魔法少女リリカルなのはA,s外伝・ラクロアの勇者

        第一話


:スダ・ドアカワールド

「消えるのはお前だぁああ!!!!」
自身と、三種の神器の力を解放し、赤い光りに包まれたナイトガンダムはブラックドラゴンが
放つ攻撃魔法を物ともせずに突撃する。
「な・・・・・何だと!?」
自分の攻撃が効かない事、そして、急に力を増したナイトガンダムに、ブラックドラゴンは初めて驚きを表す。そして

                     ザシュ

ブラックドラゴンの腹にある五芒星の印に、炎の剣が深々と突き刺さった。
「ば・・・・馬鹿なぁあああああああああああああ!!!!!!!」
己の敗北を認める事ができないブラックドラゴンは、腹の底から叫び声をあげながら
ナイトガンダムと一緒に火口に落下。運よく二人は付近の岩場に落ち、溶岩の高熱で命を落とす事をせずに済んだが、
致命傷を負ったブラックドラゴンの命は尽きようとしていた。
MS族が死ぬ時に発する煌びやかかな光りがブラックドラゴンを包み込む。

「これで・・・・勝ったと・・・・・・・思うなよぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!」

恨みのこもった言葉を撒き散らしながら、ブラックドラゴンは徐々にその姿を無くして行く。
「・・・・・勝った・・・・・・」
ナイトガンダムは消えて行くブラックドラゴンの姿を複雑な思いで見つめていた。
自分は勝った。これでラクロアに平和が訪れる。本来なら喜ぶべきだ。だが、
「(・・・・・・・・だが、なんだ・・・・この・・・・素直に喜べない気持ちは・・・・・・・)」
倒すべき敵を倒しても尚、ナイトガンダムにはやり遂げたという達成感や満足感などの気持ちが全く沸いてこなかった。
内心で渦巻くよくわからない感情に、自身でもどうしていいのか迷ってしまう。
その時、突如ナイトガンダムの体を光りの球体が包み込んだ。
「なっ!!?しまった!!!」
倒したと思い、完全に油断をしていた自分自身を恥じりながらも、目の前で薄れてゆくブラックドラゴンを睨みつける。
「勝ったと・・・・・思うなと・・・・・言った筈だ・・・・・・」
数分後には消えてしまうであろう恐怖感などを感じさせずに、ブラックドラゴンは光りの球体に包まれるナイトガンダムを
愉快で仕方が無いと言いたげな表情で見据える。
「くっ・・・・体が・・・・動かない・・・・」
ナイトガンダムはどうにかして、自分を包み込んでいる球体から抜け出そうともがくが、今までの激しい戦闘と
三種の神器の連続使用により、満足な力が出ずにいた。
「貴様・・・・・・何をした!!」
「ふっ・・・ふふふ・・・・この勝負・・・・お前の勝ちだ・・・・・・だが・・・・一人では・・・・逝かん!!」
ブラックドラゴンは自身の杖を掲げ、呪文を唱える。
すると、ナイトガンダムを包んでいた球体が輝きだし、ナイトガンダム自身も、何かに引っぱられるような感覚に襲われた。
「生憎・・・・・貴様を・・・消滅・・させるほどの・・・・力は・・・・・我には・・・・・残っていない・・・・
だが・・・貴様・・・・を・・・何処も分からぬ・・・・世界へ・・・・・・飛ばす事は・・・・・可能だ・・・・」
ブラックドラゴンの体は、目を凝らせば地面が見えるほどに消えかかっていた。
だが、彼は瞳を歪ませながら楽しそうに淡々と話し続ける。
「何処へ行くかは・・・・・・我でも・・・知らん・・・・・。ここ以上の争いが・・・・起きている世界か・・・・・
全てが・・死に絶え・・・・・荒廃・・・した・・・・世界か・・・・ふふふ・・・ふふ・・・さぞ楽しみ・・・・だろう・・・
さらばだ・・・・ナイト・・・・ガンダム!!!見知らぬ・・・異世界・・・で・・・・・ノタレ死ぬが・・いい・・・・・
………………………は・・ははははは・・・・・・ははははははははははははは!!!!!!!!!」
自身が勝利したかの様に、高らかと笑いながら、ブラックドラゴンは、完全に消滅した。そして
「うああああああ!!!!」
強烈な光りに包まれたナイトガンダムは、何かの強い力に引っぱられるように、上空へと消えていった。


  • 第97管理外世界『地球』

:海鳴市

幾つものビルが立ち並ぶ深夜の町。
普段なら賑わいを見せるオフィス街も、『丑三つ時』と言われている時間帯では、
幾つかの電灯が明かりを灯すだけの静まり返った空間となっていた。
そんな静まり返ったオフィス街に、突如何かがスパークした音と、成人男性と思われる声が響き渡る。
声がした方向。ビルの路地裏には3人の人物がいた。
一人は年齢的に6~7歳位の子供、『ゴシックロリータ』と言われる服装に身を包み、
頭には左右にデフォルメされたウサギのぬいぐるみを縫い付けた帽子を被っていた。
一見すれば、おしゃれをした可愛いらしい少女だが、彼女の瞳に宿る戦士としての気迫と、右手に持った金槌を見た瞬間、
その考えを改めなくてはならない。
残りの二人は先ほど叫び声を上げた成人男性だが、二人とも戦いに敗れたように傷つき、唸りながら少女の足元に倒れこんでいた。
「・・・・雑魚いな・・・・・こんなんじゃ・・・・・大した足しににもならないだろうけど・・・・・」
少女は目の前に倒れている二人の男性を助けようとはしなかった。当然だ、彼らを痛めつけたのは他でもない、彼女なのだから。
「まったく・・・・・管理局の武装隊員なんだから・・・・期待してたんだけど・・・・・原住生物を狩ったほうがましだったな・・・・」
つまらなそうに呟きながら一歩前に出る。そして左手に抱えていた辞書ほどの厚さを持つ本を掲げた。
掲げられた本は少女の頭の上まで浮き、自然とページを開く。
黒い輝きを放つと同時に、倒れている二人の男性の体から、ビー玉サイズの光りの玉が抜き取られる。
余程苦しいのか、気絶してもなの、唸り声を上げる二人の男性。
だが、少女は罪悪感を全く感じさせない瞳でつまらなそうに見つめながら、作業の終了を待つ。
「お前らの魔力・・・・・・・闇の書の餌だ・・・・・一応言っておくよ・・・・・・ありがとう」
その夜、二人の男性の断末魔が、夜の街に響き渡った。


  • ヴィータ襲撃の3日前

:バニングス邸

「・・・・う~ん・・・・・寝る前にジュースなんか飲むんじゃなかった・・・・・」
ぼやきながらも、アリサ・バニングスはトイレに向かうためベッドから抜け出した。
季節は正に冬。いくら暖房が着いているとはいえ、寒さをごまかす事ができなかったアリサは上着を羽織り、トイレへ向かう。
「だけど・・・・・家が広いってのも困り者よね・・・・・・トイレが遠くて困るわ」
一般人からしてみれば、自慢にしか聞こえない愚痴を呟きながらも、夜の廊下を歩いていく。その時
「あっ・・・流れ星・・・・・」
なんとなく夜空を見ようと、廊下の窓を見たアリサは、一つの流れ星を見つけた。
実際の流れ星など全くと言って良いほど見た事が無かったアリサは、冬の夜の寒さなど気にしないと言わんばかりに窓を開け、身を乗り出す。
「・・・きれい・・・・・あ~!!ビデオとか持ってくればよかった!!」
悔しそうにつぶやきながらも、彼女の瞳は流れ星に釘付けだった。
彼女を魅了している流れ星は、輝きながらゆっくりと落ち
「・・・へっ!!?」
そのままバニングス低の庭へと落下した。
「へえええ!!!!」

アリサは好奇心旺盛な少女である。そのため恐怖心よりも好奇心の方が勝ってしまいその結果、
流れ星が落ちたと思われる自分の庭へ一人で向かっていた。
「だけど・・・・・よく考えたら・・・・私・・・・かなり危ない事してる?」
胸の高鳴りが多少おさまった今、冷静になって考えてみる。
同時に、最近なのは達と見たSF映画を思い出した。
「確か・・・似たような状況よね・・・・落ちた隕石を見つけた男は浮かれるんだけど、その隕石にはエイリアンの卵が付着していて、
持って帰る途中に卵がふかして男に寄生して・・・次々に・・・・・帰ろうかな」
歩みを止め、帰ることを考えるが、既に落下地点の目の前まで来ていたため、アリサは腹を括って歩みを再開した。
そして彼女は見つけた。流れ星を
「・・・何これ?」
アリサがみつけたのは文庫本ほどの平らな石だった。形としては、アリサから見て右と下に関しては加工でもしたかのように綺麗に整っている反面
左と上の方はゴツゴツと荒く、まるで本来一つであった平らな石の隅が欠けた物、正に『欠片』の様であった。
「う~ん・・・安心した様な・・・残念な様な・・・・でも・・・・・せっかくだし・・・・・持って帰ろ」
「せっかくの空からの贈り物だし」と結論付けたアリサは、流れ星『石版の欠片』をもって屋敷に戻った。

ちなみに、『石版の欠片』を見るのに夢中になっていたため、もう一つの流れ星が近くに落ちたことにアリサは気づく事は無かった。


  • 同時刻

:月村邸

「・・・・・眠れない・・・・・」
部屋に備え付けられているベッドで横になっている少女『月村すずか』はもう何度目ともなる台詞を呟く。
本来自分達は『体質的』に夜の方が目がさえてしまう。それでも普通に眠る事は出来るのだが。
「お姉ちゃんの真似なんかして・・・・・・コーヒーなんて飲むんじゃなかった・・・・」

今日の夕食後、食後のお茶としてすずかはミルクティーを、忍はコーヒーを飲んでいた。
「う~ん、ノエルの淹れてくれたコーヒーは格別だわ~」
実に美味しそうにコーヒーを飲む忍の姿に、コーヒーを淹れたメイド『ノエル・綺堂・エーアリヒカイト』
も満足げに微笑む。
「だけど何時飲んでも最高ね~。でも、すずかにはまだ早いわよね~。残念残念」
上機嫌な忍は面白半分に妹であるすずかをおちょくる。本来なら頬を膨らませ抗議をすると思っていたのだが
「・・・・・・ノエル・・・・・私にも頂戴。ブラックで」
断固戦いを挑むような目つきで、ノエルに忍と同じコーヒーを頼んだ。
勝気な友達が出来たのが原因なのか、最近挑戦的になっているすずかに
忍はニヤつきながらも、心の中ではすずかを積極的にしてくれた彼女の友達に感謝をしていた。

「・・・・・だめだ・・・・やっぱり眠れない・・・・」
観念したかの様に大きく溜息をついたすずかはベッドから抜け出し、本でも読もうと本棚へと向かった。
「そうだ、はやてちゃんから勧められて借りた本。まだ途中だったっけ」
本当なら、学校から帰ってきてから続きを読む予定であった本を読む事に、すずかは多少躊躇いを感じたが、それ程悩まずに本が置いてある自分の机へと向かった。
「楽しみは取っときたかったけど・・・・・しょうがないよね」
目的の本を手に持ち、自身を納得させるように呟きながら何気なく窓を見つめる。
冬の空はとても澄んでおり、それによってもたらされた星の輝きに、すずかはつい見とれてしまった。
「綺麗・・・・・なのはちゃん達も見てるかな・・・・・」
「星空が綺麗だよ」と皆に連絡をしようかと考えたが、今の時刻からして迷惑だと感じたすずかは諦める。
「皆・・・見ていてくれればいいんだけどな・・・・・・あっ、流れ星」
夜空に突如現れた流れ星。
彼女は生で流れ星を見るのは初めてであった。そのため、見惚れそうになるが、流れ星の効果を知っていたため、

       「皆も夜空を見てますように」

咄嗟にお願いをする。すると流れ星は夜空を滑るように落下し、
「えっ?」
そのまま月村家の庭に落下した。
「ええええ!!??」

「忍様にすずか様・・・・・・やはり屋敷にお戻りください」
ノエルがもう何度目かになる台詞を吐くが
「大丈夫大丈夫!ノエルとファリンがいるんだから。落ちてきたのが新種のエイリアンだろうが、
百戦錬磨のプレデターだろうが余裕余裕。ね、すずか」
「うん」
二人の主に信頼されている事に、ファリンは素直に喜び、ノエルは溜息をつく。
「(信頼してくださるのは・・・・・嬉しいのですが・・・・・)」
内心でぼやきながらも、目的地に向かって歩き続ける四人。
そして、落下現場が近くなった所で、ノエルとファリンは二人の主人を制止させ、周辺のサーチを行なう。
「・・・・・・ファリン・・・・反応は・・・・」
「はい、お姉さま・・・・・・熱源が二つ。一つは一メートル強、もう一つは30cmにも満たない程の物です。
今の所周辺からは放射線などの危険度の高い残留物は確認されません・・・・・なんでしょうか?」
「分からない・・・・・周辺もサーチしてみたけど、怪しい反応は無かった。まぁ他に動く物があったら、忍様が作ったトラップが黙ってないでしょうけど」
「ははは・・・・・・対応をLv2にした途端、あのしつこかった新聞屋さんも来なくなりましたからね。むしろ可哀想でした」
あの時の大泣きしながら必死に逃げる新聞屋を思い出したファリンは、改めて新聞屋に同情をした。
「とにかく確かめるわ。私が先行するから、ファリンはお嬢様達を」
「了解です!お姉さま!!」
可愛らしく敬礼をするファリンに自然とノエルの顔が綻ぶ。だがそれも一瞬。
ノエルは左腕に愛用のブレードを装着すると同時に、人間離れした跳躍力で一瞬で目標までたどり着いた。
そして、そこでノエルが見たものは
「・・・・・・・・ロボット・・・・・・?」
大きさからして一メートル強、西洋の甲冑のような物を着たロボットの様な物体が横たわっており、
そして近くには右下が欠けた石の板が転がっていた。
「・・・・・ロボットでしょうか・・・・・ですが体温がある。生物でしょうか?」
自問しながらもノエルは横たわる人物(?)に近づき、凶器となりうるものを没収していく。
「盾に・・・・・剣・・・・・それに西洋の槍。正に騎士ですね・・・・・・・」
没収した武器を近くの木の根元に纏めて置いた後、ファリンに来るように通信すると同時に、もう一つの熱源に近づく
「あっ、お姉さま!もう血祭りにあげたんですか!?さすがです!!」
「・・・・ファリン。すずか様の教育上よろしくありませんから、そんな汚い言葉を使ってはいけません」
ファリンの物言いに、ノエルは多少眉をひそめて注意するが、
「ちょっとノエル!私はどうなの?私は?私だってまだ未成年よ!バッリバリの未成年よ!!!」
「忍様は・・・・・・・・ファリン、とにかく来ても大丈夫ですよ」
「こら~!!無視するな~!!!ノエル~!!!!給料下げるぞ~!!!!!」
通信越しに子供っぽく抗議をする忍をやんわりと無視したノエルは通信を切る。そしてもう一つの熱源である石の板を拾い上げた。
目の高さまで持っていき、早速危険性が無いか内部スキャンを行なうが
「見た目、重さ、手触り、全てにおいてただの岩の板、ですが、この子と同様内部スキャンなどが通らない以上、
ただの岩では・・・・・なさそうですね・・・・・」
とりあえず性質が分からない以上、破壊するのも危険だと感じたノエルは、主である忍の聞くため、彼女達が到着するのを待った。

「いいじゃない。回収。この子も草の上より暖かいベッドの方がいいでしょう。それになんか可愛いし。
あら?ロボットっぽかったけど、やわらかいのね~、ほれほれ~」
人間で言う所の『頬』の部分をつつきながら即答する忍。
すずかも同じ意見なのか、笑顔で答える。
「(やはり予想していた通りでしたか)」
忍たちの対応にノエルとファリンは予想通りだったため、さほど驚かなかった。
正直、自分達の主は優しいのだ。姉妹の性格は違えど、彼女達は相手を労る優しさを持っている。
それこそ、『人間以外』の物でも、その優しさは変わらない。
「(まぁ、忍様の場合、『興味本位』ということもあるでしょうけどね)かしこまりました。
ファリン、先に帰ってお客様のベッドをメイキングしといて。この子は私が運びます」
「かしこまりました~♪」
先ほど同様、可愛らしく敬礼をしたファリンは駆け足で屋敷へと向かった。途中『忍達が見える範囲』で一回転んで。


この日、後に『闇の書事件』と呼ばれた事件の舞台となったこの町に、一人の騎士が舞い降りた。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年02月25日 22:58