュライト、イライトなど
    • モンモリロナイト(スメクタイト群)は層間に水が入ることで膨らむ
    • バーミキュライトもやや膨らむ
    • イライトはカリウムが層間に入っているので膨らまない。このカリウムはほとんど利用できない。
  • 2:1:1型粘土鉱物
    • 2:2型とも
    • クロライトは2:1型粘土鉱物の間にマグネシウム8面体シートが入っている。結合が強固なので水で膨らんだりしない。
  • 1:1型粘土鉱物
    • カオリナイト、ハロイサイトなど
    • シリカ4面体とアルミナ8面体シートが強くつながって結晶になっている。
    • 結合が強いので水で膨らまない。
    • 陶磁器原料に適する

2) 明確な結晶構造をもたない粘土鉱物

    • アロフェン、イモゴライトなど(いずれも黒ボク土に多く見られる)
    • アロフェン: ケイ素とアルミニウムが一定の結合をした準結晶粘土鉱物。有機物の集積、リン酸保持能力、pHによる電気的性質の変化、土壌の軽さなどはアロフェンが原因

3) 鉄、アルミニウムの酸化物・水和酸化物

12. 粘土鉱物の生成と元素の稼働率

1) 粘土鉱物の生成と環境